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140話 ハイエースで殴り込み?

「サミュエルのところからくる連絡は、ここか?」


「いえ、先程確認してきた集落で落ち合う予定だったっす」


「なら出来る限り離れた方がいいな。早朝、日が出たあたりに早速移動しよう」


 アイはサクサクと、反師匠の行動を決めていく。

 ほんとにあっさりとしてる。


「移動っていうけど、どこに行くんだ?」


「決まってるだろ」


 何が? と思って俺はアイが言い出す続きを待つ。


「ケアニスを助けに行くぞ」


「また帝都に戻るの?」


「そっちはない。ソロンたちとばったりも避けたいし、サミュエルの間者もいるだろう」


「だったらどこに?」


「決まっているだろう」


 また言われた。

 いったいどこ? みんな知ってる?

 と思って、ウルシャ、カウフタン、クオンと見回すと、皆一様に驚いている様子。

 どこかわかってる?


「どこ?」


「教皇庁だ」


「はい?」


「イセは知らんか。天使たちがいそうな場所といったら、真っ先に思い浮かぶのは教皇庁だろう」


「マジか? 本気なのか? 敵地も敵地じゃないか」


「もちろんだ。キルケたちに捕まったんなら、そのキルケたちがいるところにいるだろ」


 何を当たり前のことを言ってるんだいう目で見られる。

 え? 俺が間違ってる? それは無謀じゃないの?

 と思って周りを見ると、唖然としているから俺と同じ考えとしか思えない。


「ケアニスがいなくなったとはいえ、今アイたちにはおぬしがいるし、タツコもいる」


「タツコを戦力に入れるのか?」


「いや。ただ向こうはこっちが手に入れたと思い込んでいる可能性がある。それは今しかない」


「なるほど」


「そしてイセの力を過大評価しているだろう。脅しにはもってこいだ」


 おいおい、すごいこと言ってないか?

 それってつまり別に俺たちの使える戦力なんてほとんどないってことじゃないか。

 全部はったりじゃん。


「それらを使って、隙を突いてケアニスを助ける。アイたちにはケアニスの力が必要だ」


「うん、わかる」


「だろ? だから行くしかない」


「……ハイエースで教皇庁へ殴り込みか」


 エジン公爵領の城下町へ行ったくらいなら、何とかなるか?

 いや天使いるだろ。

 大丈夫か、これ。


「師匠たちを頼れないってことは、こういうことだ」


 俺たちが皆で信用ないと言った相手のことを、アイが持ち出す。

 それを聞いて、俺たちはアイの考えに納得した。


 シガさんたちを頼らないということは、自分たちで何とかしなければならないということだ。

 皆でうなずいて、アイの考えに乗ることにした。


 ということで、早朝まであまり時間もないので、ひとまず仮眠を取る。

 見張りはクオンとウルシャとカウフタンが買って出てくれた。

 俺とアイだけは、昨日の『竜』との戦いで疲れているだろうということでぐっすりと休ませてくれるというわけだ。


 でも俺はよく眠れない。

 気疲れからか、これから殴り込みがあって緊張しているからか、眠れない。

 少しでも休もうと横になったまま、ぼーっとしていた。


 だから気づいた。

 ウルシャとカウフタンが見張りを交代してしばらく経ったくらいの時だ。


 カウフタンのそばで寝ていた、タツコが起きた。

 むくりと起き上がり、自分の体を見て、腕を上げたり下げたり、片足を上げたり下げたり、屈伸したり。

 それから自分の体をペタペタと触っている。

 頭を触り、髪に触れ、角を握って、自分の頬を撫でる。


 その様子を、びっくり眼で見続けているカウフタン……と俺。

 俺は見ながら、息をひそめて寝ているふりをし続けた。


 自分の体を確かめるような行動をした後、タツコは自分を見ている存在であるカウフタンへゆっくりと歩み寄る。

 そして声を出した。


「君か? 我をこの体にしたのは?」


 やけに通る綺麗な声で、タツコはカウフタンにそうはっきりと聞いた。

 するとカウフタンは、あからさまに視線をこっちへ向けた。


 そ、そんなことしたら、俺に気づいてしまうじゃないか!?


 そう思った時には、タツコの端正で綺麗な顔がこっちを向いた。

 作り物めいた顔を向けられ、俺は思わずビクッとなってしまった。


 起きてるの、バレる!?


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