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221話 転生と『召喚術』

 『神』を殺すと言っているタツコさんはおいといて。

 ナノスが使える、元の世界に送る方法っていうのを考えてみる。


 まずは、どうやって送るのか。

 それが使えるのがナノス。

 現れた瞬間、車で人を跳ねたり、殴りかかったりするあのナノスだ。

 危ないので魔法で眠らせたままにしとかなきゃいけなかったあのナノスだ。

 いい予感はしない。


「そのナノスが使える元の世界に送る方法が、本当に安全かどうか確認してから、考えてみる」


 と鬼王に伝えると、彼は大きくうなずいた。


「ごもっともだな。見てから考えてくれてもいい」


 鬼王は今、強く進めずに誘ってみたくらいの態度で、この話を終えるつもりだったようだ。

 そこで話は終わった。はずだった。


「送る方法は、言えないのか?」


 なのに、タツコがぶり返した。


「何? タツコちゃんすぐにでも行きたい?」


 鬼王が質問に質問で返すと、タツコは黙って不機嫌さを増した。

 車の中という密閉空間で、すぐ剣呑な空気を醸し出すふたりといるのは、とても嫌だ。


 鬼王、気さくなようでいて、人が嫌がる話題をあっさり振る誰とも仲良くはなさそうなタイプか。


 ひとまず、会話になる前に煽りあいから暴力に訴えだすことにならないようにするため、会話を進める。


「鬼王、それってやっぱり一度死に目にあうんですかね?」


「まあ、そうだろうね。俺やタツコちゃんならそこまでじゃないと思うけど」


 つまり頑丈だと生き残る可能性があると。

 でも、もし死んでなかったら、転生したとは言えないのではなかろうか。


「転生したら、やっぱり元に……いや、あっちの世界の人間になるから、この世界で得た力とか無くしたりしませんかね?」


「死んだことないからわからん」


 鬼王は事も無げに言う。

 そして、タツコは黙っている。

 殺そうとしても死にそうにないふたりは、そういうこと考えないのだろうか。


「そういえば、タツコは『竜』として鬼王に召喚されたから、一度死んでる?」


 タツコに聞いても黙っているので鬼王の方を見ると、首をすくめられた。


「召喚術は死んだやつを召喚するのか? 俺は別にそういうのを求めて召喚したわけではないから違うんじゃないか」


 それを聞いて、応えられる人は誰もいない。

 俺はトラックに追突されて死んだから、この世界に召喚されたと思っていたんだが違うのか。


「どうやって『竜』を召喚できたんですか?」


 不機嫌そうなタツコを気にしながら、鬼王に聞く。

 鬼王は、彼女のことはまったく気にしてない様子で応えた。


「地上最強を求めて召喚術を使った。そしたらこんなの出てきて、でかくて強くて言うこと聞かなくて、大暴れされて手におえなかった」


 若干楽しげに言っているが、タツコになる前の『竜』を見るかぎり、本当に大変だったんだろうなとわかる。

 召喚術使って、自爆したような感じだろうか。

 鬼王の話を聞いたタツコは無反応。


 彼女は伝説の竜騎士の『竜』だ。

 伝説の時代から今の時代に召喚された?

 それとも、伝説の時代から召喚されるまで、ずっとどこかに隠れ住んでいた?


 見てる限り、隠れ住んでいたってことはなさそうだけど。

 その辺は、いずれ聞くとして……


「召喚術を上手く使ったのは、アイちゃんだな。外部の力を使う魔法の使い手だからこそ、お前を召喚できた。羨ましいぜ」


 鬼王がそんな話をしたあたりで、頭の中に響く。


『我は、今より過去の時代から召喚された』


「え、あ、うん」


 響いた声に一瞬反応しそうになったが、鬼王に気づかれないように彼の言葉に相槌をうったように見せた。


『死に目になどあっていない。我を殺せる者などあの時代にもいなかった』


 鬼王が何か話しているが、そっちよりもタツコが頭の中で語りかけてくる方が気になる。


『我を殺せるまで衰えさせたのは、君だ』


 あ、はい。それはすみません。


『そして、死んだのに召喚されたと言っている者は、我は君しか知らない』


 それからタツコは、今度こそタツコの顔を見るしかないようなことを言った。


『君は、本当に死んだのか?』


「はい?」


「ん? どうした?」


 俺の疑問の声に、鬼王が反応した。


「あ、いや、なんでも無いです」


「顔色悪いぞ」


「徹夜、だからかな」


「休むか?」


「いや、このままで」


 それからタツコの念話は飛んでこなくなった。


 俺は、死んでない?

 あのトラックがぶつかってきた瞬間に、召喚された?

 ありうる……のか?


 すやすやと可愛い寝息をたてているアイを見て、それからふたりきりの時にでも聞いてみようと思った。


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