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122話 『天の火』

 アイが大きな魔法の準備をしているその間も、鬼王と天使による連携攻撃が、『竜』を翻弄する。

 それでも、力で圧倒する『竜』。

 勝敗は見えていた。


 このままぶつかりあうだけでは、『竜』に負ける。


 だが、天使と亜人と、そして人間の『神器』は、『竜』に対するものをそれぞれ用意していた。

 その中の1つ、鬼王の巨大化。


 鬼王によって、『竜』は今この戦いを強いられている。

 今まで圧倒していたこの世界の生物たちの中に、匹敵しうる力を有する存在がいた。

 それが鬼王。だから『竜』は戦っている。


 さらに、天界の天使たちもこの『竜』と対峙するだけの力を蓄えていた。

 この戦いにわざわざのって来たあのキルケが、何の勝算もないとは思えない。


 俺をさらった時のように油断して武装をしてこない、などという失態はしてないだろう。

 おそらく、鬼王の巨大化の剛術と同じように、『竜』への対抗策がある。


 この状況を見ていると、いかに自分が無力なのか思い知らされる。

 異世界転生して、力を得たとか些細なことだ。

 自動車一台で何ができる?


 『竜』の圧倒的な力。

 明らかに人よりも強い、亜人と天使の力。

 人は、絶対に彼らに勝てない。


 人外に対抗するには人外を。

 だから人は、魔法を得た。

 人の世界の外より得られる力を行使する術。


 外の世界の力であるからこそ、内なる世界にとって不安定要素でしかない。

 だがそういう力をもってして、人は彼ら人外に対抗できる。


 今はその手段もだいぶ失った。

 そんな中、失わずに保持し続けている者がいる。

 それが最後の魔法使いであるアイだ。


 故にアイは、人類の希望なのだ。


「……アイの魔法は効きますか?」


 俺はアイから受け取っていたガラケーに向かってシガさんに話しかけた。


「わからん。だがアイは『神器』だ。できなかったら、この先の希望にはなりえない」


「不安しかない答えですね」


「みなさん、注意を」


 アイの様子を見ていた俺たちに、ケアニスが声をかける。


「キルケさんがやる気です」


 言いながら、ケアニスは、真力の盾を分厚く大きくした。

 何をやる気なのか、言わなくても何となくわかる。


 ケアニスの視線の先の上空に、6体の天使たちが宙に浮いて留まっている。

 アイと同じように、何かに集中している様子だ。


「あれは何を……?」


「天界真力の最高武装『天の火』です」


 それが何なのか、さっぱりわからないがカウフタンには心当たりあったように驚く。


「本来は大地を滅ぼすための兵器ですが、一点集中して『竜』に使うのでしょう。鬼王さんもわかっているようで、アレの射線上に導いてますね。こんな時は仲がいいみたいで」


 苦笑するケアニス。

 こんな状況でも笑える彼は、やはりどこかおかしい。


「アイさんの魔法、必要なくなるかもしれませんね」


「準備しておくに越したことないさ。それに『天の火』が効くなら、すでに使ってるんじゃないか? 帝都を犠牲にしてでも」


「あ……」


 シガさんの単純な指摘に、ケアニスも納得の気づきをしたが、天使たちは動き出した。


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