138話 シガースからの連絡
俺は通話ボタンを押して出た。
「もしもし? シガさん?」
「ふぅ、ようやくつながったか?」
シガさんとわかる声がした。
で、その間に、アイたちが話し始めた。
「なぁ、もしもしってなんだ?」
「あ、僕も気になったっす」
「暗号か?」
と思い思いに話している。
あとで、もしもしについて説明しておかないと。
「どうした? こっちの声、聞こえてないか?」
「いえ、聞こえてます」
「よかった。それでそっちはどうだ? 色々あったようだな。こちらも断片的だが報告が来ている」
報告? ってことはあれか、このガラケーを持ってきた間者たちのことか。
「『竜』を捕まえたそうだな」
「上手く行きました。今は寝てます」
「お前たちの話を聞いた時には半信半疑だったが、力は本物で安心した」
「半信半疑の力を、ぶっつけ本番で『竜』にぶつけようとしたんすか?」
「私からすればだ。お前の力が本物なのは、天使たちの動きを見ていればわかる。彼らは本気だ」
「なるほど、そういうことですか」
「でだ、報告だけではお前たちがどういう状況なのかわからん。こっちの人員と合流してくれ」
「ちょっと待ってください、みんなに話します」
俺はシガさんが言ったことを、受話器にも聞こえるように皆に伝える。
「わかりました。ではどうしましょうか。こっちはだいたいの位置はわかるんだけど、どこにいるかわからないです」
「わかりそうなやつに代わってくれ。アイ以外な」
誰に代わろうかと考えて、クオンにした。
そしてクオンには、受話器には聞こえないように伝える。
「こっちの情報は極力漏らさないでくれ」
「りょうかいっす」
わかってますよ、という感じでクオンが頷いて電話を変わった。
俺はその間に、疑問を呈していたアイとカウフタンに、もしもしについて話した。
なるほどと、アイは納得したようだ。
カウフタンはまだ首をかしげていた。
そういえばカウフタンは、シガさんが俺のいた世界にいることを知らないんだっけ。
あとで教えておこう。
それからクオンとの会話が終わったのか、俺にガラケーが戻ってきた。
「シガさん、こっちから連絡とれない?」
「できるといいんだがな。そこまでの出力がそいつにはない」
そういえば携帯が出回ったばかりの頃は、電波の通じにくい地域が沢山あったって聞いた。
今でも山奥に入ると、電波の通じにくいところがある。
こっちに基地局がないから仕方ないのか。
ってことは、こうして通じてるだけでも、シガさんって凄い魔法使いだったんだなとわかる。
「こっちからの連絡を待っててくれ」
「わかりました。よろしくおねがいします」
ということで、シガさんとの連絡を打ち切った。
「あ、アイも話したかったのに」
「いや、止めておいて正解だった」
「なぜ?」
「こっちの情報が沢山漏れる」
「んん?」
アイが疑問に思っている中、俺は皆に言う。
「なあみんな、シガさんをこのまま頼りにしちゃっていいと思うか? 怪しくない?」
「え? 師匠が怪しい?」
疑問に思うアイだが、ウルシャもクオンもカウフタンも、なんとなくこっちの言いたいことがわかる様子だ。
「天使と亜人と繋がりがあって、俺たちをこんな事態に巻き込んだ張本人がシガさんだ。このまま彼の言う通りにしてたらやばい、と思う」
そう言うと、うんうんと3人がうなずき、それを見たアイが苦笑する。
「師匠、信用ないなー。昔から人望なかったなぁ」
こんなおおらかな人だから、シガさんの弟子になれたんじゃないかと思った。




