溢れた雫の行く末は ―後―
「ねえアメリア、ほんとに行っちゃうの?」
姿勢を正したレインが悲しげな顔で尋ねて来る。アメリアは黙って頷いた。
「そっか……。あーあ、寂しくなるなあ。元気で、ね」
そのあっさりとした答えは予想外だった。
「レインさん、怒らないんですか?」
「当り前だよ。怒ることじゃないもん。マスターと一緒にしないでよ」
「じゃあ、寂しくないんですか」
「そんなわけないに決まってるじゃん。寂しいよ、ずっと居て欲しいよ。だって、親友だもん……! だけど、アメリアが決めたんなら、見送るよ、親友だもん!」
レインの声は震えていた。長いまつげで瞬く瞳から、静かに澄んだ雫がこぼれる。
頬に伝った涙にはっとして、彼女は慌てて腕で目を拭い、アメリアに向けて笑顔を作った。
「駄目だよね、笑って送り出してあげないと!」
「レインさん……」
「ありがとう、今まで楽しかったよ。それに、こうやって会いに来てくれて、嬉しいよ」
そこまで言ってレインは感極まってアメリアに抱き付いた。頑張ってね、と贈られた言葉は、アメリアの心に直接投げかけるような風に聞こえた。
だが、これでさようならというわけにはいかない。一つだけ、レインに協力してもらいたいことがあるのだ。
それをアメリアが切り出すと、レインは二つ返事で了承した。
自分の部屋から必要な荷物を持ち出すべく、アメリアが練った作戦はこうだ。
レインは自分の念を込めた操り人形を、糸を通してかなり自由に操ることができる能力を持っている。それを利用して、自分の代わりに葉揺亭の中へと侵入してもらう。もちろん店にではない。屋根の上に放り投げるか、あるいは崖の上から降ろすか、どうにかしてアメリアの部屋へと直接足を踏み入れるのだ。
もちろん荷物もそれなりの大きさがあるが、扱う人形を増やせば引きずるくらいできるだろう。
人形の歩く音は人間のそれに比べれば無きに等しい、階下にいるマスターにもばれまい。
「レインさんの腕を見込んでのお願いです。できそう、ですか?」
「結構大胆なこと言うなあ、アメリア」
もちろん机上の空論だ。アメリアには、異能者の感覚などわからないから。それでも普段の人形劇で、まるで生きているかのように人形を動かしているのを見ているから、できる方には賭けていた。
レインは口元に手をやって考え込む。おもむろに立ち上がって棚によると、並ぶ小さき民たちの顔をまじまじと眺めた。まるで、誰を指名しようか迷っている風だ。
やがて何本かの糸を取る。すると急に命を吹き込まれた様に、三体の人形が棚から飛び出した。巨漢の戦士が、凛々しい顔立ちの勇者が、そして翼を持つ竜が、宙に舞う。
「アメリアの言う通り、屋根の上からならやれないこともないけど。ただ……窓があるからなあ。鍵は?」
「開けてないです。だけど割っちゃっても――」
「それはさすがにマスターに悪いよ。第一この子たちで窓割るのは、できるかなあ。物を持つのは苦手だし、体当たりしたら壊れちゃいそう。それとも鼠みたい壁を削って穴空ける? うーん、それもどうかなあ、ねえ?」
だめ、無理、できない。そんな風に、戦士が腕を交差させ、勇者が手のひらを上にして肩をすくめ、竜が太い首を横に振った。
アメリアは落胆の色を隠せなかった。しかし諦めるしかない。無理をさせて人形が壊れればレインが悲しむし、彼女が出来ないというのならやらせるわけにもいかない。
第一、窓を割れば音がする、マスターが目の色を変えて駆けあがってくるだろう。そう思えば、元の作戦が穴だらけだったと考えるべきだ。いや、穴が無いから困っているこの場合、壁に阻まれたというべきか。
アメリアは声を漏らしながら、必死に思考を巡らせて、次の手を探る。
「窓……壁……。壁?」
アメリアの脳内に閃光が走った。どんな壁でも意に介せず通り抜けられてしまう、そんな人物が一人だけ居る。レインの小さな子どもたちに無理をさせるよりも、ずっと早くてずっと簡単なことだ。
アメリアは弾かれるように椅子を飛び降りた。
ぎょっとレインが目を丸くする。
「ど、どうしたのアメリア?」
「いいこと思いついたんです! だから、お願いに行かないと……。ごめんなさい、私、もう行きますね!」
