最終章 決着
彼らが踏み込んだ王の間は今までの部屋とはまったく違っていた。ここだけが妙に明るく大理石の床に天井にはシャンデリアという豪華な内装だった。絨毯も赤黒いシミ以外はとても綺麗な赤色をしていて、ここだけこの城の中ではとても異質だった。
そんな中で彼は玉座に座っていた。そして彼は立ち上がり、三人に向かって剣を構えた。
「ようやく来たな」
「ようやく、来れたよ。僕」
「ああ、決着をつけようか」
グリスたちも武器を抜き、構えた。
それを合図に彼は、剣を持ってこちらに突進してきた。
しかし勢いだけなのでグリスたちは軽く避けたが、彼は特に気にした様子はなく、手を前に出して口を動かした。
すると彼の手から熱い炎の塊が現れて、彼らに向かってものすごい勢いで飛んだ。
その炎の塊のあまりの速度に、セレスとロッシュは避けきれずに直撃してしまい彼らは吹き飛んでしまった。
「ロッシュ、セレス姫!」
彼らに近寄り揺すったが、反応がまるでなく彼は青ざめた。
「ああ、やりすぎたね。これからどうしようかな?」
彼は笑っていた。それでもグリスはためらうこともなく、彼に立ち向かった。
その行動に今度はロキの動きが鈍くなった。
「やはり、僕のことを攻撃できないか……」
「何を当たり前のことを言っているんだい? 僕の正体を知っているだろう」
「もちろんさ、だからこそ僕は君を止めに来たんだ」
「そうさ、俺たちもそのつもりだよ」
「そう、それが私たちにできることだから」
さっきまで倒れていたはずの二人は立ち上がり、武器を再び構え、グリスにある言葉を投げかけた。
「私たちは彼を引きつけておくわ、だから貴方は隙を見てエテルノセノクに触ってみてください」
「たぶん、あれにお前が触れば何かしら反応するはずだから」
彼はそれに頷き、彼らの後ろにつき、ロキの攻撃を避けた。
その間に彼はセレスたちを容赦なく痛めつける、それを見ないようにしながら彼は隙をついて彼に近づき、エテルノセノクに触った。するとあの剣は光を増して輝きだした。
それを見て彼は大丈夫だと感じたのか息を思いっきり吸い、叫んだ。
「エテルノセノクよ、僕がした契約を解除してくれ」
ロキは驚いた。そして彼がそう願った時、ロキが今まで感じていた力が削ぎ落とされたような気持ちになったからである。事実、彼の力は削ぎ落とされていた。
「これで終わりだよ、もう不死身じゃない」
彼はそれに対して取り乱し叫び、呟いた。
「僕の力が、力がなくなった。僕は世界のためにしていたのにどうして邪魔をしたのだ」
「わかっているはずなのに、君は自身が間違えていることに気がついていたでしょう。だから止めてもらうために聖剣エテルノセノクを通じて僕を呼んだ」
「そんなわけ、そんなわけ……」
彼は力を抜き、うなだれた。そして憑き物が落ちたように呟いた。
「だったらどうすればいいのさ、こんなことをしてしまったら、もうどうしようもないじゃないか、もう後戻りなんて、できないんだよ」
彼は頭を抱えて、暴れた。それを見ていたセレスとロッシュは彼を支えるために、彼のところに向かった。
「君たち……どうして」
その行動に彼は信じられないという表情を浮かべた。
「俺たちは親友だろ? 親友を助けるのに理由なんかいらないだろ?」
「そうですよ、それに間違えたなら償えばいいのです、一人分で足りないというのなら私たちも一緒に償います。私たちは仲間なのですから」
その言葉にその二人の表情に、彼は戻れる場所があったことに涙を流した。
それを見てグリスは自分の役目は終わったのだと悟った。
だからこそ彼は笑った。そしてこの時代での役目を終えた彼の身体は消えかかっていた。
それに最初に気がついたのはロッシュだった。
「お前、その身体は……」
「どうやら役目が終わったから戻れるみたいだね」
「そうか、そうだよな……でもよかったよ、帰ることができて、戻っても元気でな」
ロッシュは寂しそうな表情を浮かべていた。グリスも寂しかったが顔には出さなかった。
「もちろん、元気でやるよ。そして未来がこんなことにならないようにするよ」
「ありがとうな、グリス」
