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1-始

 目に光が戻る。

 ……こう言うと死んでいたみたいだが死んでいない。僕以外は死んでたけど。

 光に目が慣れる数秒の間。

 とりあえず、向こうでの僕の扱いってどうなるんだろうなぁ、行方不明かな。

 呑気に考える。

 ぼんやりとした視界が急速に開けていく。


 まず目に飛び込んできたのは神殿。


 神殿みたい、いや見たことないけど。いや知識としては知っているけど。

 なんというか、清々しいまでの神殿なのだ。

 理性とかその他諸々全て吹き飛ばして神殿。

 全ての人間がこの建築物を認識し、何に見える?と聞かれるまでもなく「神殿」と答えるだろう。

 下手したらこれが神殿という概念の塊ですって言われても信じちゃいそうだ。

 危ないんじゃないのこれ。今の時代はなんかいろいろめんどくさいらしいから。宗教的なあれこれとか、あといろいろ。


 ……というかお隣の三人組が非常にやかましい。

 きゃーきゃーぎゃいぎゃいと呑気なものだ。

 下手したら海の底に呼ばれて詰みとかいう可能性も無きにしも非ずだったんだぞ。


「なあ、アンタ」


 その中の一人、熱血そうな優男が声をかけてきた。


「ん?」

「アンタ、何か知ってるか?」

「生憎だが何も知らない、君達と立ち位置は何も変わらない」

「そうか、そうか……」


 分かりやすく落胆するなよ、失礼だぞ。

 というかいきなり連れてきておいて挨拶も説明も何も無しとは、ゆとり世代を舐めるな、説明書と攻略本を要求する。


 ぐるりと周囲を見回すが神殿以外に目立った、というか完全に更地だ。というか荒地だ。

 建築物どころか植物すら無い。


 これはアレか、入口で突っ立てないでさっさと入ってこいよという事か。


 ということで神殿内部に突撃してやろうと一歩を踏み出しかけたところで、誰かが出てきた。


 ちょっとつんのめったじゃないか、恥ずかしいぞ。


 というわけで五人目の登場人物へと視線を向ける。


 これまたひと目で神とわかる。

 いろいろすっとばして神様。

 男か女か分からない、言われてみれば男にも女にも見える。

 というか若干発光してて見えない。

 唯一認識できる腰から生えた羽は微動だにせず、神は宙に浮いている。


 その神様はひと呼吸おき。


 語り始めると思った。


 脳内に直接イメージをぶち込まれた。


 吐き気、脳味噌そのものを無理矢理シェイクしたかのような衝撃。

 チカチカする。耳鳴りもする。

 コイツ頭おかしいんじゃねぇの?

