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雲行き(その4)

 



 さて、ここにいたるまでの今日の天気の推移って一体どんな具合だったっけ? 興味の無いものはなかなか憶えられないものである。だから英単語や漢字の書き取り小テストなどあった日には憂鬱になるに違いないのだが、そのテストにも結果にも興味が無いせいか、高校に入ってからそんなものがあったのかどうかもよく分からない。どっちだっていいさそんなことは。分からない漢字なり読めない単語なりがあったら辞書を引いたらいい。そんなものが通用しないような特殊な環境に飛び込むつもりも無い私にはそれで十分だ。顎を上に向けると、とりあえず今は青空に雲が五割くらい散っている有様だった。

 高橋は当たり前の様に私の後ろをついてきた。帰れと私があしらおうものならすかさず「いえ、これも何かの縁です」とか「そんなことをおっしゃらず、私の勝手ですから」とか高い絵を売りつけようとする悪徳営業の如くしつこく食い下がってきた。そのうち私は対応に疲れ、もうどうでもいいや。来るなら勝手に好きにすれば良い。そんな捨て鉢な気分になっていた。



 ささくれた精神状態で涼しい風に吹かれながら階段を登りきると、そこは目的の場所で、すなわち地図に丸い印が入ったスポットなのだが、どういうことか深鈴先輩と楓の姿がなかった。

「あれ?」

「おや、これはどうしたことでしょう」

 高台の端の、丁度崖のすぐそばに時計台があり、それが下から見えるだけ立派なのだが、それ以外は砂場も遊具もとくに何もない変哲がないというよりは寂しい公園だった。本当に何もない。広さも学校のプールの広さ二つ分くらい。隅まで十分見渡せる。特に視界を遮るものが無くおかげで眺望だけは良いかもしれない。よって、隠れるような(そんな事をするとも思ってなかったが)場所もない。

「おかしいですねぇ。何所へ行ってしまったのでしょう。それといって行くような場所も無いと思うのですが」

 そんなことを言われても、心当たりは私にも無い。

 せいぜいあって自販機の普通の住宅街が周囲に広がっている。あえて行く場所を挙げるとすればそれは私が放心していたそばにあるコンビニくらいだ。

 そんなことがあったところで普通なら私が気がつかないなどありえないことだろう。しかし私は普通じゃなかった。放心していた私のそばを通ってコンビニに入られても気づきはしなかったかもしれない。

 だがそれも実はおかしな話だ。なぜなら道半ばの放課後探検にとくにやる気を見せていたのがあの二人なのだ。深鈴先輩は熱心だったようだし、コンビニに入り浸るとは思えない。

 しかし、じゃあ、


 じゃあなんで二人はここにいないんだろう?



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