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BLACK・LIKE  作者: 須方三城
第一章 彼女をツンデレと呼ぶには、少々ツンが強過ぎる。
2/16

01,黒斑さんは中年。

 俺もあの頃は若かったなぁ。


 ……なんて、死んでも言いたくない。

 そう思っている、または思っていた方は多いのでは無いだろうか。


 しかし、悲しいかな。

 人間は理不尽に抗う事はできても、老いと言う必定的現象に抗う事は出来ない。


 黒斑くろむら 右之定みぎのじょうと言う男もまた、自身の老いをジワジワと実感し始めている人間の一人だ。


「うーおー……朝が辛ぇー……そして割と寒い……」


 季節は四月初旬。

 ほんのりと残る肌寒さが際立つ曇天の朝の事。


 築四〇年越えのボロアパートの一室。手狭なキッチン有ワンルーム。

 かなりの年季と少々の亀裂が入った姿見の前に立ち、黒斑は身支度の最終調整を始めていた。


 頭皮に優しい自然由来のワックスで黒い前髪をアップし、約一〇年前にセルフ成人祝いとして断腸の思いで購入したお値段五桁の黒いスポーツサングラスをスチャっと装着。

 個人的にダンディズムに溢れていると思ってる自慢の口髭と顎髭は、不潔さを感じさせない程度に処理。

 黒いシャツの襟元を黒いネクタイで緩めに締め、黒い背広のジャケットを羽織る。

 黒革のベルトは腰より少し上に調整、黒いスラックスの裾折れを直し、足裏に違和感があったので黒いソックスを一度脱いで履き直す。


「で、あとはこいつを……」


 煙を嗜む趣味は無いが、パッケージがオシャレ過ぎて衝動的に購入した『ブラック・ボルト』と言う銘柄のタバコを胸ポケットに収め、完了だ。

 このタバコのパッケージ、見栄えの良さに加え、手持ち無沙汰な時に掌で遊ばせるには丁度良い大きさなのだ。黒斑がこれを持ち歩くのは、学生が「特に授業とかで使う予定は無いけど何か指にフィットして回しやすいだけのペン」を筆箱に入れとくのと同じ感覚である。


「っし」


 全身黒で完全包囲。「黒が似合う男はカッコイイ」と言う、至極単純明快な理由で『黒』を愛好する二九歳四ヶ月独身男性、黒斑右之定の正装フォーマルである。


 黒斑は『聖十字せいじゅうじ警察隊』、通称エスケーと呼ばれる少々特殊な組織に所属している。

 エスケーの捜査官は基本的に私服勤務が許容されているので、彼のカラスみたいな服装も問題にはならない。捜査官の中には「お前はお笑い芸人か」と言いたくなる様な真っ黄色のシャツで出勤してくる奴もいるくらいだ。


