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274話 代理戦争

 『神』に等しい力を持っている俺。

 というものに自覚は、かろうじてある。


 流石にアイと共に過ごすことで、自分が発現した諸々のことが異様であったことはわかる。

 だがいかんせん、わからないことが多すぎる。


 そもそも『神』って何?

 センパイが『神』っていうけど、あの人にいったい何ができた?


 俺の記憶だと、せいぜい喫茶店や居酒屋や中華屋でくっちゃべって。

 ネット配信で映画やアニメを見て。

 DVDやブルーレイで映画やアニメを見て。

 だらだらとゲームして。

 金もないのにソシャゲで課金して。

 バイトで時間なかったと、何故かセンパイの宿題の論文を手伝って。


 っていうくらい『神』の所業らしいことを何ひとつしてない『神』しか知らん。

 こんなのを『神』と判断するわけにはいくまい。


 だから俺からすると、『神』ってすげぇくだらない。

 『神器』の方が、はるかにすごい。


 っていう感覚でしかない。


 だから俺としてはそのすごいやつの代表格を見て、『神』とは何かを模索するしかない。


「……俺がいてどうと言われてもな。俺としてはアイ頼みなわけだし」


 それを聞いたアイは黙ってこっちを見て、タツコを見る。


「どんなに力を持っていても、雛鳥にできるのは親の後をついていくだけってことだ」

「なるほど」


 あ、今、俺のことをだいぶ下に見たな。


 そんなことを話しながら、俺たちは今後の打ち合わせを続けるカウフタンとツァルクのあとをついていった。

 まだ騒ぎが若干続いている町中を抜け、衛兵隊の司令室として使っている兵舎のひとつに全員で入る。


 そこでも、カウフタンたち衛兵隊の幹部たちとツァルクは話し合いを続ける。

 エジン公爵領の地図までひろげて、いろいろ話している。


 話を聞いていても、専門用語なのか略称なのか、彼らにしかわからない単語が飛び交い、さっぱりわからない。

 でも混ざりたいなオーラを醸し出しつつ覗くが、相手にされない。


 カウフタンなんて、こっちはいないものとして扱っているような視線を一度したきり。

 あとは熱心に衛兵隊の幹部やツァルクと話している。


 そうこうしているうちに、アイは彼らの話を聞き流しているとおもったら、うとうとと寝始めた。

 それを見たオフィーリアから派遣されたメイドっぽい人が、寝室を用意していると告げるが、ウルシャが断る。

 アイは、衛兵隊と共にいることを望んでいるとのこと。

 ウルシャはむしろこの兵舎に個室を用意してくれと頼んでいた。


 ウルシャの言ったことに耳ざとく気づいたカウフタン。

 話し合いをいったん止め、ウルシャに対して短く告げた。


「ウルシャ殿、感謝します」


 ウルシャはこくんとうなずき、衛兵のひとりが用意したという個室へアイをお姫様抱っこして部屋を出ていく。

 ついていくか悩んだけど、残ることにした。

 俺は眠くないし、それに……


「……なんでカウフタンが感謝するの? どゆこと?」


 と、こっそりつぶやくと、ツァルクに聞こえたのか近づいてきて教えてくれた。


「この戦いは、『神器』同士の代理戦争なんだよ。こちらはアイの代理。あちらは……えっと、なんて言ったっけ?


「『天使』キルケ?」


「うん、その名前もあったけど、もうひとりいた」


「もうひとり? 誰?」


「ほら、あっちの世界で会ったでしょ」


「え?」


「そうだ。石版のシガース。その代理、サミュエル卿もあっちの代表のひとりだって」


「え? マジ?」


 びっくりしていると、俺のことを混ぜてくれなかったカウフタンが教えてくれた。


「此度の戦の相手は、教会が発起で戦力は教会の騎士団やコンウォル辺境伯の騎士たちだ。その出兵を支えているのはサミュエル卿が率いる通商連合になる」


 教会の御旗に集ったとなれば、そういうことか。

 『神器』としては、キルケとシガースが手を組んだ、ということか。


 そう理解した時、カウフタンは強く言い放った。


「我らエジン公爵軍は、アイ様を旗印に攻勢をかける。そのためにも、アイ様には一度戦場で宣言してもらわねばならない。この戦は『神器』アイ様が『神』になるために必要な戦いであり、その戦いに勝利しなければならないと」


 いきなり背負わされたな、アイ。

 まあそうか。

 これくらい、背負わされるのが『神』か。


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