 まあイメージそのものは理解できた。

 簡単に言うと【お前らを必要としてるみたいだから呼ばせてもらいました、拒否権は無いよ】

 ダメージが抜けないまま荒れ狂う脳味噌を必死に固定しつつ。


 随分職務に熱心な神様ですこと、元いた場所の神は糞野郎でな。


 隣の三人組はどうなってるかと見てみると、口に手を当てながらもなんかすごくやる気まんまんで。

 君達で勝手にやってろください僕は勝手にしますんで。


 何も言わずにそのまま次のイメージをブチ込んできた。


 今度のは特にダメージとかは無くすんなりと頭に入ってきた。軽い吐き気はするが。

 最初からこうしろよと言いたくなった。


【でもお前ら雑魚だからすごい特典やるよ】


 ほほう


【好きな色、赤青緑で言え】


 いきなりだな。ちょっと考える時間をくれ。


「赤、が好きだな、なんつーか、やってやるぜ!って感じになる」


「ウチは青かな、綺麗じゃん?」


「わ、私は緑ですかね、落ち着いていて、好きです…」


 なんで君達はそうホイホイと答えちゃうのか。

 というかノータイムだしキャラにぴったりだしと突っ込みどころ満載だ。やったね。


 しばしの沈黙の後、す、と神様もどきが視線を俺に向けた。


 これはあれか、無言の早くしろアピールか


 これで俺だけ特典抜きとかは嫌なので真面目に考えてみよう。

 とりあえず赤青緑はアイツ等と被るので却下として……うーむ。


「好きな色……強いて言えば黒、かな」


「いや三色って言ってたじゃん……」


 優男が何か言っているがスルー。


【……ふーん】


 それだけのために脳内にぶち込まないでよ。殺意がわくわく。


【じゃあお前ら今から飛ばすから、準備できたら言って】


「おい、大丈夫か?」

「誰に言ってんの?」

「わ、私は大丈夫です……」


 早いなぁ決断。

 神が指を鳴らす。

 三人組の足元に魔法陣のような物が出現した。

 それは円から三角、四角へと絶え間なく形を変化させる。

 ほぉ……。


「うおぉ!?」

「ちょっ、何よコレ!」

「ひ、ひぃ……」


 陣から発せられた光に包まれ、三人組の姿が見えなくなる。

 光が消える頃には何も無くなっていた。

 人の存在した痕跡さえも。


「さて」

【……】

「聞きたいことがいくつかある」

「まず一つ、色の役割を教えろ」

【君達の概念を決定した】

「概念?」

【……イメージ流したほうが早いな】

「ちょ」


 流し込まれた。


 吐き気と戦いながらまとめてみよう。


 僕が送られる予定の世界では概念ですべてが構築されている。

 木を木であると認識し続ける限り、それは木で有り続けるのだ。

 つまるところ概念は絶対であり不変であり普遍である。

 概念そのものをいじくれるのは神とかのレベルじゃないと無理。


 色について

 色は向こうでの魔法の役割を果たしている。

 赤青緑の三幻色(さんげんしょく)がベースでその者の色を司る概念によって使える色の魔法、『色法(しきほう)』が変化する。

 その属性以外が使えなくなるというわけでは無いが、使用できる色法がその色に偏ってしまう。


 ……あのさぁ。


「これ言わないとか職務放棄にも程があるだろう、流石に三人組に同情したぞ」

【送る時に自動でインプットされるので心配ない】

「さいですか」

【準備出来た?】

「いや、その色法とやらを練習させてもらいますよ」

【あ、そう、構わんよ】

「あ、そうだ、もう一つ聞きたかったんだけど」

「三幻色以外にも色あるよね?」

【あるよ】

「軽いなおい……中間色だろ?あと黒」

【よくわかったな】

「適当すぎるわ……」


 というか言葉が足りない。

 三色から選べでは無く、三色で出来た色を選べって言うべきじゃない?違う?


「ちなみに黒はどんな魔法なの?」

【大規模破壊から即死までなんでもあるよ】

「物騒だな……この世界のMPとかステータスの概念」

【ない、MP的なのはお前の精神力に依存するよ】

「使いすぎるとどうなる?」

【精神的な疲労が肉体にも影響を及ぼして倒れるよ】

「色法の使い方」

【念じる】

「……終わり!?」

【使おうとすると頭の中に浮かび上がる感じ】

「はぁ……」


 試しに念じる。

 色法!

 …………………………浮かんだ。


 遅いなおい。

 浮かんだ瞬間にどういう効果なのかとかどの程度の耐久力なのかとかも一緒に浮かんだ。

 便利だな。ご都合主義万歳。


「鍛えれば早くなる?」

【なる】


 というか最初の色法は各色で固定されてるのか。

 考えてみればそうだな。


 じゃ鍛えてから行きましょうかね。

 おっとその前に。


「色法の増やし方は?」

【自然と、お前の生き方とかどんな風に生きていくのかでどんどん分岐していく】


 へぇ……。生き方……ね。


 まあとりあえず鍛えますかね……。


 体感時間で二時間ほどかけ、使いたい時にすぐに使えるレベルにはなった。

 軽く念じればほぼノータイムで「初動」が可能だ。


「じゃ、行くわ」

【了解】


 足元に魔法陣。

 柄にもなく少しワクワクしている自分が居る。

 この世界の人間達は僕を失望させないでくれるだろうか。


 ……グッバイクソッタレな世界。


 光に包まれる。


次回から異世界です

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