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197話 『神器』と召喚術

 衛兵隊が用意してくれた部屋に、俺とタツコがいる。

 元々は、貴族や富豪を捕虜にした時、彼らが快適に過ごせるように用意していたもの。

 なので、部屋の造りや調度品なども、若干お高めなイメージ。


 ここはタツコとケアニスの部屋になるはずだった。

 だが、アイが何やら忙しいということで俺は別室へ。

 そして、ケアニスは伝令代わりにコンウォル辺境伯のところへ。


 タツコひとりでは何があるかわからない。

 暴れたら衛兵隊では手がつけられない。

 ここは、『竜』をこうしてしまった奴でもつけておくといいだろう。


 ということで、俺はタツコとふたりきりの暇人となってしまっていた。

 でも俺じゃ、タツコが暴れた時、止められないんだよね。

 ケアニスがいないと。


 なんて考えている時に、タツコの質問が飛んできていた。

 俺には応えられない質問だった。


「イセ、あの戦車を仕舞う方法を教えてくれ」


 また聞かれたので、応えた。


「わからない」


 彼女は俺の返事に対して無反応だ。

 納得してないというか、まったく聞いてないような態度を崩さないタツコが話す。


「やってみせてくれ」


「ここは狭いから無理。あんな大きいものを出すことはできない」


「なら広いところへ行こう」


 と立ち上がって、扉の外へ出かけていく。

 衛兵たちは出てきたタツコを止めるが、聞いてくれないようで、廊下がざわついている。


 だが俺はついていかない。

 するとタツコは戻ってきた。


「イセ、外に出るぞ」


 衛兵たちが、廊下からこっちを見ている。

 そっちの問題は、そっちで片付けてくれ、と言いたげな不安な視線を俺に向けてくる。


「タツコ、俺の話を聞いてくれ」


 タツコは、何故我の言うことを聞かない的な、こっちの話を聞いてくれなさそうな顔を向けてくるが、構わず話す。


「俺がハイエースを出すところを見てどうするつもりだ?」


「……ふむ」


 人の話を聞かなそうだったのに、俺の質問に興味を持った様子だった。


「イセは、あの戦車を出し入れできるのに、やり方を知らないと言ったな」


 俺はうなずく。


「同じことを我も言った」


「はい?」


 ほんの僅かに、タツコは微笑を見せた。


「我も、こいつに言ったのだ」


 こいつと言った時、視線がベッドの方へ。

 そこには、例の布でぐるぐる巻きになった仮死状態の竜騎士があった。


「こいつは、我が力を使っているところを見て、見様見真似で試し続けて、使えるようになったのだ」


 黙って聞いていたが、これってすごいことなんじゃ?

 見て覚えたって、元いた世界の古い時代にあったという言葉足らずな職人ワールドの住人じゃないか。


「すごいやつだろう?」


「え、ええ」


「ふふ、やはりそうか」


 今度こそ、はっきりと笑った。

 どこか自慢げな笑みだった。


「我を見て、こいつは力の使い方を覚え、それがケアニスや天使どもが使っている『真力』となったんだ。あれは我の力を真似たもの。それを真似たのが、こいつだ」


 淡々と語るタツコに、俺は前々から聞いてみたかったことを聞いてみた。

 このタイミングなら、話しても大丈夫かもしれないと思ったからだ。


「タツコって、伝説の竜騎士が乗っていたっていう竜?」


「そうだ。チェインとは我だ」


「ならチェインって呼ぼうか?」


「いや、タツコでいい」


 簡単に教えてくれたので、あっけにとられた。

 もっと聞いてみようか。

 ちょっとお茶ついでに話そうか的に、軽い感じを醸し出して聞いてみよう。


「伝説って言うくらいだから、だいぶ昔なんだよな。今までどこにいたの? 帝都に居着く前」


「…………」


 タツコから表情がまた消えて、黙ってしまう。


 ……だいぶ昔って言ってしまったのがまずかった?

 女性に年齢を聞くのは野暮って話を聞くけど、それ?

 今生きてる高年齢層を何回りか上回るレベルの高齢だろうし。


 でもそれってもはや不老とかそういうのに近いよな。

 年齢聞かれてショックを覚えるとかないよな。


 ……この世界の常識がわからない。


「聞いてなかったのか。我はソロンに召喚された」


「ソロン……鬼王ソロン」


 頷かれた。

 『神器』鬼王ソロンは、亜人たちの王だ。

 召喚術は『神器』が使える、魔法とは異なるもの、なんだっけ?


「お前もアイに召喚されたんだろ? こことは違う世界から」


 俺はうなずいた。


「我は、この世界の過去から召喚された」


「……過去から?」


「ああ。ソロンは規格外だからな、そういうことができた。本来なら今現在のこの世界のどこかにいる力あるものが呼び出されているはずだ。我の前はそんなだったと聞いている」


「へ、へぇ……」


 ってことは……俺の召喚って……


「アイは、外の世界の力を使う魔法の知識があるから、イセを呼び出せたのだろう」


 聞いている限り、ソロンよりもアイの方が、どうやら規格外のようだ。

 そのことに驚いていると、タツコはジッとこっちを見ている。

 俺のことを探るような視線だ。


「気付いたか?」


「え、あ、はい。アイがどれだけ規格外かって」


「そっちではない」


 タツコは淡々ととんでもないことを口にした。


「イセも、『神器』に選ばれる可能性はある」


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