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177話 失われた『|真力《フォース》』

 かつて、この世界には『魔法』が存在した。


 今現在のこの世界で唯一の魔法使いである『神器』アイ。

 昔は、彼女以外にも多くの魔法使いがいた。


 そのための土台となる『魔法』。

 それは『神』によって構築され、人間たちの中で広まった。


 魔法はこの世界の外の力を使う技。

 その外から来る力を総称を『魔力』と呼ぶ。


 その力は、元々ある内なる力よりもさらに雑多で混沌としているもの。

 故にこの世界における『魔』の意味を持つ言葉が当てはまった。


 その『魔』力を使うためのものが『魔法』。


 亜人たちに比べて力の弱かった人間たちの中で、適正のある者たちは魔法使いになった。

 人間たちの間で多くの魔法使いが現れ、魔力を使い、さまざまな力や技を使った。


 魔法使いは、まるで神のごとき力を使う者たちだった。

 人間たちは、この世界で繁栄した。


 だが、それをよしとしない者たちがいた。

 『神』の御使いである天使たちだ。


 彼らは『神』がこの世界を去った後、『魔法』を破壊した。

 装置としての『魔法』は失われ、人間たちは魔法が使えなくなった。


 その『魔法』の破壊を主導した天使のひとりが、天使長キルケだ。


 彼らにとって人間たちの使う魔法は、世界を破壊するものに見えていた。

 内側を乱す、外側の力。

 外来のものが、在来のものを乱すことを許せない、とでも言うかのように。


 天使たちは、世界にある力は天界が管理する『真力(フォース)』に集約されるべき、と考えている。

 その考えに、キルケたち主流派は忠実だった。


 だが、それを否定した者がいた。

 彼らの中でも天才と誉れ高い若き天使、ケアニス。


 彼は真力の扱いに関しては、圧倒的な天才だった。


 天界の真力を利用し、あらゆる術を使いこなし、さらに新しい術を作り出した。

 それに飽きたらず、自ら天界の真力と同じ装置を構築までした。


 故にケアニスは、天界の承認を得ずとも、真力を使える。

 キルケに堕天使と呼ばれたのは、彼もまたキルケから見て危険だったからだ。


 だが、ケアニスから見て、今の主流派は(いびつ)に映った。

 天界が支持する者たち以外は皆排除する。

 それが果たして『神』が示したものなのか。


 『神器』として、人間たちの中からふたり、現役魔法使いのアイと、元魔法使いのシガースが選ばれた。

 亜人たちの王、鬼王ソロンが選ばれた。

 『竜』が、選ばれた。

 そして、天使長キルケと共に、ケアニス自身も選ばれている。


 これが何を意味するのか。

 ケアニスは選ばれる前から考えていた。


 『神』が頂点に立つ天界が主導していた今までの世界とは違う形こそ、この世界が求めているのではないか。

 その考えが確信に変わったのは、アイの召喚した俺という存在。

 レンタカー・ハイエースの力を持って転生した俺。

 ハイエースのネットスラングを実現する、生まれながらにしてギャグ的存在である俺のチート能力。


 ケアニスは俺を知って、天界から完全に離れることを決意した、らしい。


 本当かどうか怪しいが、ただおにゃのこになりたいから、だけではないらしい。


 そしてそのために、天界にある『真力(フォース)』の装置を破壊した。


 『竜』との戦いの後、キルケたちに捕まったのはそのためだったらしい。

 天使たちの主だった戦力がいなくなり、警備が手薄になった頃合いを見計らって、真力の装置を破壊する。


 時間をかけて隙を伺う予定だったらしいが、俺たち教皇庁で暴れたために予定を大幅に早めての実行となったとのこと。


「ってこと、ケアニスは後から合流するって」


「マジか」


「本当だぞ。装置を破壊したのを見せてもらった」


「すげぇな、ケアニス」


 ぶっとび過ぎだろ。

 そりゃ堕天使呼ばわりされる。


 いくらなんでも、天使たちの武器を全面的に破壊するとか。

 それはそれで、とてもまずいことになりそうな気しかしないぞ。


「では、しばらく時間を稼いでいれば、キルケ様は真力が使えなくなっていたんすね」


「だな。ラクショーだった」


「とんでもないな、ケアニス」


「まったく」


 アイの返事に、皆が同意する。

 後部座席で気絶しているキルケを、ウルシャとカウフタンは少し道場気味に見ている気がした。


 それからすぐにタツコからも、アイの魔法を使って連絡が来た。

 ハイエースを隠したあたりで待っててくれとのこと。


 戦っていた4人の天使は『片付けた』と簡単に書かれていた。

 真力のない天使は、楽勝だったらしい。


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