「グリス……私は貴方に迷惑をかけっぱなしでしたね。でも、もうかけないように約束します」
「師匠はそんな約束しなくていいよ、師匠は師匠らしく生きていってよ。それに迷惑だなんて思ってないからさ」
そして最後に未来の自分を見て別れを告げた。
「じゃあね、僕」
「ああ、じゃあな、僕」
とだけ言ってグリスは元の時代に戻った。
そしてその時、誰かが倒れた音がしたような気がしたがグリスには確認することはできなかった。
そして彼が目を開けた先に見えたのは見覚えのある洞窟と聖剣エテルノセノクだった。
彼は戻ったことに確信が持てなかったので辺りを見渡していると、隊長が少し苛立ったような雰囲気になったので確信を持ち、彼は目の前にある剣を触り、抜いた。
すると様々な負の感情と自身の過去とそれに人の醜さを見せられたが彼はすべてを受け入れて逆に剣に語りかけた。
――もう、大丈夫だから、休んで。
その言葉に安心したのか剣はまばゆい光を発した後、優しい光を浮かべていた。
――ありがとう、貴方のおかげで私の中にある負の感情が解き放たれました。お礼に一つだけ願いを叶えましょう……。
彼はこの語りかけてきたエテルノセノクの声は、この聖剣に取り込まれた負の感情が浄化され、負の感情として取り込まれた誰かだと感じた。だから彼は誰かにこう告げた。
――だったら貴女の大切な人を救ってください。
――優しい子……。
そう呟いたエテルノセノクはそれから、ただ光を浮かべているだけだった。
「よし、任務は完了だな。ただ今より帰還する」
隊長はグリスが剣を抜いたのを確認してから来た道を引き返した。他の隊員は敬礼をしてから隊長の後に続く、彼もまたエテルノセノクを持ったまま続いた。
この剣を献上するために帰還した彼らは王の間にいた。
玉座に座っていたのは死んだ目をした王とセレス、そしてそのまわりにはロッシュもいた。
彼はセレスの姿を見つけると少しだけ緊張した。そして彼は献上するために一歩また一歩近づき、無事、王にエテルノセノクを献上した。
すると王の死んだような目は生き生きと輝いたように見えた。そのことを不思議に思ったが、彼はある結論に辿りついた。
あのエテルノセノクの中にいた誰かが彼の精神を救ったのだという結論に。
――この人が大切な人なのですね。
そう彼は心中で思いながら立っているとロッシュとセレスが言いにくそうに話しかけてきた。
「貴方に言いたいことがあるのです。実は……」
「わかっていますよ、師匠」
その言葉に驚き、彼女は固まり黙ってしまった。
それに助け舟を出すようにロッシュが話しかけた。
「知っていたのか、どこで知ったんだ?」
「未来で」
明らかに胡散臭そうに彼を見たが彼はそれを気にしないで、簡単に今までの経緯を話した。
彼らは一通り驚いた後、グリスに向かって言った。
「にわかには信じられないな」
「でも、本当だよ?」
「……そうだとしたらお兄ちゃんと師匠は生きていることになりますね」
「だから探しに行こうと思っているんだ」
「そうですか……ならグリスに任務を与えます、グリスの父と行方不明のラグナ王子を探してきてください、私は国を守るためにここを離れられませんから」
「それはわかっていますから任せてください。ただ正式に任務を受けるのはロッシュの求めている苔を先に採取して、母の墓参りをしてからでもよろしいですか?」
「それはもちろんです。貴方も別に問題はないでしょう、ロッシュ?」
「それは願ってもないことだけど、いいのか?」
「いいに決まっているよ、だって、その子を助けられるのは、その苔だけで映えてる場所のエテルノセノクの場所を僕しか知らないんだから」
「ありがとうな、グリス」
彼はグリスに礼を言うと、嬉しさのあまり目に涙を浮かべた。
「泣くのは後で、終わったらにしようよ」
「泣いてなんかないさ……これは汗だよ」
それを聞いて、グリスは笑って彼の肩を叩いた。
「さあ、準備をして、行こうよ」
「ああ、もちろんだ」
「ロッシュ、グリス、気をつけて行ってきてください」
彼らはそれに頷き、旅立った。
その後ろではセレスが微笑んでいた。
