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239話 『神』に等しい力

 アイの怒りを敏感に感じ取ったのは俺だけじゃなくて、ツァルクもそうだった。


 刺々しさが音になったような質問に対して、彼は正面から向き直る。

 そして真面目に、穏やかに口にする。


「怒らないで聞いて欲しい」


 彼は視線を宙に漂わせる。

 迷っているのではなく、周りを見て示した。


「だってさ。この空間を作っているのが彼なんだろ? それはもう『神』に等しい力の持ち主でしょ」


 ツァルクの言葉を、アイは否定しなかった。


「だから、関係者と言ったんだけど……違う?」


 違うかどうかに関して、ツァルクは俺に向かって言った。

 アイは答えないと判断したのか、俺の話だから俺に振ったのか。


 まあ、ギスギスしそうな雰囲気だから、こっちに助けを求めただけかもしれないが。


「『神』の関係者じゃないよ。話した通り、俺はこことは違う世界で事故にあって、変な力を持ってアイに召喚されたんだ。そういう意味では『神器』の関係者だな」


 『神器』とか初代教皇って言われているふたりの方が、俺からしたらよっぽど関係者なんだよな。


「ていうか、その『神』と会ったこと無いんだ。ふたりよりも関係性は薄いよ」


「ということだ」


 俺の言葉に対して、間髪入れずにアイが言う。

 少し、怒りが収まっている気がする。


 アイや他の『神器』たちの前で『神』の話は禁句に近いのかな。

 よくわからんが、相当やらかしている人っぽい。


「なるほど。うん、納得。あの『神』の関係者と一緒にいるとか、嫌だよね」


「……嫌なんだ」


「まあね。いろいろとね」


 苦笑というより、あまり笑えてないがっかりした感じ。

 いろいろって言葉に、含みがいっぱいある気がした。


 『竜』と共に戦ったっぽい竜騎士にして、教会の初代教皇っていう思いっきり『神』が上にいて、さらにはその『神』に騙されたっぽくて……


 いくら人が良くても嫌なものは嫌、っていう感じか。


「何? どうしたの? なんか笑ってたけど」


「いやね。こっちの世界でもさ、組織のトップとかってどこか嫌われているところあるよなぁって思って」


「それはね。どんなに信奉してたとしても、嫌なところってそういう人ほど目立つし」


 ツァルクが乗ってきた。

 意外と愚痴っぽい?


「でさ、この布を外して欲しいんだけど」


「ん、アイ。どうしよう? 外してやってもいいんじゃないか?」


「でも外すと裸だぞ。いいのか?」


「それは嫌だ。でも身動き取れないのも嫌だ。動けるけど裸。動けないけど服(?)がある。どっちがいいかな」


 低次元なことで悩み始めたぞ。


「このひと、思った以上にノンキだな」


「だから、タツコに気に入られたんだろう」


 自分と全然違うタイプだからってやつか。


「いや問題でしょ。だって真っ裸だよ? 男だったら別にどうでもいいが、女の子の前でフルチンは避けるべきだ」


 一千年眠らされて利用された男が、最初に気にするのが女の子の前で裸になってもいいかどうか、か。

 ノンキだろ?


「そこの人も起こすんだろ? 起きたらいきなり裸の男がいたら嫌でしょ」


 そうだ、そうだった。

 ツァルクを先に起こしたが、ウルシャもいた。


「拘束を解かれた後、動ける服がないっていうのは問題だな」


 大した問題でもないのに、やけに迷うな。


「服か……イセ、貸してやれ」


「えー、俺の服はこれしかない」


「なら同じ服を、作れ」


「……どうやって?」


「まずこの空間は、お前のものだ。アイは魔法で干渉したが、もともとはお前のだ。だからお前が望めば望んだものが形になる」


「ほんと? なら、ツァルクにパンツを」


 と、想像したら、トランクスがはらりと、どこからともなく現れた。


「……マジか」


 魔法のハイエースやら、おにゃのこ化光線に引き続き、パンツを作り出す能力を得た。

 ……何故、こんな力ばっかりなんだ。


 だが、それを見て驚くアイとツァルク。


「すごいな。魔法陣もなく、術が発動するきっかけすら見えなかったぞ」


「本気か? 俺の服、それだけか? そんなの下着じゃないか」


 驚きの質も、アイとツァルクで大いに違った。

 ノンキだな、竜騎士。


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