第14章 過去と未来と現在と
グリスが目を覚ますと辺り一面が白く輝いていた。
「ここは、玉の中? やばい早くここから出ないと、まだ何も解決策を見つけてないのに、このままじゃ罪のない人たちがたくさん死んでしまう」
何の解決策もないまま、ここに来てしまったことに彼はかなり焦っていた。
すると彼のことを嘲笑うかのように少年が現われた。
「ねえ辛くない? 誰かのためにしか行動しないなんてさ」
「君は誰だい?」
「僕のことはいいのさ、君に聞いているのさ」
「……人は一人じゃ生きられないよ、誰かと共に生きているのだから、だから誰かのために行動するのは別に悪くないよ」
彼は少しだけ少年の言葉を不審に思いながらも答えた。その答えに少年は特に表情を変えなかったがグリスに近づく。
「そう? それならさ、人がどんなに身勝手か教えてあげるよ」
少年が手をかざすと辺りが暗転して場面が変わった。
「ここはどこ?」
彼が見た景色はどこか懐かしさを感じる場所だった。
それだけでグリスは何かを感じた。これは直感だったが彼はそうだと確信していた。
「もしかして、ここは昔のエテルノセノク?」
そしてそれが真実だと確信するために改めて辺りを見渡すと確信する。
ここはエテルノセノクだということに。
そしてここである女性を目にした。
彼女は生気がまるで感じられない女性だったが、彼には見覚えがあった。
それは写真でしか見たことがなかったグリスの母親だった。
「どうしてここに? いや、それよりもどうして死んでいるよう目をしているのさ」
その問いに答えたのは少年だった。少年は淡々と語った。
「彼女は最愛の人たちをリアンゲール帝国に奪われたのさ、君と夫をね」
「どういうこと?」
「わからないかい? 君の父は濡れ衣を被せられて死んだ、そして君と母親は危険分子の家族として捕らえられそうになり、君らは逃げた。だが、君だけは捕まってしまい隔離され監視された。そして彼女だけ長のの力で逃げ切れて君と彼女は離れ離れになってしまった。そのショックで壊れてしまった。さらに悪いことに事件が起きたんだ」
その時、誰かが近づいているのがわかった。それはグリスが見たことのある人だった。
「おじさん……」
それはエテルノセノクで彼の母親のことを教えてくれたあの男性だった。
そしてその男性の目は何か強い光が漂っていた。
「この国の掟では外部の者と結ばれた場合、国からを出ていくのが掟だ。だから君は掟に従い出ていき、そして二度とこの地に足を踏み入れてはならなくなったのに、どうして戻ってくることができた? お前が長の娘だがらか? 似たような感じで追い出された、私の妹はもう二度とこの地を踏めなかった、それなのになぜだ」
その言葉に彼女は答えず、ただ光がない目で宙を見ていた。
それに苛立ったのか彼は近くにあった壺を彼女の頭めがけて振り落とし、彼女はその場に倒れた。
そして彼女はその虚ろな目から一筋涙をこぼしグリスたちの名前を呟くと緩やかに目を閉じた。
その一連の動作に彼は驚き、そして目を見開いた。
「あれは嘘だったの……おじさんはどうして僕に近づいたのさ」
「あのおじさんは許しがほしかったのさ、だけど本当のことが言えずにかなりの嘘を君に伝えることで自分が許された気になったのさ」
「……そんなの身勝手だよ、戻ってきたのは母さんだけのせいじゃないのに、それなのに母さんを殺すなんて……」
「そんなもんさ、人なんて身勝手で勝手で、自分の都合が悪いことには目を覆い、嫌なことは全部、他人のせいにする、そんな脆く醜い生き物さ」
「嘘だ、嘘だ、そんな人たちばかりじゃないよ」
「どうかな、お前がそう言っても心は違うことを感じているだろ?」
そう言って少年はまた彼の頭の上に手をかざす。すると彼の頭の中に映像が流れ込む。
――人は醜く汚い……そして身勝手で都合の悪いことを消すそんな存在。
