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174話 使いこなす『力』

 『至高なる(エース・オブ)鋼鉄の移動要塞(・ハイエース)』から湧き出す魔力。

 あふれる魔力は光状になって、一点に注がれる。


 注がれる先は、天使長キルケ。

 真力で武装し、人外の力で人間たちをねじ伏せる戦いの天使。


 その光が注がれた相手は、性転換する。

 いや、人間の女の子に形を変える。


 この世界には無い現象であり、異質な力。

 だからキルケは、この力を憂えた。


 世界を破壊する力になりうるかもしれないと。


 だが俺は、この力を持ってこの世界に転生した。

 俺にとっては、有る現象なのだ。


 だから抗う。

 この世界で生き残るために、『神』に仕える天使に抗う。


 抗うために行使した力が、このおにゃの子化光線だ。

 屈強な衛兵隊長と、『竜』に効果を発揮した力。

 一度は真力の盾の前に防がれた光。


 その盾は、クオンが武装解除させた。

 俺はその隙を突いて、再び攻撃を開始した。


 おにゃの子化光線。

 そして、再び繰り出す3匹の鬼たち。


 おにゃの子化に成功したら、こいつらが鮮やかに拐かす。

 凶悪で最低で公序良俗に反する、これが俺の力だ。


 ……泣きそう。


「なめるなっ!!」


 悲しい気持ちになった心の逡巡からハッと気づいた時には、キルケの剣が振り下ろされるところだった。

 剣は向かってきたおにゃの子化光線にあたり、それを切り裂いた。


「なっ!?」


 剣で光を切り裂くキルケが格好いい。


 よく見ると、剣があの飛ばされた盾と同じく鈍色のものになっている。

 真力の武装を一瞬で変えて対応してみせたのだ。


 天使たちは、俺の力に対応できるのだ。

 俺はせっかくアイたちが作ってくれた隙を活かせなかった。


 光線を使う魔力と、鬼たちが3匹、また無駄になり徒労に終わる。

 絶望が心の中を満たしそうになる。


 いや、俺の力が通じなかったとしても、せめてアイたちだけでも逃さないと。

 俺はこの後、ハイエースに飛び乗ってキルケに体当たりを敢行する覚悟を決めた。


 アイを助けるのが、俺が転生した理由だ。

 最後の最後までそれを貫く。


 そう考えて運転席の扉に手をかけた時だった。


「ふんっ!!」


 キルケの気合と共に、上から下へ振り下ろされた剣が、迫ってくる鬼たちへと向かう。

 これでまた鬼が3匹切り裂かれる。

 そう思った。


「はっ!? しまった!?」


 鈍色の剣は、鬼の腕に防がれ、さらには折れて粉々になった。


「え?」


 剣を折った鬼の横をすり抜け、キルケの背後に回る1匹。

 そいつが身動きがとれないように背後から腕をとる。

 最後に近づいた1匹が、キルケの口元に何か布状のものを押し当てる。


「むぐっ!?」


 抵抗しようとした矢先に、カクンと気絶するキルケ。

 剣を腕一本で砕いた鬼が両足を持ち上げる。

 無抵抗なキルケを、2匹が軽々と運び、1匹が後部座席の扉を開けると、そこに飛び乗った。


「……え?」


 唖然とする俺に対して、扉を開けた1匹が親指を立てる。

 拉致完了の合図だ。

 呆然としていた俺も覚醒する。


 慌てて運転席へ座り、窓をあけて大声をあげる。


「みんな乗れ!!」


 みんなも呆然としていたが、俺の呼びかけに反応した。

 ウルシャはアイを抱えて、ハイエースへと走る。

 カウフタンは真っ先に飛び乗って、消えた鬼たちから放置されたキルケを警戒。


「乗るっす!!」


「っ!?」


 呆然としていたトカクの腕を、クオンが引っ張ってハイエースへと乗せる。


「人質確保っす!」


 クオンがそう言った後、アイを抱えてウルシャが飛び乗ってくる。

 扉が閉まると当時に、俺はアクセルを踏んだ。

 反動で体が飛ばされそうになる皆が、慌ててシートベルトをしめた。


「ずらかるぞ!」


 と言った後、気づく。


「あ、タツコ!?」


 天使たち4人相手に、大聖堂前から離れて奮闘しているはず。


「そっちは私が連絡入れておく」


 手早く連絡用の魔法を唱えるアイを見て、ひとまず一息ついた。


「しかし、まさか鬼が勝つとは」


「意外すぎて、逃げるのが遅れた」


 助手席に座るウルシャも、同じ感想だった。


「あの真力の剣は、イセの力に対抗できるだけで、殺傷力は低かったのだろう」


「なるほど」


 アイが冷静に分析したことを口にしたので感心した。


 そして拐かすことに関して優秀な鬼たちは、キルケの隙を突いて気絶させてハイエースへと連れ込んだ。

 隙さえあれば、人外すらいとも簡単に拉致してみせる鬼たち。

 思った以上に優秀なやつらだった。


「なあイセ」


「ん?」


「アイたち、こういう犯罪っぽい行為に手慣れてきてないか?」


 それ、ちょっとヤバいんじゃないかと思った。


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