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181話 『魔法』の復活

「『魔法』の復活だ」


 我々以外誰もいない夜の森の中で、アイがその言葉を口にした時、ひとりの男が唸った。


「ぐぬぬ」


 天使長キルケだ。

 真力を失い、無力化した今、彼は何もできない。

 掴みかかろうにも、ウルシャとクオンとカウフタンがいて、さらにはケアニスもいる。

 どうにかしたい相手に、何の力も振るえない。


 キルケの姿を見て、俺はその悔しさが何となくわかった。


「アイさんは『神器』として『神』を目指し、『魔法』を復活させるというわけですね」


「そうだ、それだ!」


 アイは見てるこっちが眩しくなりそうなくらい輝く笑顔でしゃべりだす。


「『魔法』が復活すれば、みんなまた魔法が使えるようになる。アイもすごく面倒くさい発動させるための土台の魔法をいちいち作らずに済む……これはいいぞ」


「よくないっ」


 キルケは全力で否定するが、アイは聞いちゃいない。


「それになそれになっ! 今のアイは、イセの『力』を知っている。これを魔法で再現できれば、どんな遠くでもスイスイ行けちゃうようになるぞっ! すごく便利になる! いいぞ! これはいい!!」


 興奮してまくしたてるアイは、俺に同意を求める。

 が、そんなのは元いた世界では当たり前なので、驚くに値しない。

 キルケやケアニス含めて、みんな驚いているみたいだけど。


「アイ様が『神』になられた世界では、そのようなことが……」


「やっぱり、すごいっすね……」


 ウルシャとクオンのつぶやきに、ケアニスはにこりと笑う。

 それは好意的な笑み、と受け取っていいだろう。


「なぁ、イセ!」


「ああ、アイが車社会をここに作ることを望むなら、俺はいくらでも協力するよ」


「クルマシャカイがなんだかわからんが、協力するのはこちらも同じだ」


「はい?」


「『魔法』を復活させれば、おぬしを元の世界に返すことも可能だ!」


「……はい?」


「召喚術を『魔法』で再現するんだ。こちらに来ることができるなら、あちらに行くことだって……いや、色々難題は多そうだが、いずれ可能になる! どうだ!」


「…………」


 元の世界に帰る?

 考えたこともなかった。

 この世界は不便だし、命狙われて物騒だし、帰るっていうのはそれはそれでいいかもしれない。

 でも、こんな変な力も持ってるし、これで元の世界に帰ることが出来るって言われても……

 マジで考えてなかった。


 そういえば、シガさんは元の世界に今いるんだっけ。

 こっちにタブレットやガラケーを送るくらいのことはしているんだっけ。


 元の世界とこの世界は繋がっている。

 それをアイは、こっちから向こうへつなげることができると言っている。


「どうだ? いいだろ? だから協力してくれ」


「……ああ」


 いい、と言われて、なんとなく……

 なんとなくだが、全面的に良いとは思えなかった。


「あっ! そうだタツコ! あいつも元の世界に返すことができるぞ」


 え? タツコってこの世界の『竜』じゃないの?

 だって初代教皇ツァルクがどうのこうのと現教皇のトカクさんと話してなかったっけ?

 ……あれ?


 同じことを、一緒に聞いていたカウフタンも思ったのか、俺と顔を見合わせる。

 どういうこと? 知らん、と無言のやりとりをする。


 そんな俺たちの疑問をよそに、アイは続ける。


「だからキルケ!」


 キルケがいきなり声をかけられて、ぴくりと反応した。


「協力してくれ」


「は?」


「天界の力が必要だ。『魔法』はお前たちの『神』が作り出したものだろ? なら天界に手がかりがあるはずだ。だから協力してくれ」


「私が? 協力?」


 ふざけるな、と言い出しそうなくらい怒りを溜め込んでいるキルケ。


 そんなキルケに無邪気に助力を求めるアイ。


 どうにかしてくれとケアニスを見ると、彼は楽しそうな笑顔だった。

 止める気はまったくないらしい。

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