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時間の騎士様  作者: 灯
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第12章 裏切りと真実と

若干、BL臭いです、ので気を付けてください



ロキはリアンゲール城に戻った時に、小さくため息をついた。

城に入った瞬間、彼の首に魔銃を突きつけられた。


「やれやれ、反逆のつもりか? ヴァン」

「そのつもりさ」

「やれやれ、忙しいものだな」


呆れたようにため息を吐くと、すぐにしゃがみ、足払いをヴァンにかけ、ヴァンはその場で倒れた。


「しかしたわいないな」

「そうでもないさ」


彼はそう呟くとロキの身体は違和感に襲われた。


「ああ、なるほど、お前もか」


彼の身体には短剣が刺さっていた。その短剣で彼を刺したのは、仮面の男、ユダだった。

しかし刺したところからは血が一滴も出ていない。

それに驚きはしたが、彼は短剣を握る手を緩めなかった。


「なっ……どうして血が出ない」

「僕はエテルノセノクを手に入れ、力を得る時に身体を対価に渡した、だから今の僕は魂だけの存在なんだ。だから僕は死なないのだよ」

「そんなことがあるのかよ……」


ヴァンは明らかに落胆した表情を浮かべていた。

それに対して少し楽しそうにロキは話した。


「ああ、あるのさ」


そしてロキはユダが握っている短剣を彼の手の上から握った。


「さて、反逆の罪は重いぞ、ユダ」


ロキは手をユダに向けてかざした、その手には熱が凝縮されていた。

そしてその塊はユダの方に飛んだ。

しかしそれをかばうようにヴァンが無理やり二人の間に入った。    


そしてその凝縮された塊は爆発し、辺りは黒い煙に包まれた、そこに立っていたのはロキ一人だった。

そして二人は床に倒れていた。

そこでロキはしゃがみ、ヴァンに話しかける。


「ねぇ、ヴァン、君はどうして僕に反逆したの? こっちに転がっている死んだはずのラグナ王子は聞かなくてもわかるけどさ」


その言葉にヴァンは乾いた笑いをこぼした。


「……あはは、ばれていたのかよ」

「最初からね、それよりもどうしてさ、君の憎むべき相手である奴の血を引いている彼の手助けをしようとする?」


その質問にヴァンは床に倒れながらも目に力を込めて呟いた。


「気づいたからだ、王子が奴の血を引いているからって王子には何の罪もないってことに……罪はあいつにしかねぇ!それに俺にとっては王子は大切な存在なんだ」

「……あーあ、つまんない回答だよ」


ロキは少しだけ不機嫌そうに口を尖らせた。


「つまんないから死んでね」


ロキは剣を振りかざして床に倒れている二人に振り落とした。


「そんなに簡単に死ぬ気はねぇよ」


彼は床に手を置き、その床は光輝き、さらに辺りに風が吹いた時、魔法陣が出現した。


「この魔法は、簡易的だが移動魔法か」


そして二人はその場から消えた。


「どこに行ったのだ? あいつらは」


彼は辺りを見渡して音を立てながら彼らを探し始めた。









飛んだ二人が目を覚ますと、その場所はそんなに遠くなく、まだ城の中だった。


「あいたた、さすがに目的地を設定しないで、飛ぶのは身体に負担が大きいなぁ」

「大丈夫か?」

「大丈夫、大丈夫」


 その言葉に安心したのか、ユダもといリアンゲール第一王子ラグナは辺りを見渡した。


「しかし、ここはどこだ? 城の中のようだが見たことがない場所だ」

「王子でも見たことないところがあるんですね……」

「当たり前だ、この城は広いからな、それに十数年しかいない城だ」


それもそうかと軽く納得すると、とりあえずどんな部屋なのかを確認するためにヴァンは辺りを見渡して、壁にかかっている絵を見た瞬間に絶句した。


「この絵はそんな、まさか、まさか」


その絵の女性はセレスやセレスの母親に似ていたが髪の色が違った、彼女たちの髪色はとても綺麗な黒だった。しかしこの絵の女性はヴァンと同じく亜麻色の髪をしていた。


「ヴァン、この少しセティに似ている女性に見覚えがあるのか?」

「俺の姉さんだよ……」


彼は絵から目を離さずにラグナに語る。


