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131話 次々と切られる切り札

 鬼王はものすごいスピードで駆けてくる。

 こちらも負けじとアクセルを入れてスピードをあげる。


 それでも、鬼王の方が速かった。

 だんだんと差を詰めてくる。


「なんだあれ! 亜人ってあんなに走れんの!?」


「ソロンは、鬼王は特別だ! イセ、もっと飛ばせ!!」


「ほとんど全力なんですけど!!」


 さらに振り絞るが、向こうの加速の方がずっといい。


「じゃ、私に任せてください」


 屋根にいるケアニスが頼もしいことを言う。


「たのんだ!!」


「はい……あ、無理。キルケさんたちも来てますね。あっちの方がやっかいですから。抑えてきます」


「えぇぇ、一緒には無理なのか?」


「流石に難しいです。アイさん、鬼王さんの方をお願いしますね」


「え? あ、おい!!」


 ケアニスは翼を広げて、一気に飛び立つ。

 飛び立つと同時に真力を展開し、キルケたちと空中戦を始めた。

 それを見て、確かにキルケが鬼王を抑えるのは無理だなとわかる。


 地上を走る鬼王より、空から迫る天使たちの方がずっとやっかいだ。


 だが、ケアニスは鬼王の背後から一投だけ、真力の槍をぶつけて足止めを図ってくれた。

 一応、効いてはいるものの、追撃が止まったのは一瞬だけ。

 鬼王はケアニスの攻撃をその後警戒もせずに、こっちへ全力疾走を再開した。


「ケアニス、強いな、やっぱし」


 アイのひと言に、車内にいる全員が同意する。

 そのケアニスの攻撃をものともしない鬼王の相手を、アイができるのか。


「アイじゃ無理だろ!?」


「なんだと!?」


「できるのか?」


「無理だ」


「ならなんで、なんだととか言ったんだーっ!?」


 混乱しているハイエース車内。

 その隙でも見えたのか、鬼王が仕掛けてきた。


 走りながら、手を振り上げ、振り下ろす。

 その動きに合わせて、腕が伸び、手のひらがあの巨人化した鬼王のように、大きくなった。


 体の一部だけ大きくとかできんのっ!?


 驚いて一瞬、スピードが落ちる。

 それを読んでいたかのように、手のひらがハイエースを掴みかかってくる。


 捕まる!? と思ったその時……クオンが開けた窓から身を乗り出して、黒い羽を光るクナイに変え、鬼王の巨大手を迎え撃った。


「カウフタン殿!!」」


「おう!!」


 逆側の窓から身を乗り出して、黒い羽を光る大きな長剣へと変えたカウフタン。

 クナイによって勢いを殺された鬼王の手を、思いっきり切りつけた。

 真力の剣は、鬼王の手を傷つける。


「痛っ!? なんだそりゃ!?」


 鬼王から驚きの声がきこえた。

 クオンとカウフタンの反撃は予想外だったようだ。


 箱乗り状態のクオンとカウフタンは、ほんの少し口元に笑みを浮かべる。


「クオン、よく使えたな」


「カウフタン殿は、経験者っすよね。ご教授願うっす」


 ふたりが手にするのは、ケアニスがくれた真力の黒い羽の力を顕現させた真力の武装。

 それぞれ使いやすい形になっているのか、クオンはクナイで、カウフタンは長剣だった。


 ケアニスの力を借りたふたりなら、鬼王を撃退できるか?


「甘く見てた。魔法をなくした人間とはいえ『神器』の護衛たちか。もう加減はしないぞ」


 余裕そうなことを言い、さらにスピードをあげて走ってくる鬼王。


 え? まだ全力じゃなかった? あいつ、クオンとカウフタンで止められる?

 その不安を口にする前に、クオンが言った。


「ほんの少しだけ、鬼王殿を止めるっす! その間に、アイ様、イセ殿、何とかする方法をお願いしまっす!」


 何言ってんの!?


 と思って言いそうになったが、アイですら言わない。


「わかった。その間、頼む」


 クオンとカウフタンは笑顔でうなずく。

 余裕の笑顔ではない。

 アイと、俺に後を託すような決死の覚悟が見えた。


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