そんな様々な思いが彼の中で駆けめぐる。
それでも彼は頭を振り、その思いを拒否するが、また別の記憶が頭に流れる。
そして次に彼の頭の中に流れたのは親しい人たちの憎悪だった。
――あいつがお兄ちゃんを殺した。
――どうして黙っていたんだよ、セルマ師匠……。
――姉さんが死ななきゃならなかった理由なんてあるわけないのに、どうして死んだのさ。自分の息子を残してまで。
――ああ世界が憎い、みんなが憎いでも一番憎いのは自分自身だ。
――辛い、辛い、死にたい。
――死にたくない、まだ生きていたい。
そして父親の処刑、セレスの兄、ラグナ王子刺傷事件、ロッシュの母親の自殺、ノルンの事件、身近な人たちの負の思考、感情が次々と頭の中に流されてしまったせいか、グリスはその場で膝をついてしまった。そして最後に誰かの悲しい呟きが聞こえた。
――タスケテ……。
この呟きの後、少年は楽しそうにグリスに話しかけてきた。
「わかったでしょ? 人は身勝手だって。これでついに君もあちらに行けるね」
少年はケラケラと笑いながら、腹を抱えた。
グリスは小さく息を吐きながら、一筋の涙をこぼした。
そして頭を抱えながら大声で叫んだ。
「辛い、辛い……どうしてみんなこんなに苦しむの? どうして僕の両親は死んだの……世の中は理不尽だ、そうか、そうだよ。だったら変えてやる、変えてやるんだ……そしてこの世界に復讐してやる」
その言葉を言って彼はそこで立ち止まった。
そして何かがわかったのか、悟ったような表情で少年の方に向いた。
「ああ、わかったよ、僕がああなってしまったのはエテルノセノクに今までの起きたことを見せられたからなんだね。そして世界を壊して復讐をしてから、僕と同じような感情にならないように世界を作り直して、幸せな人を増やそうとしたんだね、だけどやり方を間違えた、間違えたんだね、僕は」
「君は気づいちゃったか、自分の間違いにさ」
「だって僕とあいつは同じだもの、ただ道がずれただけの僕だから、だからこそ僕は気づいたのさ、自分の間違いにね。それに……」
「それに?」
少年は首を傾げる、その動作は年相応だった。
それに少しだけグリスは笑った。
「それに、僕の悲鳴が、助けを呼ぶ声が聞こえたの、だからかな?」
「そうかい、でも人間の身勝手さはわかっただろ? それでも他人を助けたいかい?」
「助けたいさ、人を助けたいという気持ちに理由なんているの? たとえ、人が身勝手だとしても」
「機械化した人も?」
「もちろんさ、だって彼らだってどんな形であれ生きているもの」
「彼らが望んでああなったのに。そうさ、彼らは自分で機械化を選んだんだ、もはや彼らは生きてないのに、それなのに彼らを見殺しにする気はないのかい? 君がそれで苦しむ理由なんてあるのかい?」
「理由なんてないさ、僕がそうしたい」
その言葉に彼はため息をつきながら頭を抱えた。
「……君らは優しすぎるよ、だからこそ、ああなってしまったんだね」
その言葉にグリスの胸に刺さったが、それでも彼は少年の目をまっすぐ見た。
その時、少年のまとう空気が変わった。
「でも、だからこそ私たちは君らを助けたかったんだよ、あの剣の呪縛からね」
「それはどういうことなの?」
少年は柔和に笑いながら彼の正面に立った。
「私はあの剣の分身の玉の意識の一つだよ」
それを聞いて、グリスは黙って彼を見つめた。
「……あの剣は元々聖剣だった。しかしある時を境に人々の負の感情を蓄積し始めた……解放するには扱える者、エテルノセノクの血をくむものがその剣を癒さなければならなかった。しかしエテルノセノクの住人はずっと外界との交流を絶っていたいた。だからエテルノセノクの住民は気がつかなかった、あんなに負の感情が蓄積されていたことに」
グリスは緊張した。これから語られることは、自身の未来を見たことで見当はついていたがやはり怖かったのだ。
