ランチタイムミーティング(その4)
教室にたどり着いた私はまるで大理石で出来た四角錐の建造にこき使われた奴隷の如く憔悴していて心象風景ではクーデターがクレーターが出来る勢いで繰り広げられていた。もう絶対に働きたくないのにまだ授業が残っている上に放課後にも労働することが決定しているのだ。畜生。この仕打ち、一体どこに訴え出ればいいんだ。まあどこか然るべき連絡先があったとしてもその手間がもう面倒くさい。この状況に甘んじるしかない。たまには反抗することも必要だろうか。でもそれはまた今度頑張ることにしようか。
うん、それがいい。
だってもう授業を受けることは学生として当たり前のことと社会的に決まっている訳で、放課後労働は会長の中で規定事項なようで曲げるにはテコでも無理で、多分クレーン車でも不可能なんじゃないか。そんな気がする。
原理的には覆せるが、その為のエネルギーが収支に合わない。
でもなあ。やっぱり嫌なものは嫌だ。
サボろうかな。
そのつもりで屋上へ向かおうとしたが途中で担任に捕まってしまい教室に戻されてしまった。檻から脱走した動物みたいだな、私。
授業中、隣の席の楓から手紙が来た。
《どんな話したの?》
生徒会室での出来事を思い浮かべる。ユーレーだの化け物だの世界がサイケデリックになってしまったような話から系がどうのとかいう就職してない自称インテリが並べた屁理屈みたいなよく分からない話までした。
どうやって説明すりゃいいんだよそれを。
ペンを取った手が結構長い間空中で止まっていた。
《放課後に投書にあったことを調べることになった》
とりあえず書けそうなことを書いていったら自然と要約になった。
《へー。なんでゆーきなの?》
そういえばなんでだっけ。はぐらかされてしまったんだっけ?
《分かんない》
《なにそれ?》
ケラケラと笑っている楓の姿が浮かんだ。
カサリと音がなった。楓からの追送だった。
《それって今日?》
そうだよ、と書いて返しておいた。
今日なんだよな。もう。なんでだよ。
手紙のやりとりはそれっきりだった。
いつも終われ終われと思っている授業だったが今日に限って複雑な心情だった。相変わらず授業は面倒だが放課後のこともなかなか面倒そうだ。停滞も地獄、進むも地獄。幸いどちらかを選ぶ必要はない。時間とは進み続けるものだからだ。けして戻ることは出来ない。立ち止まることもまた然り。抗うことも出来ず私たちはただ時間の流れに流されることしかできないのだ。
そうして………………
放課後が来た。
第二章了




