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心優しき狼よ、曠野を行け  作者: 柿ノ木コジロー
第一章 ― 1 ― 
11/148

10 生まれた時から狼は狼

 私たち狼は、匂いで仲間を見つけるの、アナタは今まで仲間を見つけた事がなかったの?


 そうイブに問われた時にも、きょとんとしたままだった。


「狼、って何だよ」

「そのまんま、動物の狼だよ」

「でもオレ人間なんですけど」

「私もだよ、でも狼なの」

「……なんで、いつから。いつそう決まったんだよ」急に意地悪な口調で付け足す。

「いつからさ、何年何月何日何時何分、地球が何周回ったときだよ」


 イブは、哀れなイキモノをみるような笑みを浮かべ、小指で前髪をかきあげる。


「最初からだよ、生まれた時から狼は狼なのよ」


「オレは自分が、お、狼だなんて知らないし」

 証拠は? そう問い詰められたイブは、黙ってしばらく彼をみつめていたが、そのまま立ち上がって、隣の部屋へと入っていった。


 黙って出てきて、彼の前にぺたんと尻を落として座ると、握っていた片手を彼の前に拡げて見せた。


 輪になった、金色のピアスだった。カケルの耳にあるのと同じもののようだった。


「これが?」


 カケルは、イブの表情を伺う。冗談を言っているような顔ではない、どこかおもい詰めたような目が怖い。わざと明るく言ってみる。


「これが、何? ナカマの証なのか?」


 一言も発しないままで、彼女は自分の耳にピアスをつけはじめた。目はまっすぐカケルの顔をみつめている。ピアスの金具がしっかり留まると、身体に巻きつけたバスタオルをはらりと解いて、彼女はつぶやいた。


「あれのをゆけ」


 カケルはその目に吸い込まれるよう、じっと彼女をみつめた。


 黒目がちの大きな瞳、白目は相変わらず、あおく、澄んでいる……いや、違う、琥珀色だ。


 気がつくと目の前に大きな狼が座っていた。


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