「わーっ! ちょっと待った、待った! 落ち着きなってアメリア! 荷物は足生やして逃げたりしないよ!」
放たれた矢のように飛び出そうとするアメリアを、間一髪のところでレインが捕まえた。もう夜も更けて来た、うら若き乙女が一人で出歩くような時間ではない。まして、誰かの所を訪問するとなればなおさらだ。相手方に迷惑かけかねない。
それでもじたばたするアメリアを、レインは必死で宥める。
「あのねえ、ちょっと興奮しすぎ。どうかしてるよ、アメリアも」
「だけど! 早くしないと、マスターが……ティーザさんだって、ここにまた来るかも知れないし……」
「だからってこんな暗い夜に飛び出してったら駄目だよ。アメリアに何かあったら、私どうすればいいの?」
「……ごめんなさい」
「別に何もかも一人で抱えなくたっていいじゃんか。私にも教えてよアメリアの考え、一緒に行くからさ。だって友だち、でしょ?」
レインが大人びた笑顔でアメリアに語り掛けた。
確かに、少し勇み足が過ぎたかもしれない。一人立ちするのだからと、気負いすぎていた部分があるかもしれない。少しだけ冷静さを取り戻し、アメリアは暴走しかけていた足を止めた。レインが追いつけるように。
そして二つの朧月が浮かぶ下、二人は一人の少年を引きつれ、葉揺亭のある袋小路の最奥に立っていた。崖と店の間には、人が一人歩けるような隙間がある。かつて少年・アーフェン=ロクシアは、追われてここに逃げ込んだあげく、壁を通り抜けて葉揺亭に飛び込んできたのだ。思ってもいないところから目の前にいきなり人が現れた衝撃は、忘れようにも忘れられない。
あの時は必死だったから、非常識な真似もできただろう。だが、今は違う。アーフェンはいたって冷静だ、ついさっきアメリアたちに突撃されるまでは、自分の小さな城でくつろいでいたところだったのだから。
事情を聞いて一通りの動転は済ませ、身を整えるやいなや引きずられるように連れてこられた。一応納得はしているものの、やるべきことは夜盗まがいのこと。文句の一つも自然に口をつく。
「ああ、もう! ほんとうに大丈夫なんですか!?」
「大丈夫大丈夫、ちょっと行って来るだけの簡単なことだもん。マスターに見つかったら、『アメリアの部屋がどうしても見たくて』とか言い訳しとけばいいんじゃない? そんな年頃だ!」
「それはそれで修羅場ですよ! 殺される!」
「あの……あんまり大きい声出すと……」
囁き声のアメリアに呼応するように、二人も口を閉じた。
マスターはきっと自室に居る、店の暗幕がしまっていて、光の一つも漏れていないのは確認済みだから。しかし店主は地獄耳だ、静かな夜の空気に響く喧噪を拾い上げ、訝しんで起きてくるかもしれない。マスターの行動など予想してもしきれないから、警戒しておくに越したことはない、ずっと隣に居たアメリアにはそれがよくわかっていた。
まずアメリアが狭い隙間に入る。毎日を過ごした建物だ、歩幅で外観と内部を照らし合わせることは簡単である。葉揺亭の内装をイメージしながら、アメリアは歩を進めた。
「……この辺りです」
足を止めた場所は、廊下の突き当りにあたる。これ以上奥に行けば炊事場に抜けられるが、無駄に距離を稼ぐ必要もないだろう。アメリアはアーフェンを手招きした。
「どこに出るんですか?」
「ちょうど廊下の突き当りになると思います。入ったまま、正面へまっすぐ行くと階段があって、二階すぐが私の部屋です。ただ、マスターの部屋の前も通るから……気を付けてください」
「では、この手紙はどこに置いてこれば? 一度お店の方に出た方が良いでしょうか」
「……帰りに、マスターの部屋の前にでも落としてきてください。それで十分です」
手紙。先ほどアーフェンの家で紙と筆記具を借り、彼の身繕いを待つ間に簡単にしたためたものだ。マスターに向けての謝罪と、別れの挨拶が記されている。もらった方は絶縁状と思うかもしれないが、それは受け取り方次第だ。願わくは、そう感じてもらいたくない。
アーフェンは壁の材に手を沿わせながら、はあと深く息を吐く。
「こういう滅茶苦茶は私の担当じゃないんですが……」
「四の五の言ってないで、早く行ってきなよ。ギルド所属のアビリスタなんて、無茶やってなんぼでしょ?」
「ですから向き不向きと言うものが――」
