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148話 二方面作戦決行

 余裕があったように見えたのは、タツコがいたからだった。

 あの『竜』が味方にいる。

 かなり心強かった。


 だが、違った。


「俺らのチーム、カウフタンしか戦力ないよっ」


 タツコ以外は押し黙る。


 そのタツコは、携行食を興味津々に見つめながら食べている。

 小麦粉とはちみつを混ぜたものらしく、ぱさついているけど飲み物さえあれば気にならず、なかなか美味しい。

 クオンが用意していた動きが取れない時用のものみたい。

 ほんと忍者だな。


「これ美味い。人間はいいもの食ってるな」


 みんなでドライブを楽しむ的なほのぼの雰囲気はなくなったが、タツコだけは余裕だった。


「マジでどうすんだ?」


「まあ、そっちはそっちで頑張ってくれ。タツコが『竜』だって言えば、向こうも怯んでくれる」


「俺が人間にしたこと、どこまで伝わっているかな」


「教皇くらいには伝わっているんじゃないっすかね」


 俺の疑問にアイとクオンが応えてくれるが、カウフタンがひと言。


「ハッタリが通用しなかったら、捕まる者が増えますな」


 またタツコ以外が押し黙った。


 そんな何かいい手はないかという話し合いがなされる中、クオンが予定していたハイエース隠蔽場所にたどり着いてしまった。

 教皇庁にほど近い村の雑木林。

 その中の、あまり人の手が入っていないところにハイエースを隠した。


 最低限の荷物だけを持ち出し、さらには鬼を一匹召喚。

 用意していた大きなローブを着せて、靴を履かせて、人のように見せる偽装をクオンが行う。


 しかし、いくら偽装しても体の大きさはとっても目立った。


「こんな大柄な人、いる?」


 2メートルは越えているその姿は、まさに亜人だ。

 怪しさこの上ない。


「教皇庁は人が多いから、おっきい人くらい沢山いるから大丈夫」


 とアイは言うが、タツコ以外の皆の反応は「マジか?」って感じだった。


「人間から見ると鬼は強そうだな」


 タツコが鬼に感心してみせて、ローブの上から体をペタペタ触っている。

 無邪気可愛い。


「いざとなったら、こいつに大立ち回りさせれば大丈夫だろ」


 もともと誰よりも強かったから、脳筋発想が抜けていないっぽい。

 困ったら暴力。

 すごい生命体なんだろうけど、基本的に獣だ。


「はぁ……このメンバーを連れて教皇に会いに行くというのは自殺行為では?」


 カウフタンが最もらしいことをアイに告げる。

 彼女の視線は、タツコ、鬼、そして俺に向けられていた。

 俺も入っているのが悔しい。


「アイ様、二方面作戦は中止し、タツコ殿とイセにはここで待機というのはどうでしょうか」


「それいい!」


「よくないぞ。教皇に会う理由があると言っただろう」


 ウルシャの提案に俺はすぐさま賛成したのに、問題のタツコに反対された。

 それを聞いたアイは、うんとうなずく。


「わかっている。タツコは教皇に会いにいけ」


 戦力的にヤバいタツコチームのことがわかっていて、カウフタンとウルシャの意見を通さないアイ。

 意図があるのか? と思ってこっそり聞いてみる。


「タツコに何かある?」


「こうなったら教皇に会う用事に、賭けるしかない」


「なんで会おうとしているのか知ってる?」


「ああ。でもタツコに言うな言われているからな。イセでも言えない」


 それを聞いて思い出した。

 俺が『竜』に力を使った理由は、アイが精神操作の魔法をかけた後、『竜』を助けてくれと俺に言ったからだ。


「それって、タツコを助けろ言ったことに関係ある?」


「っ!? さ、さぁ、どうかなぁ~」


 ぎくっとした後、あからさまに視線をそらす。

 わかりやすい。


 だが、そういうことなら方針は決まった。

 俺のやることは、アイが『神器』として神に至るための手助けをすることだ。

 そのために必要とアイが感じているなら、それに従うまで。


「じゃあ、俺とカウフタンとで、タツコが教皇と話せるようにすればいいんだな。その辺は頑張ってみるよ」


 俺がそう言うと、カウフタンもため息をついて頷いた。

 お前らがそう決めたのなら仕方ないという感じのため息だったが。


「鬼を使って大立ち回りでも何でもやる。だが、俺はアイの召喚戦士だから、アイを優先する。タツコ、それでいいよな? アイたちが危険だったらそっちを優先するからな」


「かまわん。好きにしろ」


 タツコはその辺には興味がなさそうで返事は軽かった。


 ひとまず二方面作戦はそのまま決行とだけは決まった。

 あとはなるようになるしかない。


 各々がそんな気分になる頃合いに、教皇庁へ向かう準備は出来た。

 アイが出発を宣言し、俺に話しかけてくる。


「イセ、頼りにしてるぞ」


 うなずく。

 うなずくが、頼りにされてもなって気分ではある。


 今この状況を何とかできるような知恵も力もない。


 ほんとにこんなんで、アイは神になれるのか?

 教皇庁へこっそり潜入して捕まっている仲間を助けに行こうとしているアイが、神に近づいているとは到底思えないのだが。


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