39話 衛兵隊掌握へ
ついに姿を現し始めた進軍してくる衛兵隊。
3000の兵士っていうのは、その数だけで圧倒的だ。
その数の分、こちらを殺しにかかってくると思うと身震いがする。
その衛兵隊が、屋敷の前を陣取り、テキパキと陣形を作り始めた。
湖から以外は、誰も逃さないぞと包囲するように、兵が配置されていく。
そんな様子を、窓から眺めている。
AI機関の兵士ではない人たちは、みんな同じ気持ちなのか顔面蒼白気味に、衛兵隊を見ていた。
「手間取っているな。指揮を取っているのは誰だ」
「あれで手間取っているのですか……」
カウフタンがイライラ気味に言うのを、ウルシャが感心したように反応した。
「……わかった。あれは分隊長同士で相談して決めている……たくっ、私が指揮をとっていたのが裏目に出ているのか」
「つまり、カウフタンがいないから、誰も指揮をとっていない?」
「そういうことになる。烏合の衆だな」
舌打ち気味に言うカウフタン。
「そうなると……攻めてこない? 攻めろと号令する者がいないから」
「そんなことはない。こちらに奴らを抑えられる軍団がないからな。だが……」
カウフタンが皆に向かって宣言する。
「私なら抑えられる」
自信満々に言うカウフタンは頼もしく……そして、ちょっと粋がってる風なお嬢様って感じで愛らしかった。
同じように思ったのがわかる、オフィリアは質問する。
「カウフタン、ならどうすればいいですか?」
「オフィリア様とアイ様から、彼らに私が指揮を取るという説明を。その後は……私があの精鋭をこちらの指揮下に置きましょう」
「いけるのか?」
アイが聞くと、カウフタンがふんって感じで笑ってからうなずく。
「私しか無理でしょう」
マジで頼もしい!
「カウフタン、最高!」
「当たり前だ」
カウフタンが、ふふんと自慢げに腰に手をあてて胸を張る。
何このすぐ調子にのっちゃう娘、可愛い!
「よし! それじゃオフィリア、カウフタン、行くぞ!」
アイが言い、主要メンバーがぞろぞろ屋敷の玄関へ。
「俺は? 俺はついていっていい?」
「もちろんだ」
アイが言うが、カウフタンが止める。
「お前は、あの戦車を表から見える位置にもってこい。私が指示を出したら、お前が出せる鬼たちを出して並べるんだ。こちらも戦う用意がある、という風に見せるには、お前の鬼たちが一番適している」
「わかった。指示を待つ」
その後も、カウフタンは皆と向かいながら、こちらの防衛への指示を出していく。
カウフタンの間者をダブルスパイでやっていたクオンも、その指示に合わせてテキパキと動いていた。
……あれ? ここってある意味、カウフタンの指揮下に入ってない?
そしてそのカウフタンを中心に、オフィリアとアイ、あとウルシャの護衛たち、その他合わせて十数名で衛兵隊の本隊があるあたりに向かう。
3000の兵たちに十数名で向かうって、ハタで見てるとほんと無謀もいいところだな。
俺、あれよりも多い衛兵隊を相手に、ハイエースで立ち向かったんだ。
今思うと、死ぬ気か? って感じだったんだな。
アイたちが向かっていくと、衛兵隊からも部隊長らしき者たちが出てきた。
衛兵隊の中から、オフィリアとアイに気づいた者がいるのがわかる。
そして部隊長らしき者たちが、恐る恐る出てきたってところか。
「オフィリア様と、アイ様でしょうか?」
向こうから声がかかる。
カウフマンからすると、子飼いの精鋭で、声をかけた者は知った顔っぽい。
「お前たち、控えろ。こちらはエジン公爵令嬢オフィリア様と、『神器』アイ様だ!」
いきなり偉そうな女の子にそう言われて、困惑したものの、兜をとって軍隊式っぽい礼をとる。
衛兵隊としての礼なのだろう。
「おふたりからの言葉を聞くがいい! 今後のお前たちにとって重要な話だ!!」
突然、気合の入った女の子が、そんなことを言い出し、困惑している衛兵隊の面々。
「私が『神器』アイだ。お前たちは衛兵隊長のカウフマンに言われて、ここを攻めに来たのだろう。だが、そのカウフマンはいない。現在行方不明だ!」
いきなりそんな説明をして通じるの? と思ったが、カウフタンも見るからに慌てているから、きっとダメだったのだろう。
衛兵隊たちもざわざわとざわめいている。
あれ? また交渉失敗?