「お願いします、アーフェンさん。他に、頼れる人居ないから……」
「まあ、アメリアさんにそう言われては仕方ないですよ。私に任せてください」
急に涼やかな風を吹かせて、アーフェンは半歩後ずさった。大きく息を吸って、一気に踏み出す。
まるで葉揺亭の壁は液体になってしまったかのように、アーフェンの体を飲み込んで、向こう側へと隠してしまった。もちろん後を触ったって、手にはざらつく木目の硬い感触が確かだ。何度見ても奇天烈な光景である。
「すごーい。どうなってるの、あれ」
アメリアに歩み寄りながら、レインが音を出さないように手を叩いた。暴力的な異能は嫌うが、こういうのは彼女的にありらしい。屈託のない尊敬のまなざしを、アーフェンが消えた壁に向けていた。
葉揺亭の中の状況をアメリアとレインには知ることが出来ない。ただ、アーフェンが作戦を成功させて戻ってくるのを待つだけだ。
ぼんやりとレインが声をだす。
「手紙は、何書いたの」
「お別れの挨拶です。何も言わずに居なくなるよりは、いいかなって」
「……じゃあ、本気でこのまま旅立つんだ。それでほんとにいいの?」
「もう帰れないですもの。そう決めて、覚悟して、お話ししたのですから、もう……」
「思いつめ過ぎだよ」
レインは苦笑してアメリアのこわばる頬をつついた。
これは私の考えだけど、と前置きをしてから、さらに言葉を続ける。
「何が何でも、本気でアメリアのこと手放したくないんだったら、マスターだって、もっと何とかしてたと思うよ。こうなる前に、最初からね」
「それは……閉じ込めるとか、ですか」
「うん」
レインは遠慮なく頷いた。
確かにそうなのだ。葉揺亭にこもっていればいいというのなら、自分を繋ぎとめておきたいというのなら、外の世界など一切見せずに囲っておけばよかったのだ。マスターならそうすることもできただろうから。どうあがいても鎖を切れないとわかれば、与えられた幸せを享受するのみで満足できたかもしれない。
そうしなかったのは、一重に、アメリアに不自由させたくなかったから。
「でも、それならどうして……」
「きっとマスターもびっくりしちゃったんだと思う。私だってびっくりしたもん、いきなりだったんだからさ。ずっと一緒に居たんだから、そりゃ余計に怒りたくもなるし、泣きたくもなるよ。だからって、ひどいこといったのは許せないけどね。いい大人なんだからさ、マスターも」
自分が正しい、相手が悪い、そんな主張をがなり立てるのは自己中心的な幼子同士の喧嘩だ。感情が高ぶった時こそ、言葉を選び着地点を探すのが、正しい話し合いなのではなかろうか。積み上げ固めて来た信頼も、たった一つ刺々しい言葉の球をぶつけるだけで、いともたやすく崩壊してしまう。少しだけアメリアより大人なレインは、それをよく解していた。
「だけどアメリアもさ、強情になり過ぎっていうか。もう一回、ちゃんとマスターと向き合った方がいいんじゃないかな。いつもみたいに、ゆっくりお茶でも飲みながらさ。今ならまだ、間に合うよ」
レインの言葉は真に迫っていた。これが最後の別れと言うのなら、それこそ一生後悔する。アメリアにとってマスターは単なる主人と言うだけでなく、かけがえのない家族だ。それを知らぬ間柄ではない。喧嘩別れしたまま、それが今生の別れとならないとは言い切れない。それは悲劇だ、不幸だ。とうに父母を彼岸へ見送ったレインには、アメリアがその轍を踏んでしまうのをどうしても止めたかった。
しかしアメリアは曖昧に笑って首を振るだけだった。レインの気持ちは理解した。それでももう手遅れだとは、誰より自分が一番よく知っている。あの瞬間にカップは真っ二つに割れてしまった。奇跡の魔法でも使わない限り、もう元には戻せない。過去は変えられないし、もう戻れない、進むしかない。
レインが言う通り、アメリアは強情なのだ。常に凛々しく、常に己を信じる。そんな気質こそ尊敬に値する人のものだと考えるようになったのは、あの店主を隣で見て育ってきたから。
だけど、とレインがもう一度口を開きかけた時、目の前の壁からぬっと人影が現れた。奇天烈過ぎて何度見ても慣れない、レインもアメリアも心臓を締め付けられたような悲鳴を小さく漏らす。