そして過去のグリスが帰ったあの世界では未来のグリスが床に倒れていた。
過去の彼が最後に聞いた音はこれだった。
彼らは彼を支えて身体を起こしたが、彼は力が入らないのか動かなかった。
「グリス、どうしたんだよ。おい」
「どうやら力を手に入れて、不死身になった時からの傷がすべて身体に返ってきたみたいだ。強大な力は身を滅ぼすね」
「もう、話すな」
彼はそう言って、回復魔法を唱えるがエテルノセノクの力が強すぎるのか魔法は弾かれてしまった。
それでも彼は唱え続けた。
そしてセレスはあの果実を食べさせたが彼の傷は治らなかった。
「ごめんね、ロッシュ、師匠……」
その言葉を最後に笑って彼は目を閉じた。
「おい、グリス、グリス……」
「そんな、そんな」
彼らはグリスを抱えながら、声を上げて泣いた。
「そうだ、聖剣がある、あれにどんな対価でも払えばグリスは助かるんじないのか!」
そう思った彼はエテルノセノクを握りしめる、だが剣は何も反応を示さない。
「どうしてだ、どうしても助けられないのか」
「グリス、目を覚まして、私まだあなたに謝らないといけないことがたくさんあるのだからお願い、グリス」
しかし剣は反応を見せず、この空間は泣き声が響いていた。
その状態の時に置いてきたヴァンとラグナが支え合いながらこの場に現れた。
「落ちつくのだ」
「落ちついていられるかよ」
ラグナの言葉に彼は怒り、掴みかかろうとしたが、さすがにヴァンを支えているラグナには掴みかかれなかった。
「聖剣はエテルノセノクの血をくむものしか扱えない」
「じゃあ、どうやってもグリスは救えないのかよ」
「君たちがどんな犠牲を払ってもいいのなら、救える可能性はある」
彼らは覚悟を決めて頷いた。
「いいだろう、ヴァン。頼めるか?」
「わかった」
そう言って彼は支えられながら、グリスの近くに落ちていたエテルノセノクを手に取った。
「まさか、使えるのか?」
「でもエテルノセノクはあそこの出身しか使えないってさっきお兄ちゃんが言っていたのに」
「……彼はあそこの出身でな。他国の人との間の子として、家族一緒に追い出されたそうだ」
彼らその事実に驚きながら、ヴァンはそれを気にせずにこう言った。
「グリスを助けたまえ……」
そう言って剣を掲げると剣が光輝き、そして、グリスは目を開けた。
それに気がついた彼らはまた涙をこぼした。
あの最終決戦から半年が経った。世界は少しずつ再建の道を歩んでいた。
リアンゲール城で消された人も石にされた学術都市の人たちも無事に元に戻り、再建の手伝いをしている。
だが、ただ一つだけ変わったことがあった。それは彼らの関係だった。
彼らはグリスが目を覚ましたのを確認した後、グリスに関してのみ記憶を失っていた。
そう、それが彼らに対するエテルノセノクの代償だったのだ。
それを悟ったグリスは笑顔でこう言った。
「僕は旅の途中でここの城主に捕まってしまったのです、それを貴方たちが助けてくれたのですね」
と微笑みながら言った。
そのできごとを思い出しながら物思いにふけていたのはヴァンとラグナだった。彼らは城に戻り、ラグナは破壊活動を行った罪滅ぼしのために各国支援と政治を受け持ち、ヴァンは無期懲役だったが特例として、王子の傍で監視されながら一緒に働いていた。
「あれでよかったのだろうか?」
「今さら後悔か? というより大罪人でさらに死にかけを救う代償として、あれはだいぶ軽いぞ」
「まあ、それはわかってはいるんだけどね。ただ辛いだろうと思ったのさ、彼を恨んでいる人しか彼のことを覚えていなくて、助けてくれる人は忘れているのだから」
彼は書類を持ちながらため息をついた。
「それが彼に対する罰だろう。それに記憶はなくてもまた新しく作ればいいだろう? それをするために生かしたのだから」
「それと、罪を償わせるためにか? 死ぬことだけが償うことじゃないからな」
「そうだな……おっと、確かこの後、ノルンに呼ばれていたな」
「ああ、あいつはここの防衛機関の開発の技師になったからなぁ」
「それの予算を見ると約束したのだ。しかもミネルヴァ同伴で……」
