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お嬢様なんて柄じゃない  作者: スズキアカネ
さようなら、私。こんにちは、エリカちゃん。

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夢子ちゃんが現れた! 本人は激おこのようだ!


 あの後、特に何か起きることもなく。待ちに待ったクラスマッチの日はやって来た。


「1ー3女子バレーのみんな、今日は今までの練習の成果を発揮する日だけども、とにかくバレーを楽しもう。くれぐれも無茶はしないで、人のミスには激励を送るように。スポーツマンシップに則って楽しくバレーしようね!」


 それが正しいスポーツのあり方である。クラスマッチであろうと部活であろうと、スポーツはみんなが楽しくプレイできるのが正しい形。

 私は1−3女子バレーチームのみんなに円陣を組もうと声をかける。


「頑張ってーいきまっしょい!!」

『おーっ!』


 みんな心ひとつに、気合を入れてコートに入る。

 私達の気合の入りように他のバレーチームは引いているようだが、そんなの気にしない。勝ち負け気にしないで今日は楽しむんだ。

 初戦は同じ1年、1−4との対戦だ。


 相手方4組にはバレー部生はいない。1組・2組には居るんだけどなぁ。試合に当たらなかったんだよ。

 じゃんけんでサーブ権をゲットすると、私はボールを手になじませるためにドリブルした。そして試合開始の合図が鳴ったと同時に助走をつける。

 この日のために練習を重ねてきたジャンプサーブを勢い付けて放った。



 気合い入れたのが拍子抜けなくらい、あっさり勝ち進んだ。

 まず4組はまともにボールを取れない人ばかりだった。軽く返す感じでボールをやってもレシーブからして出来ていない。慣れて無さそうだったので強いスパイクは避けておいたのだけど、それでも全然。

 だからラリーも続かず、あっちでは諦めモードが漂っていた。サーブをゆるく打って、ようやくちゃんとボールが返ってきたけど、もうすでに向こうは戦意喪失。


 隣コートの1組VS2組対戦では熱戦だと言うのに私達は簡単に勝利してしまった。…不完全燃焼状態の私達は次の試合まで他のチームの試合見に行く? とみんなと体育館を出ようとしていた。

 だがそれは何者かによって妨害された。ザッと行く先を通せんぼする人物に足止めを食らったのだ。


 突然現れた少女に私だけでなくバレーチームの子達は目を丸くしていた。…ぴかりんは相手の顔を見た瞬間思いっきり顔を顰めていたんだけど。


「ちょっと! 二階堂さん!? どういうつもり!? ヒメの手が赤く腫れちゃったじゃないの!!」

「んあ?」


 先程の試合でレシーブをした際に内出血をしたのだろう。赤くなった腕を差し出して苦情を訴えてくる少女。

 …ミディアムなおかっぱヘアスタイルで、猫のようにくりっとした、少しつり上がり気味の瞳が可愛らしい女の子。


「倫也君に捨てられたからってヒメを逆恨みしてるのっ!?」

「……てか誰?」

「はっ!?」


 誰だろうかこの子。 

 …ヒメって自分を名前呼びしてんの? それともお姫様って意味でヒメって呼んでるの?

 どっちにせよ高校生にもなって痛いんだけどね。


「ばか、ほら例の夢子だよ」


 ぴかりんが耳打ちで教えてくれた。

 …あぁこの子が夢子ちゃん! エリカちゃんの婚約者を奪うだけじゃ飽き足らず、他の御曹司までも射止める天真爛漫な美少女………


「……まゆりん? …んーまゆりんかなぁ?」


 ぴかりんはAOKのまゆりんに似ていると言っていたけども私はそうは思わない。かわいいよ? かわいいけど、まゆりんじゃないと思う…アビシニアンというかマンチカンのような…

 私は首を傾げて夢子ちゃんを見てみた。すると彼女は私をきつく睨みつけてきたので、まゆりん追及は止めておいた。


「倫也君に言いつけてやるんだから! 覚えてなさいよ!」


 夢子ちゃんはそう叫ぶなり、その場から逃走していった。

 バレーなんだからボールを受け止めたら痛いってわかりきった事でしょう。ドッジボールもそうだし、バスケにソフトボールやサッカーだって当たれば痛い。

 それにこっちは一応素人相手に力を抜いてプレイしたつもりなんだけど…


「んー…」

「…いいの? 放っておいて」

「何かあった時に考えるから良いの」


 ぴかりんが心配そうに私を見てきたけど、多分大丈夫だと思う。あれだけのことをしてしまった宝生氏だって馬鹿じゃなければこれ以上の問題は起こさないだろう。

 それにクラスマッチでぴゃーぴゃー言われたらクラスマッチそのものの存在意義が問われてしまう。


 気にしないで次の試合のことに集中しよう。



 2試合目は2年との対戦だったが、こちらもバレー部生がいなかったお陰なのか勝つことができ、私達は準々決勝に進むことになった。

 続いて3試合目は3−1との対戦。そのクラスには女子バレー部の元副部長とレギュラーの先輩がいる。私とぴかりんは試合を前にして思わず顔を見合わせた。

 …しかし私達の考えていることがバレたのか、3年側から声を掛けられた。


「エリカ、ひかり。遠慮して手ぇ抜いたら許さないよ」

「! は、はいっ」

「全力でやります!」

「よし」


 元女子バレー副部長は少々きつめのお方なので彼女のその言葉に私とぴかりんはビビってしまった。彼女の性格上、先輩だからと手を抜いたら怒られそうだ。私は本気を出す事を決めた。


