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37話 変な人

 衛兵隊を、カウフタンを使って止める方針が決まった後。

 カウフタンが、今の体でどこまで動けるのかチェックするため、ウルシャと手合わせをしていた。


 カウフタンは、カウフマンだった頃と同じタイプの模造剣をふるってみているが、


「こ、こんなに腕力ないのか……」


 と、愕然としていた。

 女性になった上、体格もかなり小さくなったため、本人曰く全然ダメなようだ。


「カウフタン殿が使う剣なら、これくらいのはどうだろうか」


 ウルシャは自分が使っているタイプの細身の剣を渡す。

 受け取ったカウフタンは、それをふるって使って、また手合わせ。

 その繰り返しだが、真剣に剣を重ねているふたりを見るのは、人のゲームを見ているような面白さがあった。


「流石、カウフマン殿。その体にはすぐ慣れそうですね」


「こいつに慣れたら、元の剣術を忘れてしまいそうだ」


「また覚え直せばいいじゃないですか」


 事もなげに言うウルシャに、カウフタンは驚いた後、フッと微笑む。


「なるほど。アイ様をお守りする護衛がどれほどの剣士なのかと思っていたが、ここまでとはな。ウルシャ殿を衛兵隊に引き抜かなかったのは私の失敗だったな」


「引き抜き? 無駄ですよ。私はアイ様に仕えていますから」


「ああ、わかっている。ウルシャ殿のその剣に対する姿勢と、女の身でありがらこのような扱いにくい剣を正確無比に扱えるその鍛錬。同じ戦士として感動すら覚えた。感服します」


「はは、褒めすぎですよ。でもありがとうございます。王国でも一二を争う戦士のカウフタン殿にそこまで言われては、喜ばないわけにはいきません」


 ウルシャとカウフタン。

 なんだか剣士としてわかりあえた的な雰囲気を醸し出している。

 いいもの見た気分。


「不思議だな……」


「何がですか?」


「同じ世界なのに、違う世界が見えている。AI機関のせいなのか、それともこの体のせいなのか……」


「……ひょっとして、女性化してよかったんですか?」


「んなわけなかろう!!」


 そして仲良くしてるみたいで、羨ましいなぁ。


 それからウルシャとカウフタンのところへ、アイがやってきた。


「アイ様、ひとつ提案があるのですがよろしいですか?」


「いいよ。なに?」


「こちらの防衛状況を少し拝見したのですが……正直全然ダメです」


「ダメか」


「私なら手勢200人もあれば30分で落とせます。部下たちだけでも3時間もあれば占拠可能でしょう」


「むむ、どうすればいい?」


 素直に聞くアイに、カウフタンは苦笑しつつも提案する。


「私から指示のし直しをしてもよろしいですか?」


「ほんとか? やってくれ」


「……疑わないのですか? 衛兵隊を引き入れやすくするかもしれませんよ?」


「おおっ!?」


 考えてなかったアイに、逆に驚いているカウフタン。


「今のあなたはカウフマン殿ではなく、カウフタン殿だ。その辺はどうされるつもりだ?」


「カウフマンの間者と言えばいいでしょう。信じさせる手はいくらでもあります」


 ウルシャの質問にあっさり応えるカウフタン。

 こういう所の頭の回りっぷりは、元々のカウフマンなのだろう。

 ウルシャとアイが少し警戒を見せたところで、カウフタンは笑う。


「しかし、私にとってのメリットはまったくありません。今はカウフマンとは言えないですから」


 そう言った後、カウフタンは跪く。

 オフィリアに対してやった時と同じような姿勢だ。


「今はオフィリア様に仕える衛兵隊長代理カウフタンです。なんなりと申し付けてください」


「う、うん……えっと、それじゃ……」


「防衛設備の再点検という名目で屋敷内の視察を。私は付き添いで参ります」


「なるほど。いいな。それなら、おまえをカウフマンの妹、カウフタンとして紹介して回ろう」


「ぐっ……そ、そうですね……妹として……」


 妹扱いを辛そうにするカウフタン。

 この処刑、実は本人にとってかなり重そうだな……

 原因を作った俺としては、カウフタンに嫌われてがっかりだ。


 ……怒った顔も可愛いのがせめてもの救いか。


「戦士殿は、行かないんすか?」


 クオンが話しかけてきた。

 気配がしないのは、忍だからか。


「カウフタンに嫌われているから」


「女にしちゃった張本人っすからね」


「う、うん。それを言われると辛い。でも……カウフタンって前向きだよな。俺だったらショックで寝込みそうだ」


「……変な人っすね」


「まったくだ」


「変なのはカウフタンじゃなくて、戦士殿っすよ」


「俺?」


「ういっす」


 この変なクノイチに、変言われたってことは、マイナスのマイナスでプラス?


「それとも、戦士殿は自分の『力』の強大さに気づいてないんすかね? あれだけの『力』があれば、ぶっちゃけ思いのままっすよ」


「『力』、ねぇ……」


「カウフタン殿なら、喜んで使ってますよ。同じ力があるなら、今頃エジン公爵領はカウフタン殿のものっす」


「……そうか」


「今のカウフタン殿ならきっと、戦士殿の『力』とアイ様の魔法、そしてオフィリア様の権力を使って、次なる手を考えてるっすよ」


「マジか……おっかないな。それこそ変な人だろう」


「戦士殿はそういう考え、ないんすね」


 言われてみて考えてみるが……


「……ないかもな。すぐ出てこない」


「そうっすか」


 クオンはそう言って微笑み、走り出す。


「ちょっと、衛兵隊の様子を見てきます。こっちのこと、よろしくっす」


 クオンはタタッと走って馬の方へ行くと、そのまま馬を借りて屋敷の外へ行ってしまった。


「やっぱり、変なのはクオンの方じゃないか」


 と言いつつも、クオンに言われたことを考えてしまう。


 力を使ってみたいとは、常々おもっている。


 でも使い所ってのはあるはず。


 この『力』は強力だ。

 そしてアイが使う魔法と同じようなもの。


 魔法は『魔』法。


 だからこの『力』使い続けることでどうなってしまうのか。

 正直検討もつかない。

 それって怖いことだと思うんだけどな。


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