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165話 脱出経路

『どうやって合流するつもりだ?』


「連絡手段があればいいが、ないしな」


 アイからの連絡なら、あの魔法で行けるんだろうけど。

 あ、そういえば、クオンも返事をしてたような……


「大聖堂の方に行ってみるか?」


 と思ったが、カウフタンと教皇を見て断念する。


『それがいいだろう』


 タツコがまた俺の心を読んだ。


「それで、どうするのでしょうか?」


 教皇が聞いてきた。


「またこっちに連絡がくるのを待つ……ってここで待てる、と思う?」


「どれくらい待つつもりですか?」


「半日くらい、かな。もしくは丸一日」


 すぐ連絡といっても一番早い連絡手段がこのガラケーだ。

 サミュエル卿が速攻で動いてくれたとしても、正直1日でも早すぎる。


「そんなに一箇所にいては、見つかってしまうと思います。教皇庁はそれほど大きな都市ではないですし、衛兵や騎士たちもいますので」


 そういえば、戦力は結構あるんだっけか。

 この規模の都市にしては過剰戦力的な。


「教皇様のツテって使える?」


「私は使えますが、そこに隠れてあなたたちが無事にすむとは思えません」


 正直に言ってくれてありがとう、という気持ちになるくらいには、教皇はこっちのことを考えているようだ。

 情報的には使えないが、その気持ちだけはありがたく受け取っておく。


『誘拐した相手に、何言ってんだ?』


「会話のなりゆき」


「ん? どうしました?」


「いや、なんでもない……あ」


 タツコの声はもちろん聞こえてないから、俺の会話だけなんだよな。

 自然と会話できてるから、勘違いしてしまう。


「しかし、待つのですか。このまま徒歩で都市の外に出るのかと思ってました」


「……それがいいか」


 教皇の提案は、この町で騒ぎを起こしている者としての常識的行動だ。

 下手に町中で捕まるよりは、外の方が暴れやすいかもしれない。


「よし、ちょっと脱出経路を見てこよう」


 そう言った後、俺は無言でタツコに伝える。

 教皇とカウフタンを見張っていてくれ、と。


『わかった』


 タツコと心の声だけでの連絡。

 会話できないの困ったと思ったが、意外と便利だ。


「教皇様、タツコとカウフタンを頼む」


「え? 私に? 私、捕まったのでは……」


 彼女の戸惑いを無視して、ローブをかぶり、混乱する街路へ出た。


 混乱している状況を利用し、身を隠しながら進み、一番近い城門を確認する。

 門は閉ざされ、エジン公爵領で見た衛兵たちよりずっと重武装な者たちが守っている。


 外に出さないという対策を取ったのだろう。

 この辺は、あの大司教が指示したのかもしれない。


 あのひとも、教皇と一緒に連れてくればよかったかな。

 指揮をとる人がいなければ、ここまで厳重になっていなかったかもしれない。


 こっそり脱出は諦めざるを得ない。

 つまりエジン公爵領の城下町でやった時のように、強引に脱出がいいのか。

 あの時と同じようなことをするには、内通者が必要だった。


 クオンがやったのとの同じことを? 誰が?


 いないよなと思った時に、ふと思いついたのは教皇の顔。

 こっちの思惑通りに動いてくれれば、クオンよりもあっさりとやってのけそうだ。

 一応最高権力者の教皇だし。


 そう……一応、なんだよな。

 一瞬、大司教を様付けで呼んでいたのが気になる。

 実は、大司教の方が偉いとか。


 あ、影武者?

 いやそこまではないだろう。

 もしそうなら……タツコとカウフタンが危ないな……


 ちょっと焦るので、来た時よりも若干急いで隠れている場所へ戻った。

 そして、焦って戻ってきて、さらに予想外の光景を目にした。


 教皇がふん縛られて、猿ぐつわされて、涙目になっている。

 それを表情を変えずに見ているタツコ。


「何してんの!?」


 タツコが気づき、話そうと俺に触れようとした時、その姿に気づいた。

 見た瞬間、縛ったのはこいつだとわかる。

 そういうことするの、こいつしかいない。

 そんなやつが現れた。


「こんなところに隠れてたんすね、探したっすよ」


「クオン!?」


 この状況で一番頼りになる奴が来てくれた!!


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