表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

0-起

 学校からの帰り道、ふと自分を振り返る。


 なかなかに素晴らしい人生だと思う。

 2歳か3歳の頃に言葉を拙いながらも理解した。

 若干遅いかなと両親を焦らせるものの小学校に入学してからその才を表し、神童と呼ばれた。

 ゴッドチャイルドですって。頭ん中どうなってるんでしょうね。羨ましいわね。

 切り開いて見てみればいいと思うよ、あるのは脳味噌だろうけど。


 小学校六年生の時に人生について考えてみた。

 まず人間ってどうして生きているんだろう、これは簡単だ、種の存続のためだ。簡単だな。

 じゃあ人間ってどうして精神が発達してんの?

 これがわからなかった、明らかに必要の無い機能をわざわざ取り付ける意味が理解できなかった。

 コンピュータで言い換えればあえてバグらせるようなもの。

 いやあえてバグを残すのは理解できなくは無い、それが有益になる場合もあるのだから。

 しかしこれを種の繁栄という観点で見たところ明らかに必要が無い。

 分からなかったので親に聞いてみた。

「それはね、みんなを思いやるためなのよ」

「みんなを思いやる心はとっても大事なことなの」

「だからあなたも優しい子になってね」

 ……?

 は?

 んなこた聞いてねぇよ質問の意味を理解しろよ阿呆ぶち殺すぞと思った。

 だけど言うと色々とまずいので心の中でおもいきり軽蔑するだけにしておいた。


 中学生になり、人生を諦めた。

 ここでの諦めたは楽しむとか謳歌するとかいうこと。

 もうなんかどうでもよくなった。

 致命的なまでに社会とか集団とかそういった諸々と合わなかった。

 テレビとかネットとか、社会に繋がっている媒体から流れてくる情報を見ても、自分と関係のあることとは到底思えなくなっていた。

 ああ、でも読書は好きだったな。

 古典文学からライトノベルまで、物語と名のつくものは片っ端から読み込んだ。

 現実逃避としての手段としては最適だったのだ。

 御伽噺すら僕にとっては現実逃避の手段にしか過ぎなかった。

 もちろん笑われた。

 当たり前だ、僕だって笑い飛ばすわ。

 考えてもみろ、学校で一番頭のいいあの子が何を思ったのかある日絵本を読み始めた。

 頭の病気を疑うね、というかノータイムで病気認定する。

 別に悪いと言っているわけでは無い、事実俺が読んでいたからだ。

 ただ場所は考えようね。教室で読んじゃダメだね。


 というような理由で虐めが始まった。

 あのくらいの年頃であれば理由なんてどうでもいいのかもしれない。

 この件で教師はだいぶ苦労しただろう。

 だが同時に喜びもしただろう。

 苦労は、まあ虐めが起こっていること。

 喜びはクラスがこれまでにないほど団結しているということだ。一人を除いて。

 やったじゃないですか先生!一人を切ればみんなハッピーですよ!

 切られた。

 許すまじ!復讐してやる!とは思わなかった。いやマジで。

 ただやられっぱなしは嫌です。


 校舎裏に連れて行かれてリンチを受けたときは最初に殴ってきたやつをひたすら殴った。

 他の奴等が僕を殴ろうが蹴ろうがひたすら一人を狙った。

 最終的にマウント取って石握りこんで殴り続けた。病院送りだって!やったね!

 これ繰り返してたら虐めがなくなった。どうしたんだろうね、フシギダネ。


 あ、もちろん私はフェミニストですからね、安心してください、きちんと女子も殴りましたよ。


 というわけでそれが災いして学力相応の高等学校には入学できたものの、腫れ物扱いだった。解せぬ。

 教師陣もおそるおそるだったのが悲しかった。うそだけど。

 孤立したものの別段不便だとは思わなかった。

 特に何か不自由になるということも無かった。

 ただ思ったよりも二人組になれ命令が少なかったのが拍子抜けだった。つまらないですわ。

 ひとりの時間が増えたのがいけなかった。

 考え始めてしまった。


 今回考えたのは他でもない自分の存在意義についてだ。

 今の世界に僕って必要ですかね?

 分からなかったので僕に聞いてみた。

「必要ありません」

 即答されて悲しかった。


 いらないのであれば自殺でもしてみましょうかね。

 

 両親の功績は二つある。

 僕を産んだことと、僕を育てたことだ。


 両親の罪は二つある

 僕を産んだことと、僕を育てたことだ。


 と、考えていたのが約30秒程前。

 現在の僕は目の前で起こるであろうことに思いを馳せている。

 暴走トラックが信号を無視して高校生へ突っ込んでいくのが見えます。

 高校生は三人いますね、男子一人に女子二人、ハーレムですね。

 私は歩道橋の上にいますのでその光景がよく見えますね。

 危ないよぉ轢かれちゃうよぉ。

 うーん、あのスピードだと避けるのは難しいだろうなぁ。

 僕一回見てみたかったんですよ、人間の死体ってやつを。


 そろそろ激突です。


 あ、高校生三人組気付きました、まああの距離じゃぁ走っても無理ですね。


 激突。


 うわぁお。


 あれだね、腹部にボールが当たった時の音に近いね。

 どむんというかどずんというか。

 想像していたよりも血は出ていないようですね。

 あーでも悲惨です、骨が見えてますよ、骨が。

 脚が逆方向にというか……あ、違うわあれ、腰が捻れて逆向いてるんだ。180度。ははは、笑えてくるわ。

 しかもタイヤにいろいろこびりついてるね。

 頭髪と皮膚かな?あれは。


 野次馬根性丸出しで中々お目にかかれない人間の死体を観察していたところ。


 最近の人間の死体は光るのね……は?


 死体が発光し始めた


 口をあんぐり開けながら呆然としていると、僕の体も発光しているのに気がついた。


 嘘だろ?


 ありえるんですか。

 いやまぁ嬉しいんですけど。


 とりあえずこの時点で大体の予想はついていて、どうするかを考え始めていた。


 が、その前に、お約束として、


 人生に悲観していたら交通事故の目撃者になって挙げ句の果てに巻き込まれて異世界へ行っちゃうみたいです。


 ……多分駄作だろうな。


 そんなことを無駄に冷静な頭で考えながら、僕の視界は暗転した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