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249話 天才女子中学生

 『竜』をハイエースの力でおにゃのこ化させた時、力の使いすぎで暴走したのか、ハイエースと一体化してしまったことがあった。

 あの時と同じ現象が起こっている。

 派遣の儀式の影響、と思う。


 まあそれはいい。

 問題は前回と違って誰にも話しかけられないことだ。

 どうしようか。


「俺たちが気絶している間に外にいったんじゃないか? 探しに行ってみるか」


 おっと、ツァルクが外に行ってしまう。

 どうにか知らせないと。

 前は一体化しながらハイエースを動かせたんだった。

 動かしてみるか……


「待て。外がどういう世界かわからないんだ。危険だ」


「え? でもさタツコ。ほらあの家の窓に人影が見えるぞ。普通に安全なんじゃないか?」


「気づかないか? さっきから嫌な気配が周囲に満ちている」


 そう、タツコが言った時、反応したのは鬼王とケアニスだった。

 口にこそ出さないが、タツコの言った気配に感づいているのか、若干ピリッとした気配になった。


 ちなみに自分は何も感じない。

 外に出ようとしたツァルクも同じなようで、特に気にした風でもなかったがドアに触れていた手をひっこめた。


「タツコがそう言うんなら。んじゃアイを起こそう。この手のことに一番詳しいはず」


 タツコもそう思ったのか、うなずいた。

 ツァルクは後部座席から身を乗り出して、アイとウルシャの体をゆする。


 まず起きたのはウルシャ。

 パチッと目を覚ました瞬間、柄に手かけつつ、アイの身を隠す。

 だが、すぐに状況がわかったのか、緊張を解いた。


「ツァルク、様? ここは……え……!?」


 ツァルクの顔を見たあと、窓から見える光景に驚く。

 そしてアイの体を守るようにぎゅっと抱きしめた。


「ここが……儀式で向かった先……?」


「そうみたい。いやすごいな君。その機敏な判断力でこの子を守っていたんだな」


 ツァルクがウルシャの反応に、やけに感心した感想をもらす。

 だが今の現状で言うと、気が抜けているようにも聞こえた。


「ここが……『神』のいらっしゃる場所、ですか?」


「それはわからん。君のご主人にその辺を聞きたいから起こして欲しい」


「もう起きてるぞ。ウルシャ、ちょっと痛い」


「あ、すみません。失礼しました」


 ウルシャにぎゅぅと抱きしめられていたアイが、開放されて一息ついた。


「で、ここは……うわ、なんだここ……真っ暗で、光がそこらに……」


 窓の外を見たあと、ふと俺がいた運転席を見るアイ。

 ようやく気づいてくれたか。


「イセは、どこだ?」


「いないんだよ。皆が気づかないうちに外に出たのか? ここってあいつのいた世界なんだよな」


 アイは少し考え込んだあと、助手席のグローブボックスあたりをとんとんと叩いた。


「……いるか?」


 おおっ! 流石アイだ!

 この俺がまた同化していることに気づいた!


「返事できないのか?」


 そこまで気づくか!

 魔法とか、そういうものへのキレっぷりはハンパないな!

 うおおおっ、この驚きを伝えたいけど、でもそれに返事できないんだよっ。

 もどかしいなぁ、もう。


「いるなら、車体を動かせ。あ、いや動かさずに……明かりをチカチカさせてみてくれ」


 ナイスだ、アイ!!


 俺は、動け、動いてくれー、と祈りをこめてライトをパッシングした。


 パシパシッ、と暗めの駐車場に遅めのフラッシュがたかれた。

 するとアイとウルシャ以外の皆が、驚きで目を見張る。

 アイとウルシャは一度、俺がこうなったのを見ているからか、むしろ目を細めた。


 そして、俺が一体化したことに気づいた皆だったが、そこでさらに俺は気づいた。

 気づいたあたりはハイエースの前方。

 パッシングした瞬間、人影が見えたのだ。


 今度はライトをつけた。

 照らされたその女の子は、眩しそうに手を顔の前にかざす。


 俺だけじゃなくて、ウルシャとツァルクらがまず気づき、それから他のみなも気づいた。

 彼女は、明らかにこのハイエースを見ていて、眩しがりながらも歩いて近づいてきた。


 ウルシャはアイをかばうように警戒しつつ、助手席側へと近づいてくる女の子を見る。

 彼女はハイエースを中を覗き込むようにやってきて、アイと目を合わせてふっと微笑んだ。


 この笑い方はわかる。

 知った人が乗っているのに気づき、少しほっとしたような顔だ。


 彼女は窓ガラスをコンコンと叩いた。


「ようやく来られたようで」


 聞こえた声は、明らかに関係者とわかる反応だった。

 俺は皆にも聞いてもらいたいと、思わず窓を開けた。


「ようやく来たんだな、アイ」


 ぎょっとしているアイに、皆が注目する。

 誰だ? アイが知った人か? という反応に、逆に俺が驚く。


 え? 知らないの?

 てかこいつが……『神』じゃないのか?


「誰だ」


 アイの反応に呼応したのか、ウルシャがいつでも運転席側へ引っ張れるようにアイの肩を掴みながら聞いた。


「私だよ。シガースだ」


「はい?」


 ウルシャの訝しげな声は、そこにいるアイと鬼王の疑問を代弁していた。


「……あっ! 師匠、もしかしてこっちに転生して女に?」


「そういうこと」


 アイと同じか少し身長が上くらいの女の子は、年相応っぽくない笑顔を浮かべる。


「アイは話が早くて助かる。こっちでは志賀飛鳥。天才女子中学生だよ」


 その自己紹介いるの? ってことまで言われた。


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