「あーあー……二〇前半は飲み会明け睡眠時間二時間でもピンピンシャキっとしてたってのに……」


 歳を取るってヤだねぇ…とつぶやきかけて、黒斑はハッと己の口を塞ぐ。

 そんな事を無意識に言ってしまう様になったら、もう若者には戻れない。


 俺はまだ二〇代。ギリギリだけど二〇代。だからまだヤング。諦めるな若さ。


 と言う訳で、


「うおっしゃぁぁぁ! 全然イケるわこれぇぇ! 俺まだ若いからぁぁぁぁ…ぁあぁぁ……」


 ……うん、やっぱ無理。

 もうぶっちゃけ、おじさんだもの。いくら心は抵抗しても、体は正直だ。


 おじさんと言う生き物に、五時帰りの七時起きで始まる一日はキッツい。


「……あーもう。やっぱあの時、キャリア組になっとくべきだったかぁ……?」


 黒斑は昔、少しばかり優秀な若者だった。

 その気になれば、今よりずっと楽な道も選べた。


 忙しい事は忙しいが、肉体労働はほとんど無く、定時出勤(いり)の定時退勤(あがり)が基本。

 それが黒斑の職場のキャリア組。


 もし、キャリア組だったら。

 昨日の黒斑の様に、外回りからの職場に戻って残業処理なんぞせずに飲み会に行けて、常識的時間には満足して切り上げる事もできただろう。

 今日の黒斑の様に、上司から突然のお呼び出し(ラブコール)で叩き起こされ、いつもより一時間早出なんて事もそうそう無いだろう。


 更に言えば、給料だって今より断然多かったはずだ。

 きっと、新築の大型マンションの上層階とかに住んで、成金趣向な姿見の前で六桁台お値段なサングラスをスチャっとする事も出来たかも知れない。


「やれやれだ……」


 何故、黒斑は今のノンキャリアの道を選んでしまったのか。

 その理由は、本人が一番よく知っている。


 まぁ、あの時の自分の選択を間違っていたとは決して思わないが、それとは関係無しに、溜息ってのは出るモンで。

 間違った、と反省はしてなくても、だ。やっぱりちょっと惜しかったかな、なんて多少の後悔はしちゃう訳で。

 当時はそんな後悔すらしないと思っていたのに。


「……あの頃は若かったねぇ、俺も………………あっ」


 言っちゃった。







 黒斑の暮らす甲間こうま町は、全国的に見て魔物の出現率がかなり高い方だ。

 故に、一つの市町村としては珍しく、甲間町には聖十字警察隊の本署が一つ、支署が三つもある。


 と言っても、エスケーの財源だって無限と言う訳では無い。

 甲間町署の全てに潤沢に予算が行き渡っているかと言うと…正直、答えはノーだ。


 追い打つ様に、最近ではエスケー全体に予算削減の気運が高まっている節があり、これからも財政難は悪化していく事が予想される。


 どうしてそんな事になっているかと言うと、「魔物が確認され始めた頃は大慌ててドバドバ金つぎ込んじゃったけど、今冷静に考えたらこんな要らんく無い?」的なノリの話だ。


 まぁ、実際その通り。

 確かに、エスケーの創立初期は、未知の敵へ対抗するための試行錯誤に呆れるほどの研究資金が必要だった事は事実だ。

 更に、対魔物の装備や知識は不十分で、魔物との戦闘の度に人的被害は大きかった。その補填にも予算がかなり割かれていたのだ。


 しかし、現代ではそれらの状況は完全に一変している。

 魔物に対して絶大な効果を誇る『聖具パニテム』の安定生産基盤が確立し、末端の人員にまで充分な供給率を誇る。そして当然、生産が安定化すれば効率化が始まるモノだ。聖具パニテムは日々大幅なコストダウンが進んでいる。

 人的被害に関しても、聖具パニテムの普及で魔物との戦闘は常にエスケー優位に進むため、格段に減った。


 お上から「もうそんな予算要らんやろおのれら」と言われたら、エスケー関係者は頷くしか無い訳で。


(『第三支署ウチ』も大分寂しくなったモンだ)


 そんな事を思いながら、黒斑は手ぶらで暗い署内の廊下を歩く。


 甲間町第三支署。

 黒斑が配属されている支署であり、施設は二階建て。他の署と比べると少し小ぢんまりした印象を受ける。

 この署の設置計画が出たちょっと後にエスケーの予算削減がジワジワ始まったため、従来の署舎より小規模になってしまったと聞いている。


 まぁ、それでもだ。

 黒斑が配属されたての頃は、もう少し明るかったと言うか、活気が感じられる場所だったと思う。


 少なくとも、廊下のあちこちに『絶対節電』と『超絶節水』を悲痛に訴えるポスター…しかも使用済コピー紙の裏面再利用してる奴に手書きのが貼られてる、なんて事は無かった。

