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195話 エジン公爵としての立場

 エジン公爵が、コンウォル辺境伯へ協力を仰ぐ。

 何故? その意味は?


「名案ですね」


 と、カウフタンが感心したように口にした後、突然の発言失礼しましたと礼をした。

 そして、分かっていない俺の方を見て、ため息をつき、改めて発言の許可を求めてから話す。


「衛兵隊長代理として賛成いたします。コンウォル辺境伯の独立性と帝室への忠誠心は、誰の目にも明らか。この非常事態に協力を要請する先として、最も適切かと」


「教皇庁もうかつに手を出せるところではないですしね」


 ケアニスが軽く口をはさみ、アイが苦笑した。


「ケアニスが言うと説得力あるな」


 天界を出て辺境伯の魔境城塞へ居着いたケアニスは、コンウォル辺境伯と教皇庁との間には溝があると話した。

 その溝の一旦を担ったケアニスが言ったので、説得力があるらしい。


 とそっちはいいとして、でも……


「あ、俺もいいでしょうか? サミュエル卿の通商連合って、魔境城塞の防衛に協力していたからこっちの厄介事は嫌がるのではないでしょうか?」


「そのあたりも含めてっすよ、イセ殿」


 クオンが説明してくれた。


「サミュエル卿とコンウォル辺境伯との繋がりは強いです。ですから仲裁役になってくれるってことっす」


 つまり、エジン公爵と仲良くしても、コンウォル辺境伯としては問題ない立場ということか。

 なんとなくわかってきた。


「帝国貴族同士の争いはご法度だからな。名目上は」


 アイもまた軽く口をはさみ、オフィリアに向かって微笑んだ。


「『神器』たちが仮に敵対したとしても、エジン公爵はあくまで中立を保つってことだな」


「はい、そうです」


 オフィリアは、はっきりと肯定した。


「『神器』同士が争う場合、エジン公爵がその争いに加担することはありません」


 オフィリアの発言に対して、彼女の側近たちに不満や疑問を持つものはいないように見えた。


「アイのAI機関を迎え入れているのにか?」


「はい」


「……そうだな。あくまでアイたちを保護してくれているだけだ」


「……」


 アイの発言に、オフィリアは応えない。

 それは肯定の意思を示したかのように見えた。


「うん、それでいい。いや、それがいい」


「アイ様のお気遣い、痛み入ります」


「アイはいつかオフィリアに、ここまで守ってくれた恩を返したい。それまで頑張るぞ」


「もったいないお言葉です」


 そこにいる皆が、ふたりの会話がわかるようだ。

 俺はというと……


「今の、わかるっすか?」


 クオンにこっそり聞かれる。

 また説明してくれるのかもしれないが、なんとなくわかると応えた。


 エジン公爵は『神器』アイに肩入れし過ぎていた。

 それは、他の『神器』と比べて、アイがあまりにも頼りないからだ。


 アイは、この世界の唯一の魔法使い。

 だがその力は、他の『神器』たちと比べてあまりにも弱い。

 だから、エジン公爵は、アイを保護していたのだ。


 故にエジン公爵は、他の『神器』を擁する者たちと、実質敵対関係にあった。

 シガースとアイが師弟関係であり、人間側の『神器』だったのでサミュエル卿とは協力関係でいられたが、それはアイが、保護されるほど弱い立場であることが前提と言える。


 つまり、情勢は変わった。

 今や『神器』の中でも、強力な存在となってしまった。

 人によっては、『神器』のトップになりうる存在と映るかもしれない。


 故に、帝国の大貴族エジン公爵として、オフィリアは判断したのだ。

 アイの保護は終わった、と。


 ほんと、やっかいな状況になってるんだな……


「では、私も早速受け入れてくれた礼をしましょう」


 ケアニスが食事を終えて満足した顔で言う。


「コンウォル辺境伯との協力、私がとりつけてきましょう」


 オフィリア嬢と側近たちがざわつく中、俺たち一緒に旅をしてきた陣営は疑わしい目を向ける。


「ケアニスが? 大丈夫か?」


 アイが俺たちの気持ちを代弁してくれた。


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