表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/280

106話 誰のための戦いか

 俺の知っている『神器』は4人。


 幼女の姿をした女の子の天才魔術師。

 性格も考え方も違いすぎるふたりの天使。

 異世界転生して日本人になった元魔術師。


 どいつもこいつも曲者ぞろい。

 方々に大きな影響があり、彼ら個人も桁違いの実力者たち。


 だからこそ『神』によって『神器』に選ばれたということだろう。


 その中に、今度は『竜』が入ってきた。


「アイ様……『竜』を神が認めておられると?」


「そういうことになる」


 ウルシャはアイの告白に、ショックを受けている様子だった。


 そのショックは、俺にはない。

 てか『竜』を知らないので、根本的にはわからない。


 だから問題はそこではない。

 何故、このタイミングでアイがこんなことを話したのか。


「そうか。『竜』を女の子化しようとするってことは、『神器』と戦うということになるのか」


「さすがだな。よく気付いた。つまりはそこの話に戻る」


「ん? 戻る?」


「ああ。だっておぬし、元々ケアニスに使おうって話をしてたじゃないか」


「あ……ああっ、そうだったそうだった」


「でも使わずに済んでいる。ケアニスのあの性格、というか性癖のおかげで敵対せずに済んでいる」


「……ラッキー、だったね」


「そうだ。だが、今回は違う。『竜』は違うぞ。使わざるを得ない状況になるだろう」


 ケアニスと戦うかもしれない覚悟。

 あれはキルケによって、俺が天使たちから狙われていたからだ。


 だがそれは、ケアニスがアイの味方になったことで、キルケたちからも身を護ることができ、戦いは回避された。


「あの時は、止むに止まれず挑んだ、身を護るための戦い。今回は、ケアニスの望みから生まれた戦いだ」


「……ケアニスの協力のためには必要、とか?」


「別に『竜』でなくても構わないだろ? それこそここの椅子でもいいわけだ。『竜』を選んだ理由は、ケアニスなりにイセの『力』がどれほどのものなのか、実際に見て確かめたいという気持ち、あるだろう。だからケアニスの興味本位の部分が強い」


「だから反対したのか」


「リスクの方が高いからな」


 アイはリスクを考えて反対していた。

 それに加えて、もうひとつあった。


「あ、そうか。アイは他の『神器』の排除は、神になる道ではないと考えているのか」


 アイは無言でうなずいて、こっちを見つめている。


「……それでも、やるか?」


 自分の考えを告げ、その上で俺の判断を聞こうとしている。

 これは……俺への信頼と思っていいだろうか。


「正直……今の話だけじゃわからん」


「まあ、そうだよな」


「だから、まずは『竜』を見てこよう。いや『神器』ってんだったら会いに行こう。少しでも話せれば何か変わるんじゃないか? さっきのアイの話も、もしかしたら『竜』だから乗ってくるとかあるかもしれない」


「ケアニスみたいにか?」


「そうそう」


「楽観的だなぁ」


 アイは少しだけ、ほっとしたように笑った。

 そしていつもの軽い調子にもどった。


「わかった。『竜』に会いに行こう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