 バレーに慣れた人がいると、コート内の空気がビリッと変わる。久々だ、この空気感。

 部活の練習でボールに触れるようになったとは言え、私はこの学校ではまだまだペーペーの身分。試合に出ることは叶わない。

 しかも私は表向きリベロとして頑張っているのだからスパイカーとして試合に出ることが出来るのがとても嬉しい。


 …以前は、努力さえすれば夢は叶うって信じていた。

 だけどエリカちゃんの身体に憑依してしまって現実と夢のギャップにぶつかった。やはりどうしても身長が小柄になってしまった今、努力だけでは補えない部分が出てきてしまったのだ。

 悔しい。だけど仕方がないというのはわかっている。だからこそ、クラスマッチでは自分のやりたい事をしたかった。


 対戦相手とのじゃんけんでサーブ権を獲得すると、私はサーブポジションについてボールをドリブルした。

 スパイクが打ちたい。ぴかりんと練習してきた強めのスパイクを。

 深呼吸をして集中する。


 ピッと鳴った試合開始の笛の合図とともに私は駆け出し、ボールを宙に放つ。そして右手を振りかぶって強力なサーブを相手コートに叩きつけた。



 先程の試合と比べては何だが、流石県内1位2位を争うレベルのバレー部レギュラーであった人たちだ。強い。

 自分なりに攻撃的なサーブを打てたと思ったのだが、易々と拾われてしまった。


「エリカっ」

「はいっ!」


 ぴかりんのトスから相手方のコートにスパイクを打ち込む。それもやっぱり相手に取られてしまう。

 やっぱり元の体じゃないと限界があるなと少々弱気になっていた私だったが、持ち前の負けん気で戦い続けていた。

 バレーはチームだ。全員で心ひとつにしてプレイしないと、良い結果は出せない。なのに試合中にも関わらず、相棒のぴかりんが気もそぞろになってミスが目立つようになった。


 幸いチームメイト……特にスポ根化している阿南さんが頑張ってサポートしてくれてるが、主力選手がそんなんだとチームの士気も下がる。

 何があったかは知らないけど…いくらクラスマッチとは言え、そんな気の抜けた態度だと巻き込む形で練習を頑張ってくれた他のチームメイトに失礼なんじゃないかと思うんだ。


「…ぴかりん、集中出来ないなら阿南さんとセッターポジ代わってくれる? 邪魔だから」

「え、だ、…大丈夫」

「体調悪いとかなら早く言ってね。今のぴかりんのボールすごく打ちにくいから」

「…ごめん……」


 少々私もきついことを言っているが、本当にぴかりんはいきなり様子がおかしくなった。彼女の目は泳ぎまくっているし、動揺している様子が見られる。

 私が注意したことで、ぴかりんも試合に集中しようとはしているものの、やっぱりいつものような打ちやすいボールではない。

 試合は現在あちらの優勢。あと何点かで私達は3回戦敗退となってしまう。私らしくもなく、もう駄目かなと半分諦めたその時。


「山本さんっ!?」

「…!」


 やっぱり気が抜けたままのぴかりんはチームメイトのレシーブから気が逸れていて、阿南さんの注意でやっとボールが上がっていることに気がついたらしい。慌てて隣にいる私の頭上に向かってスパイクしてきた。


 意味がわからない。

 こっちに攻撃しても意味ないでしょうよ。トスを上げなさいよ。いや、ぴかりんの反応が遅かったからトスあげられなかったんだろうけどなんでスパイク打ってくんの。スパイクは相手側に打ちなさいってば。

 放たれたスパイクはネットの高さを超えそうなボールだ。このまま逃してはコート外にボールが飛んでいってしまう。そうなればこっちの失点になるので、一か八か…勢いをそのまま活かすことにした。


 大丈夫だ、出来る。私なら…!

 思いっきり体育館の床を踏みしめ、私は高く跳んだ。あの頃を思い出して。

 絶対にこのボールは取らせてなるものか……!


「…いっけぇーっ!」


 ズバンッ!

 宙を舞いながらボール目掛けて私は攻撃(アタック)を仕掛ける。二人のスパイクが重なったボールは強く、放たれるスピードも増す。

 そのお陰なのか対戦相手はボールを拾えなかった。相手コートの中でバウンドして跳ね返ったボール。

 その瞬間、こちらに得点が入った。


 スパイクした手がいつも以上に痛んだ。私はビリビリする手の平をじっと見つめる。…さっきスパイクを打った時に誠心高校にいた頃の感覚を思い出したのだ。


 依里しんゆうと共に練習を重ねた日々。相手方のリベロにも取れない強いスパイクを研究していた日々を思い出した。

 スパイク×スパイクの攻撃をするプレイヤーはいるものの、それを実践するには相棒とのタイミングを読む必要があり、かなり難易度が高く実用化は難しい。

 依里とだってなかなか成功できなかったのに。試合となると尚更。



「…え、エリカ…ごめん…」


 ぴかりんが申し訳なさそうに声を掛けてきても私はぼんやりしていた。…私はお盆の日に再会して以来会っていない、親友を思い出していたのだ。


【ピッ!】

 相手方のサーブの合図であるホイッスルが鳴った時やっと私は我に返った。

 危ない。試合中だったんだ。しっかりしろ自分。


 …過去を振り返っていないで目の前の試合に集中しなくちゃ。

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