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224話 恋バナ

 早朝の徹夜頭で聞かされたのは、ケアニスの想い人がナノスという話。

 ナノスっていうのは、俺のことをひき殺そうとしたり、タツコと殴り合ったりしていた亜人美人のことだ。


「え? マジ? 想い人って恋しちゃってるやつ?」


 アイが思わず口にして食いついてる。


「あれが? あいつの?」


 タツコが、今まで見た中でも結構目を輝かせて食いついている。


 ん? あれ? ひょっとしてこのふたり、興味津々なの?

 今の今まで、そういう女の子っぽさをまったく見てないんだが、普通に恋バナ好きなの?


 そして、アイとタツコの様子に気付いたケアニスはため息をついて言う。


「一方的にちょっかいを出されただけですよ。鬼王さんの勘違いです」


 お。なんだそのこっちは意識してないんだけど困ったもんですよ系のモテモテ発言。

 そう思った俺と、同じように感じたのか、アイとタツコと目をあわせる。


「あれ、マジじゃね?」


「ああ。野性味あふれる暴力女子だからこそ、やられたのかもしれんな」


「ケアニス、ああ見えて真面目だからな。ギャップにやられたのか。マジか」


 なんだお前ら。

 変なところで気があうな。

 ていうか、元『竜』のくせにそういうのわかるんだ。


「ナノスちゃん、ああいう子だから。攻め攻めだったよ」


 その話に、鬼王も乗る。


「ほうほう、それでそれで?」


 身を乗り出して聞く姿勢になるアイとタツコ。


「ええ、彼女は鬼王さん以上の戦闘狂ですよ。魔境城塞に私が常駐したのも、彼女が攻めてくるからですね」


 あ、そういう意味でちょっかい?

 攻め攻めっていうのは、そういう直接的暴力の話?

 ナノスならありうるんだろうけど、鬼王はケアニスの反応をニヤけ顔で受け止める。


「そうそう魔境城塞に攻め続けてたからなぁ。ほんと飽きもせず。死人はなかなか出なかったけど怪我人続出でこっちは大変だったよ。そのうちひとりでも攻めてたし。何のためだよと思ってたけど、そういうことかと気付いた時は、驚いた」


「まったく、迷惑でしたよ」


「ふーん、迷惑ね」


 恋バナから実際の戦い的な話に方向転換できたっぽい流れに、ケアニスが若干ホッとした顔をしている。

 そういうムードを感じ取ったアイとタツコも、ちょっとがっかりオーラを出している。


 しかしそこで楽しそうに鬼王は言った。


「ナノスちゃんから聞いてるぞ。あいつ、お前に告白したそうだな」


 再び、アイとタツコは食いついて耳をすませる。


「……ええ、されましたね。それが何か?」


「自分のことを倒したら付き合ってもいいって言ったそうだな」


「「ほう!?」」


 それを聞いたケアニスが、照れている。

 アイもタツコも、嬉しそうだ。


「い、言いましたけど」


「だよなー、言っちゃったんだよな。ナノスちゃん、俄然張り切ってたからなぁ。だってほら、あいつの得意分野じゃん、ガチ戦闘。それで受けたってことは、望みあるってことで頑張ってたぞ」


「それはわかりますよ。戦うたびに工夫が見られました」


 なんだこれ。

 いきなり鬼王に対して喧嘩腰で追い詰めていたはずのケアニスが、妙にたじたじだぞ?


「ちゃんと責任とってくれよ。うちの次期鬼王候補なんだからさ」


「責任って……」


「好ましいって思ってんだろ? さっさと認めて付き合っちゃえよ」


「なっ!?」


 ケアニスが動揺した瞬間、俺にもわかるくらい彼の真力は乱れた。

 だから鬼王が動いた。


「隙あり」


 ケアニスは、手首あたりを叩かれて短剣を落とす。

 真力で作り出した鬼王の剛術に対抗するための武器は落ちた瞬間、形を保てず消える。

 消えた時にはすでに手加減抜きっぽい鬼王の拳が、ケアニスの腹に入っていた。


「っ!?」


 うめき声もあげられず、無抵抗の状態でケアニスは前に倒れ、それを鬼王は殴った腕で受け止めた。


「間一髪だった。アイ、せっかくだからこいつ連れていく。ナノスと同じ魔法をかけてくれ」


 鬼王、俺たちのついでとばかりにケアニスを拉致した。


「魔境城塞を通るのにケアニスいたらどうしようと思ってたが、楽に行けそうだな」


 この行き当たりばったりで『神器』たちの主導権を握っていく鬼王、ぱないな。


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