「お前の姉さんだと? なぜ、その方の絵がここにあるのだ?」

「そんなの俺が聞きたいさ」


そして情報を得るためにまた見渡すと、古ぼけた机の上に日記らしいものと小さいアメジストがはめられている古ぼけたペンダントが置いてあった。

ヴァンたちはこの古ぼけたペンダントに見覚えがあった。


「このペンダントは姉さんの……」


それがここにあることに驚いた。

このペンダントは彼が逮捕された時に取り上げられ、今まで見つけられなかったものだった。


「よかったな見つかって、ずっと探していたよな、でも大丈夫か?」


ラグナは彼に気づかい声をかけた。彼はそれに頷いた。

それに安心した彼は日記に目を向け、何か情報を得るために読んでみると彼は驚いた。


「この字は父の字だ」


そう言って彼は日記を読み進めた。しばらくすると読み終わったのか顔を上げて呟いた。


「……そういうことか、わかったよヴァン。ここにすべて書いてある、お前の姉さんの事にお前に異様に執着していた理由もわかる」


彼は日記をヴァンに渡した、彼はそれを読み進めた。





二月十四日 今日、僕はルーシアという女性と出会った、彼女はこの家に女中として雇われた女性だ。彼女はとてもチャーミングな人だった。

彼女のことを考えると胸が苦しくなる。

これはきっと恋なんだろう。


四月九日 僕自身の力で稼いで手に入れたアメジストのペンダントを彼女に贈った。

嬉しそうな表情で受け取ってくれた。やはり僕は彼女が愛おしい。


六月七日 彼女は僕の愛を受け入れてくれた。

それだけでかなり幸せだ。

願うならこの幸せが続くことを祈る。


九月二十九日 彼女にプロポーズをした、彼女は受けてくれた。僕は彼女を幸せにすると誓った。そして幼馴染のレイチェルとアルドに話したら嬉しそうに祝福してくれた。

しかし両親に報告したら、ものすごく激怒した、

ただの女中と結婚なんぞ許さんと言われた。

さらに両親は貴族の面子が汚れるとまで言った。

ただの成り上がり貴族の成り金のくせに。


十月十日 両親が勝手に婚約を結んだ。相手はこの国の姫、エオス姫だ。どうやら国の財産難を救うために相手から持ちかけてきたらしい、くだらない。

僕は明日、ルーシアとヴァン君と一緒に逃げようと思う。

今を逃したらきっと僕らは離されてしまうだろうから。


十月十一日 どうしてか逃げることがばれていた、なぜだ……。

そしてルーシアは僕の目の前で殺された。僕の家族にとっては邪魔だったのだろう。

僕はヴァン君の憎むような瞳とルーシア恐怖にゆがむあの目はきっと死ぬまで忘れないだろう。


そして僕の家族はヴァン君も殺そうとした。

僕はその場から彼を逃がすことはできたが彼は無事に逃げきれただろうか。

今、僕が軟禁されてなかったら探しに行けるのに。すまない、ルーシア、ヴァン君。

そうだこれも綴っておきたい。僕は本当に彼女を愛していた。

誰も信じないかもしれないがね。



そこで一旦日記は終わっていたがものすごく間が空いた後、再び日記が始まっていた。


七月七日

あれから何年たったかわからないが今、自分の前にはあのヴァン君がいる。

どうやら騎士団に入団しに来たらしい、そして無事に入団できたみたいだった。

きっと、自分を殺しに来たんだろう。

でもそれでもまた会えたのは嬉しいし無事にここまで成長した姿を見れてよかった。

自分が彼に殺されるまでは彼の事を守って行こう、何より彼は私が愛した彼女の忘れ形見なのだから。



また少し間が空いて


十二月十二日

街で彼女にそっくりな女性を見つけた

別人だとはわかっているでも目が離せなかった。

そこからほどなくして恋に落ちた。

いや、代わりにしてしまったというべきかもしれない。




三月三日

彼女は子を身籠った

だから結婚して、彼女は王妃になった



三月七日

子供が生まれた

可愛い女の子だった。

しかし彼女は僕の子を産んですぐに死んでしまった。

ああ僕のまわりの人間はどうして死んでしまうのか

僕が悪いのか?

それとも……


四月十五日

ヴァン君をラグナ王子の護衛にした。

とても危険な任務だとは思っているでも彼自身が望んだことだった

どうして、彼は自分ではなくラグナ王子の護衛を望んだのだろうか?