「なら早く行かないとな、あいつらは短気だから早く来いって怒るぞ、それに終わったら姫に話さないといけないこともあるしな」
「もしかして、あの事件の喧嘩の内容を話す気なのか?」
表情は彼にしては珍しく青ざめていたが、ヴァンは気にせずに話しを続けた。
「もちろん、だってねえ……あの時は貴方が死ぬかと思ったし、今も忘れられないからね。しかもどこからか手に入れた俺の皇帝暗殺計画を止めるためとはいえ、俺の目の前で毒を飲んだんだからな。まったくロックから医務室の毒がなくなったことを聞いて、解毒剤を持っていてよかったよ」
「もう、それはいいだろう……今思うと馬鹿だったよ。それに思い返せば、お前は父の暗殺を迷っていたような気もするしな」
このラグナの言葉に彼は返答をしなかった。
それから彼らは何も言わずにミネルヴァたちのところに向かったが、色々話していたせいか遅いと怒られてしまった。そして彼女は言葉を続ける。
「あの戦いの影のサポート役をないがしろにするなんて酷いじゃん」
「まあ、落ちつけよ、ミネルヴァ。玉の場所を俺たちに教えてくれたのは感謝してるさ、あれを知っていたおかげで、彼らが次に行く場所がわかって、王子をそこに飛ばしてロキのことを伝えられたんだからな」
「まあ、ヴァン君にそこまで言われちゃ、しょうがないかな。本来なら予算も遅れた罰として増やしてもらおうと思ったけど大目に見てあげるわ」
「じゃあ、予算はこれぐらいでいいよな?」
そう言ってヴァンはノルンとミネルヴァに予算を見せた。すると彼女たちはラグナの方を向いた。
「これ、どう考えても全然足りないんだけど、ラグナ王子、どういうことですか?」
「無駄な装飾をしなければこれで十分だろう」
「わかってないなぁ、装飾がないと味気ないじゃん。そういえばヴァン君、頼まれてたペンダント直ったよ」
彼女は元の形に戻したペンダントを彼に手渡す。
「ああ、ありがとう。相変わらず器用だな」
「ちゃんと装飾はほどほどにしておいたよん」
ケラケラと笑いながら彼女は言った。
「本当にありがとう」
「僕もヴァンが喜んでくれて嬉しいよ、でさぁ話しは戻るけど、予算は……」
「却下、これ以上は無理だ、他のところも予算はカツカツだ」
「まあ、それなら仕方ないけどさ」
「それじゃあ、これでいいな、まだ忙しいからから、僕らは行くからな」
「じゃあまたね」
二人は本当に忙しいのだろうその場から早歩きで離れた。
しかし彼女はもう一つ意味があることを知っている。
「ホントにラグナくんはやきもち焼きなんだから、今も昔も」
二人を見送った彼女はため息をついた。
未来のグリスはエテルノセノクにいた。
彼は疑問を聞きにここに来ていたのだ。
そして彼は初めて踏む故郷の地に落ちつかないのかそわそわしていた。
「待たせたのう、グリス」
いつものように飄々とした調子で現れたのはエトラだった。彼は椅子に座った。グリスも椅子に座ったが緊張してしまい、それをほぐそうと彼は深呼吸をしてから言葉を発した。
「は、初めてお会いします。グリスです」
しかしその努力は意味がなかったようでどもってしまった。
その動揺した様子に笑いながらエトラは肩に手を置いた。
「そんなに動揺しなくても……まあいいじゃろう、それで聞きたいこととは?」
その態度に安心したのか冷静に話し出した。
「聞きたいことは二つです、一つは過去の僕が介入したことによってこの未来が変化しました」
エトラは軽く頷いた。
「しかし、過去の僕がこの未来にしないようにした場合この未来はどうなるのでしょう?」
それに対してはあっけらかんとした様子でエトラは語った。
「どうにもならんよ、また新たな時間軸が増えるだけじゃ、そもそもここの時間軸もまた別の時間軸から生まれた可能性もあるしの」
「……それはパラレルワールドという存在ですか?」
「まあ、そうじゃな、あそこでああすれば……という規模が大きいせいで生まれる可能性のある世界のことじゃ」
「わかりました、これで安心しました、過去の僕が過去を変えても、ここは存在するのですね」
――まあ、それもある意味、酷かもしれんがのう。
