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お嬢様なんて柄じゃない  作者: スズキアカネ
さようなら、私。こんにちは、エリカちゃん。

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私と相容れない相手は【二階堂エリカ視点】


【──1年前】


『お前はいい加減友達を作れよ。いつまで宝生の金魚のフンをやっているつもりなんだ』

『慎悟さん…』


 数年前に彼の従姉と私の従兄が婚姻を結び、縁戚になった彼…加納慎悟は事ある毎に私に注意をしてきた。小学校の時から彼とは同じ学校だったけど、その頃から彼は私に対する当たりがきつかった。

 …私のことが気に入らないなら、無視していればいいのよ。…クラスの人達のようにいないモノ扱いしたらいいのに。この人もよくわからない人だわ。


『人付き合いは将来的に必要となっていくんだ。お前、そのままで宝生家に嫁ぐ気か?』

『…慎悟さんには関係ないでしょう?』


 …何故、彼は平気なの? 家柄に群がってくる女子を平然と対応して、会社に益のある相手と友人関係を結ぶ…彼はそれが当たり前のようにこなしているけれど、私にはそれが理解できない。

 そんなの、自分を見てくれないじゃないの。見ているのは家柄とお金だけじゃないの。腹の底で何を考えているかわからない、計算づくで近づいてくる人達と親しくするなんて怖い。私には出来ない…!

 表では綺麗なことを言っておいて、裏では口汚く罵っているのよ? そんな相手を信用するほうが危険じゃないの…


『…お前と宝生の婚約だって利益目的じゃないか。…主に宝生家の』

『…! そ、そんなことない! 私と倫也さんはそんな薄っぺらい間柄じゃないわ!』


 自分が思っていることを慎悟さんにぶつけると、彼は鼻で笑っていた。その目が嫌い。いつもそんな目で私を見てくる…きっと心のなかで私を見下しているんだわ。


『…エリカ、いい加減わからないか? お前は二階堂家の娘、お前の行動ひとつで家に影響を及ぼすんだ。お前が変わらないのなら、お前の立場は更に悪くなるんだ』

『…私は二階堂家の娘として恥ずかしいことをしてきたつもりはないわ』


 彼の目を見るのは怖い。いつだってこっちを見定めようとする目をしているから。私はそっと目をそらして、弱々しく返事した。

 慎悟さんがため息を吐く気配がした。それに私の肩がビクリと震える。


『…学校内で、お前の評判が急激に悪くなっているのに気がついているか?』

『え……』


 私には友人がいない。だから学校に流れる噂が耳に入ってくることは、ほぼない。

 私の評判ってなに? 二階堂家の娘という肩書で視線を向けられるのはあったけど、私の評判って?

 私が状況を把握してないと判断したのか、慎悟さんが冷ややかな瞳で私を見下ろしながら説明しだした。

 

『あの外部生、瑞沢姫乃に対する嫌がらせを扇動しているのがお前だという噂が流れている』

『えっ…!?』

『…それに、どうも噂の流れ方がおかしい。悠長にしている暇はないぞ。それに宝生だって…瑞沢とただならぬ関係に陥っている可能性がある』


 瑞沢姫乃をよく思っていないのは私だけじゃない。瑞沢姫乃と親しくなり始めた賀上さんと速水さんの婚約者達だって良くは思っていないに違いない。それに彼女たち以外にも面白くないと思っている生徒はいるはずなのに…

 そもそも私は何もしていない。そんな事言われてもどうしようもない…私にどうしろと言うのよ。


『……私は何もしていないもの…放って置いて…』

『エリカお前な…』


 慎悟さんが更になにか言おうとするのを制止するように私は口を出した。


『何もしていないんだから、気にする必要はないわ。…私は彼を信じているから』


 そうよ。そうに決まっている。

 私は何も悪いことをしていない。だからそんな噂、すぐに立ち消えるはず。彼だってすぐにあの女に飽きるに違いないわ。ただの火遊びに決まっている。

 気にしないのが一番、きっとそれでいい。


『……友人がいないお前を庇ってくれる人間はいないぞ』


 だけど慎悟さんはそうは思わなかったらしい。いつものように私に厳しい意見を突きつけてくる。


『信じてくれる人間は一握りもいないぞ。…お前、それでもいいのか』


 彼の真っ直ぐな目に射抜かれて、私は反論することが出来なかった。それが悔しくて、私は唇を噛み締めてしまった。

 ……なんであなたにそんな事言われなきゃならないのよ。

 私は本当に何もやっていない。私は倫也さんの婚約者として恥ずべきことは何もしていないの。一時の浮気は大目に見るのが淑女の嗜みだと思って、見守っているの。それのどこが悪いの?

 

『人を嫌って人付き合いをしない、身に覚えのない罪を否定しようと声も上げない…お前、それが自分で自分の首を絞めているってどうしてわからないんだ? …長い付き合いだけど、お前の考え方が俺には理解できないよ』


 言いたいことを全て言い切ったらしい彼は私に背を向けて立ち去って行った。彼の後ろ姿を見送りながら、私は悪態をつく。


『余計なお世話よ…』


 …だからあの人は苦手なのよ。口やかましくて…言っていることは正論なのだろうけど…苦手。

 同感よ、慎悟さん。一生わかりあえないと思うわ、あなたとは。 


 それにしても……何故私が扇動したみたいな噂が流れているのかしら……?

 私の知らない所で…なにが起きているのかしら…?



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