日付はもう書いていない。


ああ、そうか

彼が望んだのは自分にダメージを負わせるためにラグナ王子を殺すことだったんだ

でも自分にはまったくダメージはないよ

それどころか嬉しい誤算だ、僕の大事な大事な娘、セレスに自分の王位を継がせることができる



でも彼はいなくなってしまった。

死んだわけじゃない

たぶん、ラグナ王子と共にどこかにいってしまったのだろう

どうしてだろうか、僕は自分が死ぬまでは彼を守ると決めたのに

彼には全くといって伝わらない、だから生きてとらえるように言ったのに

生きてとらえることができなかったらしい。

何も言わぬ死体になったと報告を受けた。

ああ、僕の大切な大切な彼が死ぬなんて信じられない。



どれほど時間が経っただろうか、彼はまた僕の前に戻ってきた。

生きていたいただけでも嬉しかったのに

閉じ込めておける理由をぶら下げて。

死ぬほど狂喜した。

だから僕は彼を閉じ込めた。

これで僕が死ぬまでは見守っていける

いや、僕が死んでも彼自身が死ぬまでは安泰だ



そこで完璧に日記は終わっている。





「これは真実かよ……いや嘘だ、嘘だ」


日記を読み終わったヴァンは手から日記を落としてしまった。

その時、日記に挟まっていただろう手紙が落ちた。

それに気がついたラグナはそれを拾い、宛名を見ると黙ってヴァンに手渡した。

その字に彼は驚き、手紙の封を切った。


その内容はこうだった。


ヴァンへ

私は幸せだった。恐いぐらいに……。

でも幸せでいいんだと彼は言ってくれた。

だから私は彼と共に生きたいと思ったの。

でも何かあるかもしれないから貴方に手紙を残すわ。縁起が悪いって? 大丈夫よ。

だって私に何かあっても、きっと彼が貴方のことを守ってくれるわ。

約束したのだからね、だから貴方もあの人のことよろしくね。

                            貴方の姉のルーシアより


この日記と手紙の内容を知って、ラグナは複雑そうに呟いた。



「二人は想い合っていたのだな、だから大切な人の忘れ形見である、お前に執着したんだな」

「騙されてこれを書いただけかもしれないだろ」

「しっかりと真実を見ろ。お前の大切な姉さんの形見のペンダントが、ここにあるのが何よりの証拠だろ。これはお前が投獄された時に奪われたものだろう? 普通だったらこんな場所に保管なんてしない、だからこれは父にとって大切なものだったんだよ」


その言葉にようやく彼は信じたのか、ショックでその場に膝をついた。


「だったら俺が恨んでいたのには意味なんてないのかよ、俺の人生は何だったんだ」

「……そんな寂しことを言うな、私はお前と一緒にいれて、楽しかったし、嬉しかったんだよ、だからお前の人生を否定しないでくれ」

「ラグナ王子」


 そして、この言葉を発した後、二人は黙って立っていたが物音が聞こえたので辺りを見渡した。すると人影を発見した。そいつは先ほどとまったく表情を変えていないロキだった。


「ああ、麗しき友情だねぇ、だけど、くだらない……」


二人はロキのその声に身構え、後ろに下がった。


「いつだって真実は残酷だ、僕も、君もね。僕らは呪われているのかもね」


ロキは同情するように見つめた、しかしヴァンはそれを跳ね返すような目つきだった。


「……確かに真実は残酷かもしれない、だけど真実だ」


彼はやるせない表情を浮かべた、しかし反対にロキは優しく微笑んだ。

その表情は今まで見たことがないほど穏やかだった。


「もし、その真実を捻曲げられるとしたらどうする、過去に行って、君の姉を助ければ君は今よりも幸福になるさ」


その問いに彼は感情的に答える。


「そうしたら王子の存在が危うくなる可能性があるだろうが、そんなことさせるか、俺は王子の事が大切なんだ。どんなことがあっても俺は王子と共にいたいんだ」

「ふーん、そんなに大事なんだ、彼のことがさ。自分の幸せよりも」


そう言うと彼は剣を抜き、突然二人に切りかかった。


「みんなさ、簡単に壊れないよね。僕なんか簡単にコワレタのにさ」


彼はケタケタ笑いながら、剣を振っていた。

ヴァンはこの状況に焦っていた、彼は普通の攻撃では倒せないからだ、だから、彼はある選択をする。


「な、何をするのだ、ヴァン」


彼はラグナを突き飛ばした。突き飛ばした先にあったのはロキと話しをしている最中に、ヴァンが作った移動魔法用の魔法陣だった。


「王子はあいつのことを彼らに伝えてください……」

「ならば、お前も一緒に」


ラグナは手を伸ばすが、彼は決して手を取らなかった。

その間にもラグナの身体は移動魔法陣に飲み込まれていく。


「頼んだ、ラグナ」


彼は鋭い目つきでラグナを圧倒して、言葉を封じた。

それでもラグナは何か言おうとしたがそれも叶わず。彼が言い終わる前に彼はここから消えた。

そしてヴァンは腰につけていた魔銃を抜いてから構えて、ロキに向けた。


「さあ、始めようか、二人きりの大舞台だ」

「移動魔法を使ったのにくだらない時間稼ぎか?」

「くだらなくないさ、俺の時間稼ぎは新たな未来への可能性を繋ぐためのものだからな


彼はグリスたちにあいつのことが伝わるようにと祈り、そしてラグナの無事も祈ってから、ロキと対峙した。




ラグナが飛ばされた先は辺り一面が歯車や機械仕掛けの家が立ち並ぶ町だった。


「ここはまさか機械都市……」


ラグナはそう呟き、その場で一人だけ安全な場所に飛ばされたショックで膝をついた。

どのくらいそうしていたかわからないが彼は立ち上がり、何か思い出したのかとある場所に向かった。

彼らが来るであろう場所、その場所に。そして彼らが早く来ることを……そして彼が無事であってほしいと祈りながら。



読んでいただきありがとうございました。

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