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18話 この『力』の使い方

「どうする? 門に行かぬなら連絡するか?」


「考えがある! 連絡せずにそのままで!」


 考えなしで正面突破を避けたわけではない。

 こちらは気絶した公爵令嬢も含めて、一緒に高速で移動が可能というメリットがある。

 敵が戦力を広場に集中させているなら、そこ以外の場所を進む選択が可能だ。


 さらにこちらの有利な点は、鬼の力。

 鬼一体にあれだけの戦力がいないと相手は圧倒できないとわかった。

 1体を退けたところで、俺がいる限り何度でも蘇り、かつまだ9匹も残っている。


 どう考えても、こちらの方が有利なのだ。


「それで考えってなんだ?」


「少し待ってくれ。ほんとに少しだ」


 ウルシャが聞いてくるが、俺は曲がりくねった細い路地を走ることに集中したいので、ひとまず応えず走る。

 曲がって曲がって、また曲がって、別の路地から西門広場へ再び車体を露わにする。

 突然戻ってきたことで、衛兵たちが驚く。


「わわっ! イセ、戻ってきちゃったぞ!?」


 アイの真っ当な反応と、同じように彼らも思うだろう。

 道に迷っているのでは? と。

 それは衛兵隊長ならすぐに思いつくことだろう。


 ただ今すぐには、道に迷っているのなら追い詰めることができる、とは考えられるほどではない。

 支離滅裂な相手がどう出てくるのか、考える時間が出てくる。

 だから、その決断の迷いの隙に、再び鬼を出現させる。

 運転席からわらわらと出てくる鬼9匹。


 全員が入るにはあまりにも小さな車体から鬼たちが現れたので、広場にいる全員がギョッとしている。

 そこで俺は、ついさっき考えた作戦を口にする。


「鬼たちよ。広場にいる衛兵を無作為に10人、おもいっきり投げ飛ばせ。その後、バリスタも投げたら西門へ走れ! いいな!」


 細かい指示を出したが、通じたようで聞き終わるよりも速く衛兵たちの方へ走り出した。


「撃て撃て!!」


 衛兵隊長の命令が飛ぶが、少し遅い。

 鬼たちは、すでに衛兵隊たちの中に入っていっていた。


 その姿を確認した後、車体を急旋回して出てきた路地に戻った。

 そのまま、大通りを通らずに西門へ向かう。

 道が狭く、曲道も多いのでスピードは出せないが、確実に前へ前へと進めている。


「鬼、全部出ていったが大丈夫なのか?」


「もしこれに対応されたら、手も足も出ないよ。でもおそらく大丈夫。相手の対応が速くて驚いたけど、こちらが二手に別れて行動されたら手詰まりだろう」


「何故そう思うんだ?」


「勘」


「えぇー、ここまでやっておいた根拠が勘か?」


「勘が働いた理由はある。最初の攻撃の際に、あの衛兵隊長からの号令しかなかった」


「隊長だぞ。当たり前では?」


「そうなんだけど、わざわざこの謀反を起こした御本人が出てくるくらいだから、衛兵隊に他に指揮が取れるやつがいないんじゃないか?」


「「なるほど」」


 ウルシャとアイが、同時に納得の声をあがったということは、あっているようだ。

 衛兵隊長カウフマンが謀反の意志があることを事前に察知していたふたりをして、彼以外の優秀な部隊長クラスが思いつかないようだ。


「だったら、彼にしか対応できない状況を数多く作ればいい」


 そのために鬼たちには無作為にと指示を出しておいた。

 一匹一匹なら、衛兵隊長が指揮をとれば対応できるだろうが、9箇所同時には無理だろう。


 さらに、単純な腕力がケタ違いの鬼たちならば、ただ戦うより人間を投げ飛ばすという異行をさせることで、今まで通り戦うという選択をできる限りさせないことができる。


 その上、戦力を集中させた広場以外のところに本隊である俺たちがいる。

 鬼たちがやることやった後、西門へ走ることで、そっちの対応をせざるを得ない。


 結果、先に広場から去っていった俺たちは、指揮官の元で優秀な衛兵たちを相手にせず、烏合の衆と化した衛兵たちだけを相手にすればいい。


「あ、衛兵たちが投げ飛ばされているぞ」


