145話 鬼畜の所業
のどかな平原と森林を交互に抜けるように進む昼間。
楽々運転でタツコさんたちと話していたら、ふと気づいたことがあった。
「さっき我たちってタツコ言ってたけど、タツコと誰?」
「君とこいつだ」
と言って指さしたのは、俺とカウフタンだった。
「俺とカウフタンか」
つまり、ケアニスの方は、アイとウルシャとクオンか。
「この子はカウフタンというのだな」
「ええ。元はカウフマンと言いまして、エジン公爵の衛兵隊長でした。それを俺が女の子に変えました」
さっき、タツコの肩を持っていたカウフタン。
俺もそう認識してますよというアピールも込めて自分で言っておいた。
そんなカウフタンの寝顔は可愛い。
さっきまでタツコの膝枕をしつつ、こっくりこっくりとしている様子は無防備かわいい。
「君は鬼畜だな。そら怒る。何を考えているかわからない言われた『竜』ですらそこまでしないぞ」
そこまでっていうのがどこまでなのか分からないが、かなり蔑まれた。
ショッキング過ぎる。
「タツコ殿、あの時は、カウフマン殿をこうするしかなかったっす。天使の力も借りていたんす。もう無我夢中っす」
クオンが助け舟を出してくれた!
「それにもしあのままだったら、カウフマン殿は天使様たちに取り込まれていたっすから。むしろ愛する家族の元に戻れて幸せっすよ」
それを聞いたタツコは、俺の方を見ているのがバックミラーからわかる。
俺はうんうんと頷いた。
「そうか。それは良かったんだな」
「よくありません!! そこまでお前らにとって都合よく考えられるかっ!!」
あ、カウフタンが起きた。
っていうか寝たふりして聞いてたな。
カウフタンは、涙目で抗議する姿勢だ。
突然起きたカウフタンに驚きもせず、彼女をまじまじと見つめるタツコ。
「ふむ、可愛いな。いいと思うぞ?」
「なんですって!?」
鬼畜の所業と言ったおにゃのこ化を、カウフタンの可愛さに気づいたらあっさり手のひら返した。
味方がいると思っていたカウフタンの驚愕は計り知れない。
「受け入れろ、カウフタン。我もそうしている」
すげーなタツコ。
簡単に受け入れたぞ。
やっぱ人外は、考え方が違うのか?
ケアニスもそうだったし。
あ、でもキルケは全然受け入れてなかったか。
「女の子にされたことを受け入れたのですか、タツコ殿……」
ぐぬぬという感じで聞くカウフタン。
「そこは勘違いしているな。そもそも我は性別で言うなら女の子の方だ」
「「「なっ!?」」」
驚愕の告白に、俺とクオンとカウフタンは驚く。
「そ、そうなんすか?」
「『竜』に性別もないけどな。強いて言うなら女だ」
見た目じゃ全然わからん。
が、たしかに、女の子がドラゴンに変身するっていうのは、むしろある方だ。
俺たちが驚く中、それを意に介さずにタツコは言う。
「で、カウフタンも起きたことだし、我とイセとカウフタンとで陽動作戦について話し合うか」
タツコは、すっごい落ち着いているマイペースだった。




