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雲行き(その1)

 





 茶番のような出来事をを済ませてから、次の丸印に向かっていた。



 私的にははっきり茶番と言ってもいいがそういう意見はグループで三分の一でしかない。あと三分の一は真剣。残りは現状を理解していないに一票。

 次のチェックポイントは高台にあり、ここから少し歩く。

 その場所の目撃情報とは、なんと人間が集団で飛んでいたのだと言う。確か会長が見たのも空飛ぶ人間だったんじゃないだろうか。最近の流行なのかもしれない。冗談はさておき、まあゴミ袋かなんかが風で舞っていたんだろう。

 よせばいいのに、私は二人を率いてその丸印を目指していた。ほんと、帰っていいとは思っていたのだが。私がこうしなければ行けない理由など無いと分かっているのに体面的に任務を遂行してしまうのは日本人の血が災いしているからだろうか。

「楽しくなさそうだねゆーき。そうだ、歌えばきっと楽しくなるよ」

 などと言って先ほどから楓が子供の頃見ていた魔法の力に目覚めた女の子が怪人をボコるアニメのオープニング曲を口ずさんでいた。

 私が楽しくないというところはズバリ的を射たというのに、それで私が楽しくならないことまでは分からなかったか……。私はそれを見たことがなかった。朝は眠いからだ。

 先導員がやる気の無い我ら不思議放課後探検隊は大通りを進んでいた。

 そのとき、楓の歌う歌とは違うメロディが流れはじめた。

「ああ、わたしか」

 私、羽根村優希の携帯が着信を主張していた。手で後ろの二人を制しつつサブディスプレイの表示を確認した。

「…………」

 私は「それ」に愕然とした。一体何故、このタイミングでこの相手から電話が来るのか理解出来なかった。

 あまりに衝撃だったので携帯が主張を止めた。

「ありゃ、切れちゃったね」

「うん……」

 答える私の声はぼんやりしていた。いけない、動揺している。

「楓、深鈴先輩、目印の高台ってのはあそこです。見えるでしょう」

 指差す私。

「そこまで先に二人で行っててください」

「大丈夫だよ、私たち待てるよ? 電話するんでしょう?」

 顔を覗き込まれた。視界に入ってきた楓の表情は心配の割合が十割だった。

「いや、多分長くなっちゃうから。本当、先行っててよ」

「……わかった。あの高台だよね?」

 頷くと、二人は離れていった。横断歩道を渡り切った所で丁度信号が赤になった。それを見て私はいくらか安堵して息をついた。肩にかかる力が弱くなったと言っても、大本が解決しない以上暗澹は晴れないのだ。わかっている。

 それでも、コールボタンをなかなか押せない。

 まごまごしている内に、相手からまたかかってきてしまった。がなり始める携帯に心臓が止まりそうな程ショックを受けて、その事実に重ねて驚いた。

 まだ、吹っ切れてなど無い。

 そう突きつけられた気分だった。現実が辛く私に刺さる。

 意を決して、コールボタンを、押した。

「……もしもし」

 辛うじて声は震えなかった。せめてもの意地だが、かなり危なかった。


 電話の相手は母親だった。





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