 このポスターの内容と量と見てくれから伝わる必死さが、第三支署の財政事情を熱烈に物語っている。


 おかげで、署内で窓に面した場所は、夕方までお日様の光だけが頼りだ。

 今日の様に中途半端に曇った朝は、やたら署内が暗く、余計に寂しく感じてしまう。


 ここまでやる必要があるのか、と常々皆思っている事だろう。


「……ま、予算削減も地域の皆さんのため、ってかぁ……」


 超常の怪物を颯爽と退治する正義のヒーロー……と気取ってみても、結局の所エスケーの捜査官は公務員。公僕だ。

 予算削減も立派な公共への奉仕である。世知辛さは否めないが、仕方無い。

 給与削減の話まで来たら流石に「うぐっ」となるが、これくらいは我慢しようと黒斑は思う。


「さて、と……」


 黒斑が立ち止まったドアに付けられたプレートには『地域安全課』の文字。

 黒斑が所属している課だ。


 この課の業務は実にシンプル。『魔物を退治して地域の安全を守る』。

 エスケーの本分、花形と言うべき課である。


「おはざーっす」


 雑な調子の挨拶と共に、黒斑はドアノブを捻ってドアを開けた。


「あり? 誰もいねぇの?」


 挨拶の甲斐も無く、事務所内には誰もいなかった。

 廊下同様に薄暗い空間が、静かに黒斑を出迎える。


 室内にあるモノは、五:五で二群に分けられた一〇のデスクと、その合間に設置された大型冷蔵庫とコーヒースタンドが一台ずつ。以上。

 事務所内の床の実に七割近くが剥き出しの状態、つまりデッドスペースだ。


 いつ見ても、スペースが有り余ってるなぁ、と黒斑は心中で溜息。


 黒斑が捜査官になったばかりの頃、この第三支署地域安全課には五つの捜査グループがあった。

 しかし、人件費削減ための他署への人事異動が相次ぎ、現在ではたったの二グループしか稼働していない。

 異動になった人々のデスクも、他署の備品に回されてしまった。


 そうして、この何とも寂しいスッカスカのオフィスが出来上がった訳だ。


「……つぅか灰堂かいどうさんよぉ……朝っぱらから呼び出しといていないってどう言う了見だ?」


 まだ本来の業務開始時間より一時間も早い。そんな時間に呼び出しといて、この仕打ちはいかがなモノか。


 まぁ、あの人のマイペースは今に始まった事じゃないか、と黒斑は諦める。

 そもそも、班員達に「班長に用があるなら罠を仕掛けて捕らえるのが確実」と言う認識を持たれる程の曲者上司だ。期待する方が浅はかである。


 仕方無い。

 黒斑はひとまず、もそもそとジャケットを脱ぎながら自分のデスクに向かった。


 五つずつに固められ、二グループに分けられたデスク群。

 黒斑の所属する『灰堂班』のデスク群は、入口から見て右側だ。

 デスク配置は一番奥に班長である灰堂聖務(せいむ)警部のデスクが設置されており、そこから少し距離を開け、黒斑たち班員四名のデスクが向かい合わせる形で並んでいる。


 黒斑のデスクは右列の入口側。

 その卓上には黒のクリアファイルが一冊だけ斜めに収まった黒のブックスタンドと、黒のボールペンが何本か立てられた寂しい黒いペン立てのみ。

 事務作業デスクワークとの疎遠っぷりが垣間見える。


 黒斑は椅子を引くと、その背もたれに脱いだジャケットをかけ、勢いよく腰を下ろした。


「あー、よっこいしょぉ、っと……」


 二日酔いと寝不足で全体的に気だるい。背もたれに体重を投げ出すと、なんだか無性に心地が良い。


「眠い……寝ちまおうかなぁ、もう」


 いや、流石にそりゃ不味いか、と黒斑は欠伸を噛み殺し、のっそりと立ち上がった。

 熱いコーヒーを流し込んで自分を騙そう、そう思い立ち、コーヒースタンドへ向かう。


 丁度その時だった。


「失礼します」


 第一印象は、落ち着きがあって気が強そう。

 そんな声と共に、まさしくその声に相応しい外見の女性が入室した。


「………………」


 え、誰この子? と黒斑の頭上に?が浮かぶ。


 全体的に若さを感じる。黒斑の見立てでは一〇代でもおかしくない女性だ。

 思わず感心してしまう程に綺麗な色合いの黒髪を後方で一房にまとめており、キリッとしつつも女性らしさの残る顔立ちに黒フレームの眼鏡を着用。