 広場の方に、ぽーんと飛ばされる人影が見えた。

 それはそのまま建物の屋根に乗っかる。


「あのあっさりと古城の壁を壊せた上、公爵令嬢を痛がらせることなくハイエースに引き込む器用さなら、あれくらい可能と踏んだんだ」


 バリスタと矢を受けても即死しない鬼の耐久力も、今回見ることができた。

 衛兵たちが持っている槍や剣、クロスボウの矢、その程度ではそう簡単に倒れないと判断できた。


「おぬし、すごいな。ハイエースだけじゃなかったんだな」


「ハイエースの方が後付けだから。なんでどっちかというと、この狭い道の方が大変じゃね?」


 路地を進んでいると、ハイエースが通れないところにたどり着いた。

 このまま追い込まれるとまずい。


「ど、どうするんだ!?」


「えっと……あ」


 少し下がって、別の角を曲がる。

 そっちには、用水路があった。


「そこは通れないぞ」


「いや、そんなことないんじゃないかな」


 車体が傷つくことをお構いなしで、用水路へ出る。

 水路の幅ぎりぎりでタイヤが乗るので、そこを走ってまた、走れる道へ。


「ふぅ、助かった。車体が傷ついてもレンタカー屋に修繕費払わなくていい心のゆとりが生んだ手段だったな」


「ずいぶんと、無茶するな」


 無茶というのは、この作戦のことなのか、それとも用水路をギリギリで通ったことなのかわからないが、俺からすれば……


「こんなところに公爵令嬢を助けに行こうとしてた、アイとウルシャの方が無茶だ」


「「…………」」


 無言が返ってきたので、自覚をしているらしい。

 俺のこの異世界転生してきた『力』があってようやくできたこと。

 これをアイとウルシャは、自分たちだけでやろうとしてたんだ。

 彼女たちの力になれたこの『力』に少しだけ、ほんの少しだけ感謝した。


 それから町中の道なき道を進んでいると、広場の方からは大騒ぎと、人が飛んだり、宙に飛んでバラバラになっていくバリスタとかが見えた。

 上手くやっているようだ。


「あそこまで派手だと、確かにこちらには来ませんね」


 あのウルシャがこっちを感心するかのように見ている。

 ひょっとして俺、かっこよく見えてる?

 って調子にのってミスしないように気をつけよう。

 門を出て、城下町から走り去るまでが、この戦いだ。


 ジワジワと西門へ近づき、門の正面の大通りにようやくたどり着いた。

 そして広場の方を見ると、そっちから9匹の鬼たちが走ってやってくる。


「よっしっ、上手くいったな」


 あとは門が開けばと思っていると、門が開き始めた。


「おおっ、ほんとに開いた」


 しかし、当たり前だが衛兵たちがこちらに気づいて、武器をもってこちらに近づいてきた。

 何故門を開けたのだと、混乱してる。

 これは門を開けてられる時間ないぞ……


「衛兵たちしかいない。突っ込むか?」


「どうだろう……流石に、こいつの車体じゃ鉄の槍とかは防げないぞ」


「鋼鉄の移動要塞じゃないのか!?」


「そこは名前的に盛ってるところだから!?」


 ひょっとしたら魔力で装甲がついているのかもしれないが、まだ試してないからわからない。

 このタイミングで試したくない。


「任せてくれ」


 ウルシャがシートベルトを外して扉を開けて、表へ出た。


「え? おい、大丈夫か?」


 と心配していると、アイもシートベルトを外した。


「なっ!? あ、アイ!?」


「ここまでやってくれたんだ。おぬしはすぐに車を動かせるようにそこにいてくれ」


 何故か自信満々に言うアイも、外へ出た。

 ふたりはハイエースの前に立つ。


「ほんとは衛兵たち全員、アイたちが相手するはずだったんだ」


「イセ、敵の数を減らしてくれて感謝する」


 ウルシャは細身の剣を抜き、アイはぶつぶつと何かを唱え始めた。


 おおっ! ついにファンタジー世界の戦闘を間近で見られるのか!?

 くっそ、俺もそうやってかっこよく戦いたかった!?


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