「あの聖剣の負の感情を癒しきるには君は器が足りなかった。そして君が初任務の時にあの剣に触ったことにより蓄積されていた負の感情は解き放たれて、エテルノセノクは癒された。だが君が取り込まれてしまい、自我を失ってしまって、力が欲しいと願ってしまったことで生まれたのがこの未来なんだ」
その言葉にやはりショックが隠せなかったが、何とか彼は話しを続けた。
「でもどうしてそれがわかるの?」
「分身だからだ。だから離れていても負の力を常に感じていた、だがある時からその負の力を感じなくなった。その理由は負の力を君が癒して、エテルノセノクを苦しみから解放してくれたとわかった。だが君が自我を失った。それを知った私たちは君を救うために君たちに力を貸すことにしたのだよ」
彼はでも、まあ、そんなに簡単に力を渡すなんてことはできないから手荒くなっちゃったけどとつけ足した。
「そうなんだ……僕がここに呼ばれたのは君たちがやったことなの?」
「そうだ、私たちが君を呼んだ、彼を止めるにはそれが一番いいと思ったからだ」
「……」
グリスは何も言葉が出なかった。
それを気にしながら玉の分身は話しを続ける。
「さあ話しを戻そう、第一の試練はクリアだ、君は真実を知り、君自身の気持ちを理解した。今度はまた別の事実だ」
そういうと少年は指をならした。そして辺りは静寂に包まれる。
そして急に人の気配が感じた。そこにいたのは縛られて立っている人だった。
それはグリスの父アルドだった。
そして彼の行く道の先には大きなギロチンがたたずんでいた。
「さあ、あそこまで歩け。あそこが貴様の墓場だ」
そう言われ彼は潔くそこに向かった。
それを見ていたグリスは止めたくて叫ぼうとしたが声が出ず。
動こうとしたがまったく動けなかった。
――お父さん、行っちゃダメだ。
そんな心の声は届くことはなく、彼は進んだ、そして台の前に到着すると台の上に首を置いた。
そして彼の頭上にギロチンが落とされ、首をはねるというその瞬間、ギロチンが止まった。
そのことに疑問に感じたのかアルドはその場を見渡した。
「……どうして、止まったの? まさか」
「まあ、まさかだよ、アルド隊長」
「どうして君にこの魔法が使えるのだ!」
彼にしては珍しく声を荒げて叫んだ。叫んだ先にいたのはヴァンだった。
「まあ、この魔法は貴方の一族の秘伝魔法ですから驚かれるのも無理はないでしょう」
彼はかなり疲弊しているようで、息が多少乱れていた。
「実は私もかなり特殊な魔法が扱えるのですよ、一度触った相手の魔法をコピー魔法です。しかも何回も使えるというお得な魔法ですよ」
「その魔法で僕のタイム・キープをコピーしたのか」
「そうですね。しかしこの魔法は時を止められるのですが、少し使っただけで大変な労力ですよ」
「それは君がそれに耐えられる身体をしてないからだよ……この魔法はだから僕の家計にしか使えないんんだよ、君のそのコピー魔法と同じくね」
「そんなものですかね、まあいいでしょう、隊長ここから逃げますよ」
「逃げてどうする……僕が逃げたら誰かが代わりに殺される、それとも誰かを人柱にでもさせろと?」
その言葉は現実なるだろうと感じているのか、ヴァンもそれについては悲しそうな表情を浮かべた。
「そうなるでしょう、あいつならばね、でも方法はあります。貴方の生命力で分身を創るのです。それを処刑してしまえば、ばれません」
アルドは少しだけ思案する素振りを見せてから半信半疑ながらヴァンに聞いてきた。
「そんなことができるのか?」
「はい、できます。ただし分身は一日ぐらいしか持ちませんが、でもそれで十分でしょう」
「僕に選択権はあるのかい?」
「もちろん、ありますよ。貴方を助けるのは個人的な理由ですから」
「なるほどね、なら僕はそれに乗るとしよう」
それを聞くとヴァンは意外そうな表情で呟いた。
「……死を覚悟していたと聞いていたので、乗らないかと思いましたよ」
