SampleNovel_01『作り物
『作り物』
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(物語の世界の人間が、物語の世界の人間だと知ってしまう話)
黒犬のあとをたどり、不思議な少年と出会った。
ある日少年が言った。これは物語だと、
自分は自分が操られているのだと、何事に対しても思った。
自分は、誰かが作った話のなかで、決められたとおり動いているのだと気づいた。
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どこか昔、遠い昔、そういうはなし。
ノスタルジー
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そのころの私は、なにやら奇妙なものが近くにいる気がしてならなかった。
ある日、私は黒犬を出会った。
黒犬は私を導いているようだ。手招きをする仕草を見せている。私が立ち去ろうとすると、黒犬は寂しく鳴く。
その黒犬が気になった。
黒犬の後をついて行くことにした。
導かれるままに進むと、ある林へきた。
獄労村公園の茂みの奥だ。
少年が一人……
青白く輝いて見える。幻覚だろうか。
まぶしい。顔が確認できない。
「僕を覚えてないのかい」
少年が声を出した。普通の人間とは思えない。声に雑音がまったく、ない。人間の声ではなく、なにか別の生き物のような、そういう声だった。そして私は、その声をいつか昔、聞いた感覚がする。
少年は話を続けた。
「君は、もう、変わり果てたようだ。もう、僕のことは覚えているまい……
君は昔……。覚えているかな……。
≪哀しみのBGM(或いは苦しみ)≫
話は十年前にさかのぼる
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屋上から飛び降り、その後、ノロ・メランに命乞いをする。ノロは自分の命を渡した。その瞬間に、ノロは地面に打ち付けられ粉々になった身体と変化し、リゲイル(私)は異常のない身体で、その側にいた。人間の死体を間近で見たリゲイルのショックは激しく、それまでの記憶の数パーセントが喪失した。リゲイルは気絶し倒れ、意識が戻ったのは一週間後の朝だった。ノロのことは少しも覚えていない。
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ある夏の日。そのころ学校では異変が起きていた。なぜか次々、生徒が倒れていく謎の事件だ。原因は今でも分かっていない。」