 その身を包む衣類・装飾品類は眼鏡のフレーム同様に全て黒一色。


 色の好みに関しては非常に気が合いそうだ、と思うが、やはり黒斑はその女性を知らない。

 一瞬、見覚えがある様な気もしたが……気のせいか、以前に街中ですれ違ったとかだろう。


「………………」


 ポカーンとする黒斑に対して、入室してきた女性は何かに驚いた様に目を剥いていた。が、女性はすぐに表情に落ち着きを取り戻し、静かに口を開く。


「……おはようございます。黒斑聖務巡査長」

「お、おはよう……って、え? 俺の事、知ってんの?」

「……その反応……あぁ、成程。まぁ、それはそうですよね」

「????」


 黒斑を置いて、何か勝手に納得した様子の女性。

 一瞬だけ少し寂し気な雰囲気が滲んだ気がしたが、それはすぐに消えた。


「えぇと……」

黒志摩くろしま左弥さやと申します。先日、聖務捜査官として採用され、この甲間町第三支署地域安全課に配属になりました。階級は『四等聖務巡査』です」

「先日採用されたって……ああ、そういやもうそんな時期か」


 ここ二・三年程、第三支署地域安全課に新人なんて入らなかったから、四月がそう言う時期だと言う感覚がすっかり抜け落ちていた。


「ここに来たって事は、灰堂さんか青那賀せながさんの班に?」

「灰堂聖務警部と言う人物に話を聞く様に、と言われました」


 と言う事は、灰堂班に配属される予定なのだろう。

 つまり、黒斑の後輩だ。


「俺も灰堂さんの班なんだ。よろしくね、黒志摩ちゃん」


 と言う訳で、黒斑は今後の良好な関係を願って、握手を目的とした右手を差し出す。


「………………よろしく、お願い致します」


 一瞬、謎の間を開けて、黒志摩は握手に応じた。


「……ん?」


 黒志摩の右手の感触に、黒斑は一瞬違和感を覚えた。

 そしてすぐに「ああ、そりゃそうか」と納得。


「……なんですか」

「あ、ん? いや、別に…」

「女性らしさの欠如した、無骨な手だと思いましたか」


 黒志摩の言うとおり、その手はやたらに皮が厚く、堅い感触だった。

 それに、力強い。着衣の上から見れば女性らしいボディラインに収まっちゃいるが、黒志摩の筋量は相当なモノだろうと伺える。多分、腹筋とか太腿周りとかもバッキバキだろう。


「まぁ、女の子としちゃ気になる所なんだろうけど…聖務学校アカデミアを出たばっかじゃ、男女問わずこんなモンでしょ」


 あの学校の訓練課程は、いつか死人が出てもおかしくないレベルだ。

 もう訓練と言うか、改造だ。身体にメスを入れないだけでコンセプトは同一の所にあると思う。

 黒斑の同期でも、入学当初のアダ名が『細いナナフシ』だった奴が、二年の課程を経た卒業時には『ガチンコゴリラ』と呼ばれる具合に仕上がっていた。


 つい最近までそんな訓練を受けていたのだから、掌や足の裏の皮が分厚くなり、全体的に筋肉質になってしまうのも仕方無い。


「素直に言っていただいて構いません。どうせ握るなら、もっと柔らかく、女子力に満ちた手が良かったと」

「いや、だから別に……」

「いえ、黒斑聖務巡査長の様な中年男性なら絶対そう思っているはずです」

「中年!? 黒志摩ちゃん今、中年って言った!?」

「中年」

「うおぉうピックアップでリピート!? ま、まま、待って黒志摩ちゃん、俺まだ二九! 二〇代だよ!?」

「存じてます。土俵際いっぱいで死に体も良い所じゃないですか、見苦しい」

「見苦……ッ!?」


 え、待って。何か出会って三分未満の後輩が突然結構な毒を吐き始めたんだけど。


 黒斑は軽くパニックを起こし、舌が空回り。言葉にならなくなる。

 目を剥いて声も無く口をパクパクさせる様は、さながら酸素を求める金魚。縁日で掬われる奴。


 黒斑は黒志摩の手を握ったまま、完全に硬直してしまう。


 そんな時、ノブが回ってドアが開いた。


「いやー、呼びつけといて遅れちゃったー。ごめんにー、黒斑っちー。ちょっと早めに着いちゃったから車で寝ちゃってたよー」


 ふんわりした声と共に入室して来たのは、上下ダボダボの灰色スウェット衣類に身を包んだ華奢な女性。そのボサボサの長髪は「スウェットに合わせて染めたのか?」と疑いたくなるほどに見事な灰色。

