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214話 メンツを変えてドライブへ

 エンジンかけっぱなしでライトつけっぱなしのトラックの明かりで長い影を伴いながら、声をかけられた鬼王がやってくる。


「で、誰が行くんだ?」


 声を張らなくても届くところまで鬼王がきたところで、俺たちも近づく。

 前に出たのは、アイと俺、そしてタツコだ。


「この3人だ」


「当初の予定通り……ではないが、イセは生死問わず連れていくつもりではあったからな」


 不穏なことを言われた。


「その生死問わずとかいうの止めないと、協力はしないぞ」


「それでいい。で、タツコちゃんはいいのか? 一度、俺のところから逃げてるが」


 『竜』の時の話だろう。

 タツコは鬼王に召喚されたんだっけか。


「かまわない。それでこれからどこに行くんだ?」


「俺の国」


 そういう話だった。

 亜人領に、鬼王たちに拉致されて、あのトラックで運ばれる予定だった。


 それを、アイが運転手ナノスを魔法で眠らせたから、急遽俺がドライバーに選ばれた。


「そこで何をする気だ?」


「それは『神器』だけで話したいところだな」


 ここで言う気はないらしい。


「うちの戦車、乗り心地はいいぞ。道中の雑談にはもってこいだ。ナノスちゃんとずっと話してたから退屈しなかった」


 あれとの雑談って、なんかとても粗暴そうな話のイメージしかない。

 語尾にすぐ、コロすぞ、とかつきそうだし、あいつ超びびっててさ、とかいう話をしてそう。


「知らなかったんだが、ナノスちゃん、地元じゃ負けなしだったんだってさ。おっかしいよな。弱いのになぁ」


 やっぱりそうだ。

 そして、俺が疑問に思ったことを聞いた。


「その雑談、道中で話すなら俺も聞くことになりそうだけど、いいのかな?」


「構わないよ」


 あっさりと認められた。

 この鬼王の許可不許可の琴線がわからん。


「じゃ、行こうか。ナノスちゃんは荷台に積んでおいたから」


 仲間なのに雑な扱いなのは、亜人ならではなのだろうと勝手に納得しておいた。


 それから俺たちは、残るメンツと別れを告げる。

 クオンとカウフタンたちから、アイを必ず守れと釘を刺された。

 いざとなったら、今のウルシャのような扱いをしてでも、と言われた。

 俺もそのつもりだった。


 アイは、クオンに内緒の指示を出し、カウフタンにはオフィリアと共にこの難局を乗り越えてくれという話をしていた。

 確かに、教皇庁とサミュエル卿がどう動いてくるかはわからない。

 アイを保護するエジン公爵領は、今後も渦中になるだろう。


 別れを済ませた後、トラックへ。

 俺がまず運転席。

 続いて広い助手席にアイとタツコが乗った。


「俺の乗るところがないぞ」


 鬼王が不満を漏らす。


「タツコちゃん、ナノスと一緒に荷台に乗って」


「断る」


「アイも、シートベルト無しで乗るのはイヤだぞ。怖いし」


 助手席でオーナーの鬼王に対してワガママを言う女二人。

 これが複数人ドライブあるあるか。

 異世界でこれを味わうことになるとはなぁ。


「なら力づくだな」


 そして粗暴すぎる男がタツコに暴力を振るいそうになる。

 このドライブ、最悪だな!


「そうだ、こうしよう」


 タツコは言って、アイのシートベルトを外して自分の膝の上にのせた。


「私がこうしてシートベルト代わりをしよう」


 助手席で少女を抱っこ乗せする。


 道路交通法がないから大丈夫かな?

 まあ下手なシートベルトよりも、タツコが守ってくれるなら安全だろうけど。


「仕方ないな。ほらソロン、乗れ」


「うちの戦車だっつーの」


 ようやく、オーナーが席につけた。

 いきなり座席決めで揉めるようなメンツでのドライブは、不安しかなかった。


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