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3-説

 玉座(仮)の前まで移動し、床に腰を下ろして話を聞く


 改めて魔王(仮)をまじまじと観察する。


 黒いマント、黒い服、髪色も黒、瞳の色も黒。

 服装に関してはそういう知識に疎い僕でも高価なものであることは理解できた。


「まず私のことだが」


 魔王(仮)は本当は黒王(こくおう)というらしい。

 黒の王だから黒王。シンプルで覚えやすいね。

 黒の色法というのは貴重らしくて、そもそも黒の概念持ちが産まれても忌み子発見デストロイされてしまうんだそうな。


「ほーん」

「ここまでいいな?」

「説明好きなんですね」

「久々の知的生命体との会話だ、心も躍るさ」

「……勇者パーティーも知的生命体だろう」

「うむ、しかし一言二言交わしていきなり殺しに掛かられるというのも悲しいものがある」

「すまん」

「大丈夫だ」


 で、色法の概念はそれぞれ赤青緑から成る数値で表すことが……RGB値じゃねぇか、適当すぎんだろ。


「我等黒は(0,0,0)だ」

「個人差では無く」

「ああ、通常の数値だと必ずどれかが100以上になっているが黒の数値は全てが0で固定だ」

「ということは赤青緑だけでなく」

「黒以外の全ての色法が使用不可能だ」


 消費精神力は使用者のイメージに左右される。

 そいつがこの色法は発動するのが大変だ、と認識が固定されてしまえばその色法は基本的に必要精神力が大きくなる、これは逆もまた然りだ。


「この世界は概念とイメージで全てが構成されているということだ」

「というか今更だけど、僕がこの世界の人間じゃないってこと分かるの?」


 いやまあ学ラン着てるんだけども。


「珍しくはないからな、先の戦士もこの世界の人間ではない」

「出現はどのくらいの頻度で?」

「完全にランダムだ」

「……神は気まぐれ」


 この世界では『色都(しきと)』と呼ばれる巨大な都市が三つ存在する。

 そう、三幻色の中心都市だ。

 赤都「オルファリウス」

 青都「レーゼルノ」

 緑都「ムルファ」

 それぞれがそれぞれの信仰する神の名前から取られている……が、あまり気にしなくていい。信仰するもしないも自由だ。


「色都同士の交流は?」

「盛んだ、というか閉鎖された空間で腐っていては何も出来ないだろう」


 不思議そうに首を傾げられてしまった。

 ですってよ皆さん。


「違いない」


 それぞれの都市がそれぞれの色の聖地的な役割を持つ。

 まあ色都ではあまり他の色はいい目で見られないが、それでも差別されるということは無い。

 と、言うものの。

 実際単色専門の色使いは多くない。


「色使い?」

「色法を使う者の総称だ」


 単色の色使いは正直に言えば弱い。一部の例外を除いてはな。

 赤の王イェル・レントゥラスタ。

 青の皇帝ブラウ・ツェルフ。

 緑の長グラゥヌ。

 まあ無いだろうが、この三人に挑まれたら逃げろ。

 特にグラゥヌ。アイツは生物の領域にはいない。化物だ。

 緑単色は色使いの中でも最弱と言われるが、唯一無二の例外が奴だ。


「有名なのか?」

「それぞれが各色都の統括者だ」

「理解した」


 そしてこの場所だが、各色都を線で繋いで出来る三角系の中点に当たる部分に存在する。

 黒都アーテム、別名中心都市。

 色都交易の中継都市として栄える。

 また、黒の概念持ちを引き取る場所でもある。

 こうは言うが黒の色使いは差別されているわけでは無い。

 精々が酔っ払いに絡まれるくらいだ、安心しろ。


「……おかしくないか?」

「何がだ」

「何故忌み子扱いされる?」

「黒色だからだ」

「……まさかとは思うが、不気味だからって理由じゃないよなぁ?」


 黒王はにっこりと微笑んだ。


「アホか」

「アホばっかりだ」


 顔に手を当てて嘆息する。


「まあ忌み子扱いも今では消えかかっているから安心したまえ」


「アンタの力か?」


「身も蓋もなく言うならば、そうだ」

「難しいことは何もしていない、ここで産まれた黒の概念持ち以外を皆殺しにしただけだ」


 一瞬の静寂


「ハイリスクハイリターンの極みだな」

「ノーリスクさ、ただそれからしばらくして討伐隊が送り込まれてきたがな」

「今日みたいのか」

「そうだ」


 ……何とも言えない話である。


「とりあえずはこんなところだ」

「いや一番大切な所を説明していないじゃないか」

「常識教えろよ」


 黒王はものすごく嫌そうな顔をした。


 基本的に長さで使用する単位はメルド、重さはガラム、体積はリッタル。

 一応色都に限らず全世界で共通の兌換紙幣と硬貨が使用されている。

 単位はファーブ、地域でフェイブ、フェルブ等呼び方は変化するが全て同じだ。

 時間は24時間制を採用している。


「言語に関しては、まあ、必要は無い」

「言語という概念ね……便利だな、概念」

「そのおかげでこうして会話出来るというわけだ」


 で、


「名前は?」

「お前から言え」

「偉そうな」

「実際偉いからな」

「僕は榎本(えのもと)、榎本善仁(よしひと)です」

「エノモト……榎本善仁」


 発音をすぐに訂正できるとは、中々やるじゃないか。


「……」


 ……


「いや言えよ」


「冗談だ、詰まらない奴だな」

「ヴェルトゥス・アルメリア、アルで良い」


「よろしく」

「さっきはありがとう」


 互いに頭を下げた


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