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208話 効きそうにない、おにゃのこ化

「今の戦車の当たりなら、ナノスちゃんの戦車の方がまだ使える」


 鬼王はあんなに撥ねられてもピンピンしている。

 でもって特になんとも無いという風に話している。


 頑丈にも程がある。

 全然びびってないし。


「でもまぁ、イセちゃんには効かなかったようだし、『力』の不安定さは同じか? おーい、ナノスちゃん、その辺どうだ? ん? 魔法、効いちゃってるのか?」


 鬼王は、エンジンのかかったままのトラックへ近づき、運転席を覗き込む。

 運転席では、ナノスがハンドルに突っ伏しているのが見えている。


「おーい、どうしたー?」


 声をかけて、ドアをあけて、ナノスの体を揺すっている鬼王。

 アイの魔法で気絶している?


「おいイセ、体は大丈夫か?」


 服の裾をひっぱって、アイが聞いてきた。


「ん、ああ。なんとも」


 本当になんとも無い。

 トラックに生身で撥ねられたのに、ピンピンしている。


「マジか……あとで医者に診てもらおう。で、こいつらどうする?」


 車に撥ねられても平気な相手だ。

 こっちにあそこまで頑丈なのは、タツコくらいか。

 いや、タツコも鬼王たちへの警戒を解いていない。

 まだピンチは続いている証左だ。


 で、アイにどうすると聞かれたわけだが、俺の方が聞きたい質問だった。


 俺としてはやっつけるか、追い返すか、あるいは逃げるか。

 逃げて大丈夫かというと、ダメな気がする。


 俺がハイエースの爆速でなんとか逃げ切ったような相手だ。

 今ここにいるメンバーを鬼たちで回収して逃げたとしても、やつらはトラックで追ってくる。


 仮に逃げ切れたとしても、こいつらを町のそばで野放しにすることになる。

 それはいくらなんでも無いだろう。

 カウフタンたちだって、町を捨てて逃げるという選択肢はないだろうし。


 となると、やっつけるしかない。

 だがどうだ?

 タツコくらいしか、対抗できるやつがいない。

 こんな時に、ケアニスがいてくれればと切に思う。


「イセの『力』で倒せたりできないか?」


「……それだ」


 おにゃのこ化だ。

 今までやった相手は、カウフタンとタツコ。

 どっちも可愛い女の子になり、さらには今、味方になっている。

 つまり100%味方になるってことだ。


「イセのあのひどい術で女の子にしてしまえば、ソロンも無力化できるんじゃないか」


「それしかないな」


「止めとけ」


「「!?」」


 止めろと言ったのは、女の子にされたカウフタンでもタツコでもなく、鬼王だった。


「仮にその外道な『力』が効いたとしても、俺には意味がないぞ。別に俺は男でも女でも構わない」


「なんだと!? そんな馬鹿なっ!?」


 一番驚いたのは俺だった。


「何故だ。女の子になったら困るんだぞ。カウフタンだって、タツコだってとっても困ったぞ。鬼王とか名乗れ無くなるぞ」


 アイがとても的確な要点をあげてくれた。

 そうだそうだ。

 それが女の子になっちゃった系のステキなところ、じゃなくて葛藤するところだぞ。


「俺たち亜人は性別にこだわらない。男だろうが女だろうが、強ければいいだけだ。鬼女王、いいじゃないか」


「う……ま、まあそうだな。鬼女王でも別にいいのか」


 アイが言い負けている。

 ていうか、こいつ個人が性別にこだわってないだけか?

 ケアニスも、女の子になりたい言ってたな。

 人間以外は、その辺に無頓着なのか?


「そうだ。ナノスちゃんが俺に勝てば、彼女が鬼女王だしな」


 やっぱりナノスは女だったか。

 中性美人のオレっ娘とトラックでドライブとは、いい趣味してるな鬼王。


「……あれ? ナノスちゃん、女だっけ? 男だっけ? まあいいか」


「おい!」


 思わず突っ込んでしまった。

 こだわらなさ過ぎるぞ鬼王。


「効いたら効いたで、体の扱いが難しくなるのは……そのタツコちゃんで確認しているから、警戒はするけどな」


「やっぱり効きそうだぞイセ。やろう」


「あんなノロい術、仕掛ける前に潰せるぞ」


 鬼王はそう言いながら、ゆっくり近づいてくる。


「俺の拳は、イセちゃんの戦車より固いんだ」


 これから暴力振るいますっていう雰囲気をまとわせながら、鬼王がやってくる。

 アイと俺を中心に、ウルシャらが守るように前に出て武器を構えた。


「ではアイちゃん、邪魔者らを片付けるからこっちに来てくれないか」


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