と彼は心の中だけで呟いた。
「それでもう一つは?」
「この世界でのいや、二人の中の僕の存在はどうなったのでしょうか?」
彼は若干悩んでから、言いにくそうに喋った。
「君の代わりの存在にすり替わっておる」
「……本来僕がいた記憶は別人がいた記憶になっているということですね」
「そうじゃな、そしてすり替わった存在は死んでいることになっている。それはエテルノセノクが彼らの記憶の修正をした結果じゃ」
「そうですか……」
彼の言葉は寂しそうだった。
「さて、話しは終わりかな?」
彼は立ち上がった、グリスはそれにつられて立ち上がる。
「さあ、外で待っている二人をこれ以上待たせてはいけないよ
「二人?」
彼はそう言われて、扉を開けるとそこにいたのはセレスとロッシュだった。
見つかったことが照れ臭かったのか、少しだけ彼らは視線をずらしていた。
「どうしてここに?」
「貴方がここに行くと聞いて心配で……」
「まだ病み上がりだしさ」
その言葉に記憶が戻ったのかと錯覚したが、彼らは元々そういう人たちだったと思い直した。
「心配かけてごめんね?」
彼が謝ると彼らは頬笑んだ。
「まったくだ」
「さあ帰りましょう? それに案内したいところがあるのです」
「へえ、どこですか?」
「私たちの親友の墓にです」
「先の戦いで死んでしまってね」
そう悲しげに呟いた。その表情にグリスは胸が痛かった。
彼らはそれに気がつかずに話しを進める。
そしてその表情には先ほどの悲しさは見られなかった。
「それに彼に伝えたいことができたからね。それには君にも来てほしいんだよ」
その言葉にグリスはこれが記憶の修正のせいだと思っていたが、寂しそうな表情を浮かべた。
だがすぐに笑顔になってエトラにお礼と別れの挨拶をした。
エトラはそれに対して、またなと、だけ返した。
そして彼らはエテルノセノクを後にして、リアンゲールへ向かった。
エトラは彼に幸があるようにと再び祈ったのである。
そして彼らは無事リアンゲールに戻り、目的地である墓についた。
彼らはその墓に線香をあげた。
「貴方に伝えたいことがあってここにきました」
彼女はいつかのアルドの言葉を話し始めた。
そしてそれが終わると彼女は寂しそうに呟いた。
「これは貴方の父君の言葉です。本当は直接言えればよかったのですが……」
その表情にグリスは苦しそうに呟いた。
「……伝わっていると思いますよ」
「ありがとう、貴方は優しいですね」
その言葉に彼は口を閉ざし、帰ろうとしたが呼び止められてしまった。
「まだ、帰んなよ、お前をこいつに紹介してないんだから」
「どういうこと?」
「どういうことって、お前を親友に紹介しようと思ってきたんだからさ」
「僕のこと、友人として紹介してくれるの?」
「何言っているんだよ? 俺たち、もう友人だろう?」
「ロッシュ……」
彼はもう一度ロッシュに友人だと思われたことは嬉しかった、だがやはり複雑な気分だった。
そして彼は墓前で彼を紹介した。
「さあ、紹介するぜこいつは俺の新しい友人の……」
ロッシュは彼のことを紹介し終わると、墓前で一礼をして、彼らは墓から離れた。
「さあ、言いたいことも言えたから、戻りましょうか、大臣がきっと怒っているでしょうしね」
「違いねぇや、さくっと帰りますか」
そう言って彼らは話しながら歩き始めた。
そして城が見えた時、グリスは二人に向かって、この言葉を言ってしまった。
「……ただいま」
その一言に驚きながらも、彼らもこう返した。
「おかえりなさい」
その言葉に表情に彼はまた同じような絆が築くことができる。
そう感じ、二人に見えないようにグリスは涙を流した。
そしてこの想いは後に叶うのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これにて本編は修了ですが本編でかけなかった間の話しを書きたいと思っているので
まだ完結にしておりません。
ただ、ここまでは書き終わっているのを手直したしたものなのでわりと早く更新できましたが
番外編とか間の話しはだいぶ時間がかかると思いますのでその点ご両所うください。