 外見から察する事が出来る年齢は二〇中盤から後半、と言った所か。


「おりょ? おーおー! 君が黒志摩っち? 美人ですなーぐふふー。しかも早速黒斑っちと仲良くしてる様で良きかなー」


 寝巻きとも思える格好の灰髪の女性は、軽快なステップで歩を進め、黒斑と握手している黒志摩の元へ近づいて来た。


「……状況から察するに、あなたが……」

「はぁーい。灰堂かいどう 芽茱めぐみー。今日から黒志摩っちの上司ですよー」

「……………………」

「いやぁー、初対面の子は皆良い反応してくれますなー。信じられなーいって。私もダラけ甲斐がありますぜよー」


 ヘラヘラと笑いながら、灰堂は自分よりも背が高い黒志摩の頭をペチペチ叩く。


 甲間町第三支署地域安全課灰堂班班長、灰堂芽茱。

 鬼の様なマイペースぶりに定評があり、放浪させたら右に出る者はいない。仕事着と寝巻きの境界線を豪快に取り払った服選びセンスから察せる通り、奔放を極めた性格の人物だ。

 まぁ、そんなマイペースぶりの影でいつの間にかやるべき事はやっている、何気にすごい人である。


 そして、灰堂の何よりの特徴は、見た目からは想像が出来ない実年齢。

 本人がトップシークレットとしているため、その実を知る者はほとんどいないが……黒斑が新人として配属された時には既に『ノンキャリアの聖務警部補』…つまりベテランとして班を持っていた。


「……失礼しました。灰堂聖務警部、初めまして。黒志摩左弥と申します。よろしくお願い致します」

「別に良いよー。私、ご覧の通りあんま礼儀とか気にしない人ですけん。むしろグイグイ来てカマーン。ボケたらド突き合うくらいのフレンドリーさで、よろしくピース」

「……善処します」

「で、何で黒斑っちは黒志摩っちの手を握りしめて固まってるのー? あ、もしかして新人特有のゴワゴワお手手を堪能してますな! 黒斑っちのエロー! よっ、性欲魔王クロムラムーラ!」

「そう言う性癖だったのですか? クロムラムーラ性欲巡査長」

「はっ、違う! 確かにこの感触は嫌いじゃないけど違う!」


 急ぎつつも乱暴にならない様に黒志摩の手を振りほどき、黒斑は灰堂の方へ顔を向ける。


「か、灰堂さん! 聞いてくれ! 俺は今ちょっと何がなんだかよくわからん事態に見舞われて…」

「はいはい、猥談は後でねー」

「あんたと猥談なんてあんまりしねぇだろ!?」

「……たまにはするんですか」

「朝から猥談なんて元気だよねー。あ、でもブラジルは夜かー。よし来た、猥談しようか黒斑っち!」

「しないッ! 話を聞いてくれ! 何を言ってるかわからねーかも知れないが、俺は今…」

「ちなみに私は今、ブーメランパンツのモッコリの芸術的エロスに再熱中ー。昨日SNSで拾ったこの外人さんの画像とかエグいぜよー? ほらこれ」

「あぁん! 俺を無視して話を進めんといて! って、すげぇなこいつ!? マジで人間か!?」

「騒がしいですよ、見苦しい」

「ま、また見苦しいってッ……!」

「さてさて。そんな訳で私は画像漁りで忙しいからー。黒志摩っちの後の事は相方になる黒斑っちに任せるねー。署内の案内と討魔業務のアレコレの指導とか、諸々よろしくー」

「ぃや、だから……は?」


 今、灰堂はなんと言った。


「あ、それと後で総務に行って、黒志摩ちゃんのデスクもー…」

「ちょ、ちょいタンマ、灰堂さん。……相方?」

「ん? うん。黒斑っちも入りたての頃はシドっちとコンビ組んでたでしょー?」

「じ、じゃあ、つまり俺がこの子の…」

「そ。教育係兼任の相方。じゃあ、黒斑っち、先輩として、黒志摩っちの面倒をしっかり見る様に! あ、セクハラは駄目だよー? 社会的に抹殺されちゃうからねー」

「…だ、そうです。極力、健全によろしくお願い致します、黒斑聖務巡査長」

「え、いや、は? えぇえぇぇぇ……?」


 こうして、黒斑は混乱したまま、初めての新人教育の任に就く事となった。






◆黒志摩ちゃんはひっそり悦楽うふふする◆

(黒斑さん……私の手、ゴワゴワなのに、嫌いじゃないって……ふふ……ふふふふ……)

「く、黒志摩ちゃん? 何で自分の手を黙って凝視してるのかな?」

「黒斑聖務巡査長は変態性癖中年なんだな、と。汚らわしい」(ナイス性癖)

「黒志摩ちゃんッ!?」


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