表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/280

116話 対『竜』共闘

「で、鬼王を呼んで、こっちの手札を見せたら、乗ってきてね。こうなった」


「ぶっちゃけるなぁ、シガースちゃん」


「割れる腹は割っておこう。もちろん各々のキモになる隠し事はそのままに」


「素直だなぁ。そんなだから、死んじゃうんだよ」


「転生してるから」


「しぶといね」


「で、師匠と鬼王は、アイたちが戦うこと前提なんだな」


「そうそう。イセくんを生かすためには、今ここで『力』を示すしかないよ?」


「アイは師匠とサミュエル卿がここにいたら、確実に魔法をぶっぱなしてた」


「だろうね。で、どうする? やらない?」


「…………」


 アイは黙る。

 そして、ケアニスも肩をすくめ、事情を見通せそうなカウフタンもクオンも、口を閉ざしている。


 これは『竜』との戦いに巻き込まれそうだ。


「師匠、ひとつ聞きたい」


「私の知っていることならなんなりと」


「天界と亜人連盟……いや、キルケと鬼王とは、いったいどういう関係なんだ」


「彼らとは『神器』同士で、それぞれと協定を結んでいた。『竜』に関しては協力するとね。聞いてないとか言うなよ? アイと違って俺たちはそれぞれ国を背負っているんだ。下手に動けないし、大きな動きがあった時、手遅れになる可能性は出来る限り潰しておきたいんだ」


「わかった。でもそれだけじゃないだろ? 裏取引をしているだろ?」


「裏ってほど裏でもないよ。そっちはサミュエルくんだね。通商連合と教会の間で、帝都解放後の協定を結んでおきたいのと、亜人連盟もそこに絡めておきたいんだ。状況が変わるからこそ道筋をつけたい、それが彼が取引をしている理由だ」


 アイは押し黙る。

 感情的には俺たちに黙って動いているが、ことが終わった後の状況の整理に必死になっているのは、今のでもわかる。


「『竜』退治を言いだしたのは私だ。だけど、きっかけはアイだ」


「アイのせいにするな」


「召喚術でイセくんを呼び出して、天界とことを構えたのはアイだぞ」


「それとこれと一緒にするなっ!」


「おいおい、私は褒めてんだぞ? あそこまで追い込まれて、ここまで盛り返した。大したものだ。だから……まだまだ頑張ってほしい。イセくんもね」


 いきなり俺に振られた。


「何故そこまでしてくれるんですか?」


「同郷のよしみってやつだよ」


「その使い方、多分間違ってますよ」


「だろうね。でも期待してる。イセの『力』に。ハイエースなら戦えるさ」


 からかっているように聞こえるが、多分本気だ。

 そして……ここまで追い込まれて、俺も黙ってやられるわけにはいかない。


「……『人喰い(オーガ・)鬼の分隊(スレイバー)』」


 久しぶりに、呟いた。

 だがそれだけで、残り8匹はハイエースの後部座席から飛び出してきて、すでにいる2匹と共にアイと俺たちを守るように囲んだ。


 他の連中が、微動だにできないほどの召喚スピードだった。

 キルケは黙って目を細め、鬼王は目を見開いて笑った。


「ほう! オーガを自在に操るか」


「やる気になったのか?」


 俺が、シガさんに向かって頷こうとした時、アイの小さな手が遮る。


「やらない」


 アイは、ガラケーの先にいるここにはいないシガさんを、そして鬼王とキルケを睨む。


「『竜』を退治してどうする? 『神器』同士の争いは御法度だ」


「わかった。譲歩しよう。退治はしない。あくまで帝都から追い出すだけだ」


 シガさんはさらりと、アイの要求を飲んだ。


「イセくんには『竜』の弱体化を頼む。アイは魔法で認識妨害を。あとは天使の方々と、鬼王に任せる。殺さないように頼むよ」


「勝手に決めるな、シガース」


「キルケ。この共闘では私に従ってもらう。発起人だからな。その後は好きにしていい」


 そう言うと、キルケが何が言いたげにしつつも、黙った。


「その条件は、俺たちも同じ?」


「うん。鬼王のその『竜』対策ってのを存分に見せてくれ」


「いいよ。天使の面々にもいい機会だから、見せておこうか」


 これから運動でも始めようという感じで、鬼王は体を動かし始めた。


「では、新たな『神器』同盟による『竜』退治、始めますか」


 ガラケー越しのシガさんの声は、楽しそうに弾んでいた。

 もしこの場にいたらハイエースごと体当たりしたいと思ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