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196話 『神器』3人体制の始動

 ケアニスは言った。

 コンウォル辺境伯への協力を、自らとりつけてくると。


 それに対してアイは、大丈夫か? と率直な質問を投げかける。

 質問というより、完全にお前で大丈夫かと疑ってかかっている。


「エジン公爵にはしばらくご厄介になる予定ですから。これくらいのお使いはしますよ」


 まるでちょっと代わりに買い物へ行ってくるくらいの気軽さだった。

 そこが不安にさせる。


「エジン公爵閣下、ご遠慮無く。魔境城塞で亜人たちを追い払っていたのと同じです」


「といいますと?」


 側近たちが動揺している中、オフィリアは落ち着いた様子で聞き返す。


「あれはコンウォル辺境伯にご迷惑をかけた、私なりの誠意です」


「それで、亜人たちの侵攻をおひとりで防いでいたのですか」


「ひとりではないですが、そんなところです」


「それは、高くつきそうなお使いですね」


「買いかぶりですよ。しかしそれなら働き甲斐がありますね」


 食事を済ませているケアニスは、給仕にお茶を催促し、それから言った。


「私の翼なら、イセさんほどではないですが、早々に連絡が取れますよ。明日にでも参りましょう」


「では、手紙を今夜中に用意いたします。よろしくお願いします」


 オフィリアが口にした途端、側近たちの数人が部下に何やら伝えている。

 部下たちは、それぞれ一斉に部屋の外へと行った。

 廊下を走っていく音も聞こえてくる。


 状況が動き出したと見ていいらしい。


「イセ殿が現れてから、動きが早い……」


 カウフタンがそう小さくつぶやいた後、他の側近たちが許可をもらって退室していく中に入っていく。

 衛兵隊長代理として、動き出したようだ。


 俺の隣にいたクオンも、いつの間にかウルシャのそばに寄って耳打ちしている。

 そして、許可も待たずに消えるように退室していった。


「アイ様、クオンは護衛のための情報収集に走ってもらいます」


「わかった。長旅の後にすまないと、あとで伝えてくれ」


「就寝前には一度戻りますから。その時に直接お伝えください」


 ってことで、俺たちの周りがにわかに忙しくなった。


 食事会兼報告会の後、それぞれがそれぞれの準備を始める。


 カウフタンは、衛兵隊を率い、城下町の警備の強化と、『神器』たちの護衛任務が加わった。

 アイ、ケアニス、タツコの護衛のためのローテーションが組まれる。

 でも後から聞くに、三人の『神器』は影武者でフェイクの護衛とのこと。

 アイ以外は、護衛の必要もないくらい強いから、そういうことにしたらしい。


 オフィリアは、コンウォル辺境伯への親書以外にも、公爵領内外への伝令の準備を始めた。

 『神器』3人がいることを踏まえつつ、それによって軍事行動等を起こすつもりはないという意思表示が主な目的だ。


 ウルシャとクオンは、アイの護衛の強化。

 AI機関から離れていたため、早急に連絡を取る必要もあったので、アイも忙しくしている。

 さらにエジン公爵領城下町にあるAI機関分室にある私室に、アイはしばらく籠もるという。

 魔法にはいろいろ準備が必要、とのこと。

 何をする気なのかわからんが、重要なことらしい。


 と、それぞれ忙しくしている中、食事会の次の日にケアニスはオフィリアの親書を持って、コンウォル辺境伯の元へと飛んでいった。


 天界を相手取って一歩も退かないどころか、戦力激減させたケアニスがいない不安はある。

 だが、その不安を払拭させるだけの戦力にタツコがいる。

 俺も、戦力の頭数に入れられた。


 ということで、現在俺は衛兵隊関連の隠し部屋にいた。

 一緒にいるのはタツコだ。


 部屋の外で衛兵が護衛しているものの、軟禁状態というわけでもない。

 ただ気軽に町には出ないようにしてくれ、とは言われた。


 タツコと同じ部屋にいるのは、なんか不安にさせる。

 黙ってじっと座っているだけなのは、逆に怖い。

 『竜』の時は、帝都にじっとしていたから、それが基本スタイルなのだろう。


 さらにアイから離れたことで、実は暇になった。


 どうしよう?

 この世界の本でも読んでみようか?

 気軽に読める本はあるのか?


 ていうか文字は、ほとんどわからんのだった。

 時間があるから、学んでみようかな。


 と考えていたら、タツコが声をかけてきた。


「イセ」


「あ、はい。なに?」


「イセのあの禍々しい力を持つ戦車なんだが……」


 禍々しとか言われてしまった。

 タツコからすれば、そんな邪悪な暗黒の力にでも見えるのかもしれない。

 キルケも、アイの魔法や俺の力を、そんな目で見てたし。


「あの戦車をしまう方法を、教えてくれ」


「……知らない」


 俺の知らないことを、聞かれてしまった。


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