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「(前略)
無人航空機(UAV、または交戦能力を持つUCAV)が開発されたのはかなり以前、発想そのものは第一次世界大戦中から、と言われているが、通称『ドローン』として一般の耳目に触れるようになったのはごく最近のことである。
もともとは軍事使用を想定したものであるが、現在では民間にも急速に用途が拡がっている。
軍事用に特化した機器の主な特徴としては、遠隔操作による対象物の偵察・攻撃が行えるという点である……(中略)……もちろんのこと民間使用の例を見ても分かるように、ドローンは操る側の意思によって行動規範や目的は大きく異なってくる。
それらを制御する人間と属する組織がどのような意思、信条、方向性を抱いているかによって、何も意識を持つことのない、自らの判断力を単に演算で求めるのみの物体が、相手にとってどのような存在になるかが決定される……(中略)……
もしも、その無機質なドローンが遥か彼方、それらに向きあわされた我々のあずかり知らぬ所に存在する『意思』によって動かされているのならば ― しかもその意思すら存在が証明できない ― そして、それらが我々を排除しようと作動を始めたのならば、
我々はどう対処すべきなのか?
(中略)……それは明らかに『敵』と呼べるのであろうが、仮にその『敵』の存在が証明できずに定義自体も特定できず、それらに向き合う方策すら見つからないといった八方ふさがりの状況に陥ったのならば、我々の行動は極めて現実的にならざるを得ない。
つまり、もっと手近な所に手近な『敵』を想定し、代償として反撃するのである。
仮に敵と認定されるものは、もちろん『味方』の内部に及ぶ場合がある。つまり、行き場のない自己防衛本能は組織の自己破壊へと向かう恐れを十分に持つ。
(後略)
」
(『近未来における終末論』より 日下部孝行)




