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136話 『竜』の子

 元『竜』だった女の子の名前。


「カウフタンの時みたいに名前つければ?」


「軽く言うな。カウフタンはカウフマンっていう名前があったから付けやすかった。それにおぬしに任せたらカウフウーマンになってただろ? 可哀想だったからつけたんだ」


 うん、すごくどうでもいい問題だとわかった。


「それにだ。『竜』って呼ぶのはいろいろ問題はある」


「たとえば?」


「ソロンやキルケたちは『竜』が女の子に変わった瞬間は見られているが、この姿を明確に見たわけじゃない」


 まあそうだろう。

 おにゃのこ化光線を出している時は、光で見えなかっただろうし、うちの鬼たちが速攻でハイエースに連れ込んでいるから、明確にこの子が『竜』だとは姿からではわからないはずだ。


「今なら、角の飾りをつけた可愛らしい女の子で通るし、帽子とかフードとか被ればもう普通の可愛い女の子にしかならん」


「なるほど。だから『竜』とは呼ばず、別の名前をつけておくべきということだな」


「そういうことだ」


「じゃあカウフタンの時みたいに、いい名前つけてくれ」


「元があったから思いつけたが、『竜』だからな。ただの種族名だろ? 余計にどうしていいやら」


「じゃあ、そうだな」


 『竜』が女の子になったから、竜の女の子ってことで竜子。

 そのまんま過ぎるな。

 あ、そうか、リュウと読ませなければいいか。


「んじゃタツコとかどう?」


「タツコ? なんだその変なのは? どこから出てきた」


「女の子につける名前なのか?」


 ウルシャも怪訝な表情できいてくる。


「俺の元いた世界では変じゃないし、意味合い的には『竜』の子ってなるからニュアンス的にはあってる。これでダメならそっちでそういうニュアンスの名前はないか?」


「なるほど、そういう意味なら悪くない」


「クオンの一族にも似たようなイントネーションの名前がありました」


「だな。じゃあタツコで決まり」


 決まった。

 アイの提起した『竜』の名前問題はあっさり解決してしまった。


「そのクオンからの連絡はないのか?」


「まだこないな」


 アイの連絡用の魔法を持っているから、何かあれば彼女が戻る前に連絡があるはずだ。


「ケアニスは?」


「そっちにはすでに魔法を送っている。距離的にも何事もなければ今夜中に連絡があるだろう」


 その辺は抜かりないようだ。


「あ、そうだ。シガさんに連絡してみようか」


 俺はアイからガラケーを受け取り、電波状況等を確認してみる。

 魔法の影響はもうないだろうから、きっと大丈夫だろう。


 連絡番号はわからんが、先程かかってきた先へ、リダイヤルすればいい。

 と思ったら、非通知でリダイヤル不可能だった。


「一方通行かよ。何してんだシガさん」


 いるいる、そういう電話の使い方する人いるー。

 現代日本の冷暖房完備な部屋でヌクヌクしてるんだから、せめてこっちからの連絡くらい受け取れようにしといてくれよぉ。


「師匠への連絡は無理か?」


「みたいだ。こいつ壊したくなる」


「やめとけ。師匠はそんなもんだ。昔から連絡を無視すること多かったし」


「アイ、苦労してるな」


「師匠はまだマシな方だったぞ」


 アイが少し苦々しそうな顔をするので、魔法使いという人種のヤバさが何となく察せられる。

 なるほど、アイってそういう世界に揉まれて生きてきたのね。


 そんな話をしていると、見えない夜闇の中から小鳥の羽ばたきが聞こえた。

 その小鳥は、アイの肩にとまり、葉を落とす。

 受け取った葉は、小さい手紙くらいの大きさになった。


「誰から? クオン? ケアニス?」


「クオンだ。近くに村を見つけたそうだ。夜のうちに訪ねるのは怪しまれるので、明日の朝に接触してみるという話だ」


 村を確認し、こっちに戻ってきているようだ。

 あとはケアニスからの連絡を待ちながら、ゆっくり休むか。


「イセは寝なくていいのか?」


「疲れてるけど、微妙に頭冴えてる」


「アイもだ」


「タツコもいるし、落ち着いて眠れないよな」


「だな」


 ウルシャも一緒に3人でハイエースの方を伺う。

 後部座席には、カウフタンが見張っているタツコがいる。

 あれがあの『竜』なわけだから、気が気でない。


「あれ、絶対にオフィリアは可愛がると思うぞ」


 それを聞いて、実際にそうされていたカウフタンのげんなり顔を思い出した。


「タツコ、前途多難だな」


「御本人も、アイたちもな」


 やっかいなことになっている。

 この状況を作り出した、ケアニスとシガさんはいない。

 連絡よこしてくれないかな。

 文句の1つ2つ言いたい気分だ。


「あ!?」


 突然、アイがビクッとさせて、ウルシャは剣の柄に手をかけた。

 ウルシャはアイが反応したということは、魔法に関する何かがあったのかと警戒している。


「どうしましたか?」


「ウルシャ、こっちじゃない」


「こっちじゃない?」


「ああ。ケアニスの方だ」


「何があった?」


「アイの魔法で飛ばした鳥が、死んだ」


 アイの連絡用の魔法は、小さな小鳥を操るものだ。

 その小鳥が、何者かによって死んだ。

 アイの魔法に気づいた者が、ケアニスの近くにいる?


「ケアニスが、キルケたちに負けたのかもしれない」


 ちょっとそれは、かなり不味いのでは?


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