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108話 戦意の高さ

 カウフタンは、エジン公爵側のメンツを見て、それからアイを見つめて、うやうやしく頭を下げ、そして頭をあげて発言をした。


「私も、アイ様たちの『竜』との戦いに参加させていただきたい!」


「「「「っ!?」」」」


 一番驚いたのはオフィリアたちだった。


「おい、カウフタン。アイたちは戦いに行くんじゃないぞ」


「そうなのでしょうか? 『竜』は帝国の兵を避け、天使様たちの兵を避けた不倶戴天の敵。戦う覚悟なしに立ち向かえる相手とは、到底思えません」


 カウフタンは、言いながらさらに席から立ち上がり、剣を持っているかのように、衛兵隊の敬礼を取る。


「アイ様が、ケアニス様と共に、召喚戦士であるイセ殿と『竜』に立ち向かう戦いに、我らが参戦せずいられましょうか。私、カウフタンは衛兵隊を率い、共に『竜』と戦います」


 オフィリアの側近たちが、ざわめく。

 カウフタンの覚悟に、感動しているのかもしれない。


 ああ、そういうこと?

 ここで戦う意思を示して、隊長代理は衛兵隊の長だぞっていうアピールか?


「いやまあ、戦うとなったら戦うけど、そういう覚悟のつもりはなかったんだが……」


 どうしよう? という調子でケアニスを見るアイだが、ケアニスも肩をすくめた。


「カウフタン。アイ様方は話し合いに行くというのですよ? そこに衛兵隊を連れていくのは、『竜』を刺激するのではありませんか?」


 オフィリアが、困っているアイたちに助け舟を出すかのように言う。


「そういうことでしたら、私ひとりで参ります。衛兵隊の長として、『竜』と相まみえて参ります」


 オフィリアがアイの方を、よろしいのでしょうか? という風な意図を込めて見る。

 それに対してアイが応えた。


「衛兵隊となると大所帯になるから無理だが、ひとりかふたりくらいなら大丈夫だぞ。な、イセ」


 俺はうなずいた。

 ハイエースにはまだ搭乗人数に余裕がある。


「ではアイ様、私ひとり、よろしくおねがいします」


「カウフタン、衛兵隊はどうするのですか?」


「セディたちに任せましょう。我が兄、カウフマンに率いられた衛兵隊の練度は伊達ではありませんでした。不測の事態が無い限り、衛兵隊はまるで隊長に率いられたようにやってくる外敵を打ち破り、エジン公爵領の治安を維持するでしょう」


 カウフタンが自信満々に衛兵隊を語り、ドヤッという顔をしてみせた。

 その頼もしさに、オフィリア以外の側近たちは感心してみせる。


 オフィリアだけが、少し不安そうにカウフタンを見ている。

 なんだろう?

 なにかあったのか?


「ではそちらの問題はそちらで話し合ってもらおう。アイたちはカウフタンが来ることは止めはしない」


「ありがとうございます! 『神器』アイ様とケアニス様のため、粉骨砕身尽くさせていただきますっ!」


 なんだか少し嬉しそうに言うカウフタン。

 ほんと何があったんだろう?


 そのことを問いただすため、俺はこの話し合いというか、アイの報告会が終わった後、クオンと一緒にカウフタンに接触した。


 衛兵隊の隊長執務室で、カウフタンと俺とクオンだけになったところで単刀直入に聞く。


「で、なんで来たがるの?」


「衛兵隊にカウフタン殿がいないとまとまらないんじゃないっすか?」


「そこは大丈夫だ。前も話したかもしれないが、ぶっちゃけ昔の私の頃よりも、皆の忠誠心が高い」


「ああ、それはあれっすね。カウフタン可愛い効果っすね」


「みたいだなっ!」


 カウフタンがドンッと机を叩く。

 地団駄踏んでるみたいに悔しそうだ。


「衛兵隊が大丈夫だから、俺たちについてくる?」


「そうだ。こっちは大丈夫! 私の懸念は私自身のみになった!」


 俺とクオンは顔を見合わせて首をかしげる。


「カウフタン殿の懸念ってなんすかね?」


「わからないか?」


 俺たちはうなずく。


「……『竜』にやられて、お前たちに死なれては困るだから」


 カウフタンは、怒っているかのように言う。


「私を元に戻す前に、死なれては困るからだっ!!」


「……あぁ」


 俺とクオンは、手をポンと打った。


「俺はお前とアイ様を全力で守る。必ず生きのびてもらい、私を元に戻してもらう」


 ぷるぷると震えるカウフタン。


「これ以上、オフィリア様と妻の思い通りにしてなるものかっ!!」


「なるほど、切り込み隊長と結婚させられそうなんだっけ」


「ぐぬぬ……」


 どうやら、オフィリアと妻ステファニに、かなり追い込まれているようだ。

 てか、そっちを相手にするくらいなら、『竜』と相手をした方がマシみたいな感じ?


「彼女たちの思惑を阻止し、男に戻る。必ずだっ!! そのためには『竜』の相手なぞ、屁でもないっ!!」


 俺とクオンは、思わず拍手しそうになった。

 この戦意の高さ、とても頼りになる。

 さすが、孤軍奮闘でエジン公爵領を乗っ取る寸前まで行った英傑だ。


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