第一話 母の弟が、父親
「片親なのに、しっかりして、明るい子ね」。
高校の時、付き合っていた彼の親に言われた一言。いつも心の隅に居すわり続けている。
幼い時に、父は病気で私の前から消えた。それも、あっけなく。
一人で父を看病する母。母の弟が、色々、気をつかって手伝ってくれていた。
「この人が、次のお父さんになるんだから、大丈夫」。
誰に言われたわけでもないのに、そう思っていた。無意識に思い込んだのだろう。
入院から1カ月で父は亡くなり、さらに、1カ月もたつと、親戚の姿もない。
父が世の中から消えて、2カ月後。小学校から自宅に帰る途中、ふと考えた。
「次のお父さんはいない」。外で、一人で思いっきり泣きじゃくった。死んだ時に、涙一つでなかったのに。
色々な機械を口から鼻から付けられ、親戚が集まる中、父は死んだ。隣の家に預けられていた私は、死ぬ2時間前に病院へ母と親しいおばさんに連れられた。
「多分、死んじゃうんだな。でも、母の弟がいるから大丈夫」と思っていた。
母は泣き崩れ、私に言った。
「これからは、2人で生きていこうね」。7歳の私はなんとなく、うなずくことしかできなかった。