「そうだね、確かに死ぬ覚悟は少しだけしたよ。だからと言って、生きれる道があるのに選ばないわけがない。それに僕はやり残したことがあるんだ」
「そうですか、安心しましたよ、あなたが人であることを」
それについて彼は何も言わず、ヴァンを促した。
「……それではやりますよ」
ヴァンは目をつむり、手を前に出すと彼らの目の前に、アルドそっくりな人形が現われた。
「なかなかすごい魔法だね」
「誉めないでください、ただの猿真似なんですから」
「立派な魔法だよ」
そう言って彼はヴァンの頭を撫でた。彼はそれについて何も言わなかった。
それから彼は今出てきた人形を彼がいた場所まで持っていき、そこに置いた。
「これでいいだろう、さっ、隊長、行きましょう」
そう言って彼はある方向を指差した、その方向にあったのは転送用の魔法陣だった。
そして二人が魔法陣に消えた時、再び時は動き出し、アルドの首が飛んだ。
その一連の流れを見ていたグリスですら吐き気をもよおした。
あれが人形だとしても、とても気持ちが悪かった。
長い時の後、また視界が暗転し、場面が最初のところに戻った、そして少年は呟く。
「辛いだろうけど、これが真実だよ、君の父は生きている、君らは捨てられたんだ」
グリスは口元を押えながら吐き気に耐えていた。
「……そうかもしれない。でも、父はやり残したことがあると言っていた。それを残したまま僕らに会いにくかったのかもしれない。だから……」
その真剣な表情に彼は言いにくそうに口を開いた。
「……彼がやり残したことは狂った皇帝を助けることだ、彼は家族よりも幼馴染を選んだんだ」
その場は凍りついた。それを聞いた今のグリスの顔に表情は何もなかった。
「そうか、そうなんだね。父さんはその人を救うために生き残ることを選択したのか、だったら僕らは父さんにとって何だったのだろうか?」
「それはやはりわからない、人の気持は他人にはわからないのだから、でも、実の親でもこんなに身勝手なんだ。血の繋がらない者たちなら、なおさら身勝手だよ」
「そうかもしれないね」
「だったら君も身勝手に生きてもいいじゃないか」
「……僕は十分に身勝手だよ。他人のことを考えずに、自分がしたいことをしようとしているのだから」
その言葉に少年は彼の言う身勝手はフォアクレアールの人を死なせたくないという思いだと感じた。
「そうか、君は君と違う身勝手をすることを選ぶのだね。うん、それでいいよ、君はそれでね」
そして少年はロキの身勝手な行動を思い出し、悲哀に満ちた涙がぽつりと落ちた。
しかし少年の表情はほとんど変わっていなかった。
「次は今がこうなった瞬間を見せるよ」
そう言って彼はまたグリスにとある光景を見せたのであった。
リアンゲール城の玉座の前に王、アポロとセレスとロッシュと彼の師匠らしき老人がいた。
そしてグリスが蒼く光る剣を王の前にひざまずいて差し出していた。
王がそれを受け取ろうとしたその瞬間、グリスは立ち上がり、蒼く光る剣を王に突き立て深く刺した。
そして王は血を吐き、なぜか微笑みながら生き絶えた。
その光景を見ていた城内は騒然とした。この状況で驚きの表情を浮かべていたのはセレスとロッシュだった。それを見てグリスは薄ら笑いを浮かべた。
「僕がこんなことをするのが意外かい? だけどね、君らが僕に秘密にしていたことに比べたら意外でも何でもないさ。ねぇ、師匠。どんな気分だった? 僕たちを欺くために死んだことにして、僕らを遠ざけて、そんなに僕らが邪魔だったのかい?」
「どうしてそれを知っているの、いやそれよりも、違う、違うわ。そんなことないわ!」
彼女は取り乱して叫んだ。
それに対してどうでもよさげに今度はロッシュの方を見た。
「それにね。ロッシュ、君は気づいていたでしょう? もっと前からさ、なのにねえ、どうして教えてくれなかったの?」
