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192話 集められた『力』

 朝の野営場で語られていた俺の異常性癖。

 いや、俺はそんな性癖を持ち合わせてはいない。

 とんでもない話だった。


 そして今、もっととんでもない話が始まっていた。


「竜騎士が蘇る……ってどういうこと?」


 俺は、皆を代表してそう質問した。

 誰に聞いていいのかわからないので、ひとまず……アイとタツコとケアニスの方を向いて言ってみた。

 三人は、黙っている。


 なので、他の三人の方を見る

 ウルシャとクオンとカウフタンも、黙っている。

 よくわからない様子だ。

 まあそうだよな。


 蘇るとはっきり言ったアイは、少し小難しそうに眉を寄せている。

 ケアニスはいつもどおり、微笑を浮かべているだけ。

 ああ、そうだ、と肯定したタツコは、それで説明終わりとばかりに無表情。


 誰か説明してくれ。


「蘇らせる、必要があるんだろうな」


 アイは、タツコとの話を続けるようにそう言った。

 だがタツコは応えない。


 おいてけぼりの俺と、他人間組の3人。

 これはいただけない。


「よくわからんが」


 俺はアイとタツコの会話っぽいものを遮るように、それでいて皆に聞こえるように口にした。


「よくわからんが、それってまた何かヤバいものを抱え込んだってことじゃないの?」


 と、素直に現状わかる問題点を指摘してみた。


 元々、現存する唯一の魔法使いであるアイ。

 現在唯一の真力使いの堕天使ケアニス。

 元『竜』のタツコ。

 そして、魔法のハイエース乗りの俺。


 それが今、ここに集まっていて、これからエジン公爵領へ移動する。

 世界の力の均衡に偏りが生じている。


 そこに竜騎士ツァルクの復活?

 伝説がどんなだか知らないが、あのタツコが大切そうに抱えている時点で何かある。


 ケアニスの語りからして、天界の真力に絡むような力を、あのミイラが生み出していたわけだから。

 そんなのが復活したら、そりゃ大変なことになるんだろうっていうのは、想像に難くない。


「『神器』が3人いて、そこに伝説の竜騎士? それがそろいもそろってエジン公爵領に集まって、大丈夫? 他の皆さんから狙われたりしない?」


「する、でしょうね」


 即答したのはケアニスで、皆は否定できないという様子だった。


「私ひとりの時ですらそうでした。魔境城塞に私がいるだけで、亜人たちは手を出して来ましたよ。サミュエル卿は裏から手を回して、周辺の領主たちと色々動いていたようですし」


 そういえば、人間の領土と亜人の領土を分ける境目に魔境城塞ってあった。

 そこにケアニスがいて、亜人の侵入を防いでいたんだっけ。


「エジン公爵領では同じようなことが起こるでしょう。血気盛んな者たちが攻めてきたり、サミュエル卿みたいな人が裏から手を回そうとしたり。ですよね?」


「はい、そうでしょうね」


 ケアニスに聞かれたカウフタンは、躊躇なくそれを肯定した。


「ほら、領土を守ることに精通している衛兵隊長がこう言っているんです。私もそういうことに関しては魔境城塞では当事者でしたからわかりますよ」


「っていうのを分かっていながら、この状況を放置する?」


「放置ではなく、この状況を作ったのは、私の……私だけではないですね、我々の意思ですよ。自然にできあがったわけじゃない」


 ケアニスはいつもどおりに語る。

 いつもどおり、不穏になる感じで語る。


「私の目的、アイさんの目的、タツコさんの目的、イセさん、ウルシャさん、クオンさん、カウフタンさん、それぞれの目的で動いたことで、こうなった」


「自分がこうしたわけじゃない、と?」


「買いかぶらないでください。そこまで未来が見通せれば、それこそプロット(たくらみ)通りに上手く進むでしょうけど、物事はイレギュラーばかりです。たとえばあなたとか。たとえばあなたが変えた元『竜』とかね」


 まるで俺がこの状況を作ったかのような言いようをされた。


「それにこういう時こそ、力はあった方がいい。多くのイレギュラーに耐えるにも、押し返すにも、力は必要になります。魔境城塞では、単発で押しかけてくる亜人たちは私の真力で対処しました。そういう力、ここに欲した者たちも沢山いるでしょう?」


 ケアニスが皆を見て回る。

 アイを守るために力が必要だったウルシャとクオン。

 エジン公爵領を手にする野心のために力が必要だったカウフマン。

 元竜騎士を手にするために力が必要だった元『竜』

 そして『神器』として『神』を目指すために力が必要だったアイ。


 ここにいる皆は、力を欲していた……俺を除いて。


「これだけ集まれば負けませんよ。我々は」


 まさに不穏な自信を見せるケアニス。


 これからエジン公爵領で、ひと騒ぎあるのだろう。

 それは、皆が集まっているから、ということになるだろう。


 結論は出たようなものだ。


「わかった。それじゃさっさと行こう……帰ろうか、エジン公爵領へ」


 俺がそう言うと、アイたちがうなずいた。


 こうして、仮死状態の竜騎士ツァルクも一行に加わった。

 いや、加わったというより、運搬することになったが正しいか。


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