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11話 公爵令嬢を救え

 それから、俺たちはハイエースで道なき道を進む。

 もはや異世界となった元いた世界の技術の粋を結集した日本製自動車は、どんな道もすいすいと進んだ。

 野を越え山を超え谷を越え……って本当に越えていくので、俺は驚いた。


 アイは「すごいな! 自動車はすごいな!!」とキャッキャと喜び、俺もそれに応えるように「だろ?」って言っているけど、内心では「あれ? こんなに性能いいの、おかしくない?」と若干の焦りも含めて驚いていた。

 この踏破性能は、明らかに魔法だろう。

 魔法のハイエースだ。


 このことは、察してもよかったはずだ。

 なにせ、後ろの荷台からは、10匹の鬼がわらわらと出てきたのだから。

 どういう仕組かはわからないが、これが魔法というものだろう。

 だとするなら、このハイエースは魔法の自動車なのだ。


 少しスピードを落として、慎重に運転することにした。

 もし事故ったら、どうなるのか想像もつかないから。


「イセ」


 はしゃぐアイを抑えていたウルシャが、改まった様子で俺に声をかけてきた。


「先程は失礼した。おぬしの『力』は確かに強力だ。捨てられた犬などと言ってすまなかった」


「あ、うん。それは、ね」


 なんだかすごい罵倒を受けていたんだよな。


「この『力』ならば、アイ様にとって強力な武器になる」


「あー、その件なんだが、今回限りになりそうだ」


 ウルシャは、何故という顔をするが、アイはわかっているようだった。


「ガソリンとやらが無いんだろ? この世界には」


「無いってことは無いとは思うけど、こいつに使える燃料はすぐに手に入るってことはなさそうだ」


 ふと……そんなことはないかもしれないと思った。

 魔法でなんとかならないかな? まあ、ひとまずそれはこの緊急事態をなんとかしてからでいい。

 今、この時は、アイとウルシャを運ぶことが大切なんだ。


「これっきりで終わりか……だが、これでエジン公爵家の運命が変えられるかもしれない」


 アイは、エジン公爵家はこの国で最も位の高い貴族と語っていた。

 そして、アイたちを支援してくれているパトロンでもあるとのこと。


 アイとウルシャが何故、急いで公爵領へ向かっているのかというと、今回の謀反に公爵令嬢のひとりが巻き込まれているから、救いにいくためらしい。


 エジン公爵令嬢 オフィリア。

 若いが聡明で、不穏な様子だった公爵領にただひとり、公爵と共に残って政務を手伝っていたという。

 その聡明さ故に、公爵を狙った謀反に巻き込まれた、と。


「アイ様、オフィリア様はすでに亡くなっているか、敵に捕らえられているか、している可能性の方が高いです」


「アイは信じている。オフィリアはすっごいしたたかなんだ。こんなことでやられたりしない。でもひとりで孤立してたらやばいから、アイが助けにいくんだ」


 ウルシャは困った顔で苦笑している。

 そしてこっちを見るのは、俺に止めて欲しいからかどうなのか、まだわからなかったので、俺なりに突っ込んでみた。


「でもアイは、ただ助けに行くだけじゃないんだろ?」


「もちろんだ。謀反を起こした連中がどんなものかの偵察でもある。公爵領は広大で城下町も完全に支配できるわけじゃない。現にうちからの密偵が多数、公爵領に潜んでいて問題なく過ごせている」


 その密偵というか間者から、謀反が起こったと連絡があったということか。


「謀反が起こったのはいつ?」


「昨日だ。早馬を飛ばして知らせてくれた」


 ウルシャが簡潔に説明してくれた。


「なるほど。そういうことなら、今日いきなりアイたちが公爵領に現れたら、そりゃ驚くな」


 アイはイキイキと話す。本気でそう思っているようだ。


「おもいっきり驚かして、慌ててさせて、その上で困らせていることを後悔させてやらないとな」


「うんうんっ」


 アイの言葉に乗ってみたものの、公爵領で謀反を起こすような連中を甘く見ているのか、それともアイの魔法というのがそれほどのものなのか、俺にはまだ判断つかなかった。


「お。もう連絡が来たぞ。速いな」


 アイがもはや勝手知ったるという感じで助手席の窓を開けると、小鳥が飛び込んできて口に咥えた葉を落とした。

 落とした葉は、アイの手の中に収まる。

 そして、葉は手のひら大の大きさになり、そこには文字が書いてあった。


「公爵令嬢は逃亡中。衛兵隊が探し回っている……っ! ウルシャ、イセ、助けるぞ!」


「はい。もちろんです」


「わかった。具体的にどうするかすぐ思いつく? ていうか、どうやって令嬢と合流するの?」


「アイが魔法で作った髪飾りをつけているはずだ。その魔力を追うことで場所はすぐ分かる」


「魔法、便利だな」


 ならあとは、間者たちと合流して、アイが令嬢が逃げている先を教えれば助けることができるというわけだ。


 俺の『力』が必要なのは、おそらくその後。

 公爵領から逃げる時に、彼女を運ぶ手段として、ハイエースが使われるということだ。


「それじゃ、城下町の近くについたら、ハイエースをどっかに隠さないとな」


「イセはそこで待機しててくれ。アイ様と私で令嬢を救い出す」


 その城下町の場所はもう少しなので、ここまでの運転で2時間以上くらい。

 運転慣れしてない身としては、少し休んでおきたいところだ。


「なら、隠せる場所についたら、俺はアイたちが戻るまで仮眠でもとっておこうかな……おっ! 

あれか?」


 フロントガラスを通して、絶景の中に城壁に囲まれた町が映った。

 ずっと大自然な光景が続いていて、人工物もところどころでしか見なかったので、その大きさに少し圧倒される。

 俺が召喚された古城とは比べ物にならないくらい、城下町は広そうだった。


「む……これは危ないかもしれないっ! オフィリアが町中を移動してるっぽい。この感じは、追われているかも!」


 今、このタイミングで追われているとなると、アイとウルシャが間者の手配で町に侵入して、オフィリアと合流という時間すらないかもしれない……か。


「……このまま、こいつで突っ込む?」


「頼めるか?」


「まかしといて」


 即答したが、ほんとに大丈夫か?

 城壁は高いし、この大型車が通れる道はあるのか?


 そんな思いはあるが、それ以上に気分は高揚していた。

 この車を、この世界で走らせようとした時の気分に近かった。

 俺がこの世界に来て、手に入れた『力』を思う存分振るえそうな気がしたからかもしれない。


 そう思うと、背中の方からぞくりとした気配が漂ってきたように感じた。

 後部にいるであろう、鬼たちの気配かもしれない。


 ひょっとして、ハイエースだけじゃなくて、やつらの『力』も使うことになるのか?

 なんだかそんな予感がした。


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