その言葉に彼は硬直し、何も言えなかった。それは紛れもない事実だったからだ。
その様子に彼は鼻で笑ってから呟いた。
「ああ、やはり人は醜い、自分の身しか案じない愚かな生き物だね。だから僕は世界を壊して僕の理想郷を創る、だから手始めに、ここのみんなは消えてしまえ」
「グリス、やめろ」
そう叫んだが彼は止まらずにエテルノセノクを掲げた、すると辺りが光輝いた。
「この光は……」
その言葉は続かなかった、その言葉を発したロッシュはロックに突き飛ばされたからである。
それに驚いた彼は少し混乱しながらロックに尋ねた。
「お、親父、どうしてここに……」
「とある人の予知でこの事件ことを聞いたんです。だから僕は君らを助けるために来たんだよ。さあ、貴方はセレス姫を連れて逃げなさい、これがあれば一回ぐらいはこの魔法に耐えられるから」
彼がロッシュに渡したのは直径が二センチ程度の水晶だった。
彼はそれを握り締めて、すぐ傍にいたセレスの手を取った。
「それじゃあ、親父はどうするんだよ」
彼はそれに答えずに微笑んだ。そして光が辺りを包む。
ロッシュは叫んだが、彼の叫びは声にならず光に消えた。
それは一瞬で起きたので何が起きたかわからなかったが、グリスは人を消したのだ。
そして残ったのはロッシュとセレスだけだった。グリスはもうその場にいなかった。
ロッシュはこの空間を眺めて苦しそうに顔を歪めたが、気丈にもセレスに笑顔を見せて、安心させようとしたがセレスは首を振った。その彼女の頬には涙が伝っていた。
「姫様……」
「私たちはこれからどうすればいいか、それもわからないし、彼に最愛の人を奪われた……」
「でも、どうしてあいつはあんなことになったんだよ? ほんの数時間前は普通だったのに」
「それは私にもわかりません。でも、二人で彼を助けましょう。でも、今は悲しむ時間にしましょう。そうでもしないと心の整理なんてつきません」
そう言って彼らは涙を流した、いなくなった最愛の人のために彼らは泣き続けた。
その光景にグリスはただ悲痛な表情を浮かべていた。
それらを見終わると彼の前には少年が立っていた。彼はグリスにこう言い放った。
「これが君の犯した罪だよ、わかったかい?」
彼は頷き、唇を噛みしめた。
「次で最後だ、君に選択を与えよう」
その言葉にグリスは背筋を伸ばし、深呼吸をする。
「我が力を取るか、あの国の平穏を取るのか、どちらを選ぶ? 選ばなければどちらにしても国は滅ぶ」
グリスの手は手汗で濡れていた。
その手を彼は握り締めながら、息を整えた。
「……僕は、第三の選択を選ぶよ」
「その選択は?」
「僕のすべての魔力を君のような玉にして、君の代わりにして、彼らのエネルギー源にするよ、それならきっと罪のない人は死なない」
「わずかな可能性にかけるのか、しかし今できることができなくなるかもしれない、それでいいのかい?」
「いいよ、これが僕の身勝手な思いを叶えるための方法なのだからさ。それに僕が奪ったみんなの帰るべき場所を取り戻すための力なんだ。それに玉がない間だけ僕の魔力を貸すだけだから」
「本当に身勝手だな、でもいいよ、私の力、君に授けよう」
彼の身体から銀色に光る玉が出てきた、
そしてそれと交換するように彼の手に乗せられたのは一振りの剣だった。
しかもこの形状に見覚えがあった。蒼く光る刃にやたらとシンプルな柄。
この剣はエテルノセノクと似ていたのだ。
「これはまさかエテルノセノク?」
「そう、それは君が選び、手に入れた力だ」
「これが僕の力……」
「グリス、私たちが、ふがいなくてごめんね、私たちはこうならないために生まれたのに」
彼はそう言ったがグリスが何かを言う前にすぐに次の言葉を発した。
「さあ、帰りなよ、君を待っている人がいるからさ、帰ったら、ちゃんとお礼を言いなよ?」
その言葉の意味を問いかける前に彼は自身の世界に戻された。
読んでいただきありがとうございます。