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137話 ケアニスの安否

「ケアニス様が捕まったっすか!?」


 みんなで隠したハイエースの近くで野営をしている中で、偵察に出ていたクオンが戻ってきたのでケアニスについて伝えたら、えらい驚かれた。

 驚くのも無理はない。

 今、俺たちが動けるのは、間違いなくケアニスがいたからだ。

 天使たちに狙われてからは、ケアニスを仲間に引き込んだから助かっていた。


「捕まったかどうかはわからん。だが魔法で向かわせた小鳥が近づく前に殺されたとなると、ケアニスの近くに天使たちがいると考えていいだろう」


 それを聞いたクオンは、少し考えてから口にする。


「そうっすね。天使様たちに捕まった、いえ、最悪の事態を想定しておいた方がいいかもしれないっす」


 最悪の事態という言葉に、皆が息を呑んだ。

 それってつまり、死んだってことか。


「待てクオン。死んだと想定しては我々には打つ手があるのか?」


「む。確かに無いに等しいっすね」


「そこまで言うか」


「アイ様、これは情けないことっすけど、僕たちだけでは鬼王様たち亜人にすら対抗する手段がないんす。できるとしたら……」


 言いながら、クオンは俺の方を見た。


「イセ殿の鬼たちと、戦車だけっす」


「タツコもいるぞ」


「たつこ?」


 アイと俺は、元『竜』の女の子の名前をタツコと名付けたと話した。

 カウフタンが、タツコってこの子のことかと納得顔をした。

 そういえば話してなかったかな。


「タツコさんを戦力として考えるのは危険かと」


「だな。私のように非力になっているかもしれない」


「カウフタン殿が非力とは思いませんが、確かに昔ほどの力はなかったですね」


「イセ、どうなんだ? タツコの力は?」


「わかると思うか?」


 そう返答すると、アイは困った顔をした。


「把握もしてない力で女の子にしてしまうとは、危険極まりないな」


 今、それを言うの!? って言いたい気持ちをグッとこらえる。

 この話、脱線させるわけにはいかない。


「ハイエースで、ここから更に移動して離れておくか?」


 俺が提案すると、皆が首を横に振るように否定した。


「夜の行軍は危険だ」


「夜間行動でアイ様の身に何かあったら問題です」


「戦車の明かりは、ひと目につきやすいっす」


「疲れたからやめよう。ふかふかの椅子があるとはいえ、走っていると寝にくい」


 ひとり理由がアレだが、みなが夜の移動を避ける考えだった。

 深夜でも安全に走れる元いた世界の素晴らしさを噛みしめる。


「まあ、今は止めておこう。幸い隠せているわけだし」


 アイがそう言って、今夜はここで野営という話で落ち着いた。


「こういう時に師匠と連絡が取れればな」


「取れたとしても、また無茶振りされるんじゃないか?」


「それでも師匠が一番、やつらの動向を知っている」


「そうか。そうでないと天使と亜人と人間の連合軍で、『竜』をやっつけようって話にはならないか」


 アイは強く頷いた。


「師匠が動いた結果として、今一番有利な状況にあるのはアイたちだ」


「こんな事態になっているのに?」


 俺が聞くとアイが頷いた。


「まずタツコがいる」


 皆が元『竜』の少女を見る。

 寝顔がとても可愛い。


「そして、イセがいる」


「俺?」


「あの時、誰も何ともできなかった『竜』に対して、何とかしてしまったのがイセの力だ。だからみんな、おぬしを恐れている。おぬしの車を恐れている。今はな」


「まあ、それはわかる」


 俺も怖いよ。こんな車。

 何が飛び出してくるかわからないびっくり箱だ。


 操っている俺がそう思っているんだ。

 見てる方は、もっとわけわからないだろう。


「あ、でもさ、アイだって『竜』を止めたじゃん」


「止めたうちには入らない。アイができたのはあそこまでだ。精神操作まではできなかった。ものすごい強い意思で弾き返されそうになってたからな」


 そこで思い出した。

 そもそも、『竜』に対してこの力を使うきっかけになったのはアイが言ったからだ。


「そういやあの時、なんで『竜』を助けろって言ったんだ?」


「そうだ! そのことなんだが――」


 プルルルルッ!!

 と突然、持っていたガラケーが呼び出し音を立てた。

 皆が、びくっとガラケーに注目する。


 ディスプレイには、非通知となっている。

 でもこいつにかけてくるなんてひとりしかいない


「シガさんから連絡きたみたいだけど、出ていい?」


 タツコ以外のそこにいる全員うなずいた。


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