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147話 全ハッタリ

 真っ昼間の道無き道を、ハイエースでびゅんびゅん飛ばす。

 軽快に走っていたら、アイとウルシャが起き出した。


 そして、食事は車内で、携行食をパクついて済ませた。

 車内は若干和気あいあいだ。


 これから教皇庁殴り込みだってのに、みんな余裕こいている。

 何故だ。


「うん、それでいいよ」


 アイが起きる前に話した二方面作戦は簡単に受け入れられた。

 だが俺は、具体的にどうやってケアニスを助けるのか聞いてないのでわからない。


「ケアニス、そもそもどうやって見つけるんだ?」


「どこにいるかだいたい分かっているからな」


「また、あのオフィリアの時みたいに探知魔法?」


「いや、あの精度で探知はできん。でも天使たちがいるところはわかっている。大聖堂だ」


 とアイが話したら、ウルシャとクオンとカウフタンが驚いた。


「あんな目立つところに?」


「目立ってはいるが、儀式でもない限り人が寄り付かないからな。何かを隠しておくなら絶好だし、儀式中に天使による神の奇跡を起こせるから便利なんだろう」


 それを聞いて、三人は納得した様子。


「だから、アイたちは人の少ない頃合いの大聖堂へこっそり忍び込めばいい。認識を変える魔法も使うし、天使たちが出てきたら当たりだしな」


 アイの判断に皆がうんとうなずく。

 納得の頼もしさだ。


「ってことで、タツコは教皇の方で皆の注目を集めておいてくれ」


「ああ、わかった。で、教皇はどこにいるんだ?」


 タツコの返事に、俺以外の皆が「え?」って顔をした。


「大聖堂にいるとばかり思ってたんだ」


「だからあそこは儀礼用だ。普段は事務局だろ」


 アイとウルシャは非公式だけど事務局で会ったことがあるらしい。


「なるほど、そりゃそうか。普段から大聖堂でパイプオルガン響かせながら、玉座みたいなところでふんぞり返っているわけがないか」


 そんなことを俺が言うと、皆が何を言っているのかわからないが、大して興味も持たなかったらしく、スルーされた。

 ゲームとかアニメのPVとかだと普通なんだけどな。


 普段は社長室とか校長室みたいなところでハンコ押しながら報告聞いたり、命令出したりしているんだろう。


「なら、町中で聞けば教皇がいるところなんてわかるな」


「巡礼で人が沢山来ている観光地みたいなものだろうから、ガイドの人とかもいるだろう」


「ほう。そういうものか。ならイセに案内頼むか」


「そういうのはカウフタンじゃないか。俺、教皇庁よく知らないし」


 タツコと俺が話しながらカウフタンにも話を振る。

 カウフタンが、唖然として言った。


「アイ様、この者たちに本当に任せるのですか?」


「う、うむ。まあ仕方ないし。イセもタツコも尋常じゃない力の持ち主だ。戦力的にはむしろオトリに力を注ぎ過ぎてる感があるくらいだ」


「そうっすね。おふたりなら教皇庁の騎士たちに遅れはとらないっす」


 アイとクオンが語る内容は、半分否定しておかねばならない。


「タツコはともかく、俺には期待しないでくれ。ハイエースは隠蔽していくしなぁ」


「ま、タツコだけで過剰戦力だからな」


 その辺はわかる。

 皆も頼もしそうにうなずく。


「ってことだからタツコ。教皇とその周辺にいる連中を十分に威圧しておいてくれ」


「…………」


 タツコが真顔で無反応だった。


「どうした?」


「いや、ひょっとして我は、我だけで元の姿に戻れるのか? イセが我に施した力はそういうものなのか?」


 そう言われて、アイがこちらを見る。

 俺はカウフタンを見た。

 カウフタンは、首を横に振って応えてくれた。


「元に戻れるわけないだろう」


「だって」


「なら我も戻れないぞ」


 ん? 何を言っているんだ?

 今の話と、元に戻れるられない話って関係ある?


「あ。ひょっとしてタツコ、『竜』の力は使えないのか?」


「君らと同じ人間だからな。このサイズの力しかないぞ」


 力こぶを作ってみせるが、袖に隠れてみえない。

 とても女の子らしい細腕だ。

 そして両手を揃えて爪を見せる。


「この通り、ちっちゃい爪だ」


「あの戦ってた時に吐いてたやつは? ブレス」


「できんぞ。もし出来たとしても、この体であんなことやったら喉が壊れる」


「魔法とかも使えたりしない?」


「我は『竜』だぞ。魔法使いじゃない。君の召喚元では『竜』が魔法を使うのか」


 タツコの質問を無視して、俺はただ焦る。


「マジか」


「君が人間の女の子にしたんだろ。何故『竜』のように戦えると思っているんだ? そっちの方が不思議だ」


 タツコは、そりゃそうだって正論じみたことを言う。


「カウフタンは、結構戦えたよな? ほら切り込み隊長と戦ってたじゃん」


「セディと一騎打ちしたことか。もし、元の力を使えていたら、もう少し楽に勝てていただろう」


 それを口にするカウフタンも、気づいたようだ。

 ウルシャもクオンも、すでに気づいて、内心の焦りが顔に出ている。


 何故かみな、当然タツコには『竜』の力が残っていると思い込んでいた。

 どうやら見た目どおりの、ただの女の子らしい。


「てかカウフタンより弱いんじゃ? 剣使える?」


「使えんぞ。そもそも人間の道具の使い方がよくわからん。見様見真似だ」


 当然だろと言わんばかりにドヤ顔でタツコは言うが。


 タツコという荷物が増えて、ケアニスが捕まって、俺のハイエースは置いてかなきゃならない?


 それで、天使たちと敵対し、亜人たちと敵対し、シガさんらとの合流を拒絶したと?


「ハッタリだらけじゃん!! どーすんの?」


 誰も応えてくれなかった。


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