戻ってきたアーフェンは、まだ張り詰める糸で縛られた様にぎこちない動作で、右肩にかけていたアメリアの背負い鞄を降ろし、依頼主に渡す。
「ありがとうございます。大丈夫ですか?」
「ええ、やることはやりましたよ。ただ……」
「どうしたの? マスターに見つかったとか?」
今しがた出て来た壁を振り返り、アーフェンは少し震えの混ざる声で呟く。
「いえ、それは。ただ店の方に、誰か居て。こっちに来そうだったので、少し走ってしまって」
「えっ。光とかは漏れてないって、確認したのに。マスター起きてたのかな、見てないの?」
「怖いので、それはちょっと。物音と話声が聞こえたような……いえ、きっと気のせいだったんでしょう、ええ」
「いやどうかなあ。……暗闇で一人で喋ってたらぞっとしないよね」
「い、一応二人だったと、思いますよ?」
「じゃあ、誰か来てるのかな。……だけどちょっと、怖がり過ぎじゃないの? 臆病なんだね、ギルドのアビリスタなのに」
「偏見ですよ、アビリスタだって色々あるんです!」
レインのからかいにアーフェンが反論するのを聞き流しながら、アメリアは見えない夜の向こうを想像する。
こんな時間、こんな状況で葉揺亭、いやマスターのもとにやって来る奇特な人間が居るとしたら、ティーザしかいないだろう。彼以外のマスターの交友関係は、知る限り葉揺亭の客と一致していて、なおかつ店は朝から閉まっているのだから。
一体何を話しているのだろうか。泣いているのだろうか、愚痴っているのだろうか、それとも当たり散らしているだろうか。アメリアには知る由もないし、知ろうとも思わなかった。
ただ、安心した。マスターにも感情を受け止めてくれる人が居た、アメリアが居なくなっても、彼が一人ぼっちになってしまうことは無い。この世界は二人っきりで出来ていたわけではないのだから。
マスターも大丈夫だ。そう信じて、アメリアは鞄を背負い歩き出した。隘路で回れ右し、住み慣れた葉揺亭の前を過ぎ去る。闇に佇む木造の建物は不気味なほどに静かで、しかしいつもより小さく見えた。
待って、と小走りでレインとアーフェンが追いかけてくる。二人にアメリアは足も留めずに言った。
「お二人ともありがとうございます。だけど、もう見送りはいらないです。お二人にこれ以上迷惑かけたらいけませんから」
「迷惑だなんてこと!」
その声は二人分重なって、両側から同時に聞こえた。なんだかおかしくて、アメリアは笑みをこぼしながら、しかし二人にきっぱりと言う。
「だって『どうして止めなかったんだ』ってマスターが怒って、お二人に何かしたら、私、悲しいですもの」
真心からだ。大事な友を案ずるのは、三者とも同じである。
それでもレインもアーフェンも引き下がらなかった。明け方東門にて乗合の馬車に乗り、東方へ向かうと言ったら、彼女たちは待合所まで付いてきたのだ。
それからもアメリアを中心に長椅子に座って、ひそやかな声で雑談をしていた。とは言え真夜中、いつの間にか意識を手放していた。
体を揺さぶられアメリアが目を覚ました時には、レインと肩寄せ合っていた。親友の寝息を聞きながら、まどろむ目で見えた木窓の風景は白みかけている。
「起こそうか迷ったんですが」
「やめてくださいよう、馬車に乗り遅れちゃう。起こしてくれてありがとうございます。もしかして、ずっと起きててくださったんですか?」
アーフェンは薄く笑って頷いた。待合にはいつしか人が増えていて、だからこそ何事も無いように見張っていてくれたらしい。少しくたびれている顔には、アメリアの頭がさがるばかりだった。
やがて、朝靄の中に馬蹄と車輪の音が聞こえた。がたごとと揺れる大型の馬車は、待合の真ん前で止まる。
風通しの良い開放的な車台だ、これで次の町まで行き、そこで更に別の馬車へ。東の果てへはそうやって向かう。長い旅の始まりだ。
待合の出入り口脇で、アメリアは友人たちに最後の別れを告げる。
レインは目を潤ませていた。
「アメリア、気を付けてね。いつだって、戻って来たっていいんだよ。帰れないなんて、そんなこと、全然ないんだから。私は、待ってるから……」
「ありがとうございます。落ち着いたら、お手紙書きますね」
「アメリアさん……」
「私、アーフェンさんには勇気もらったんですよ。私も同じ風に、広い世界に飛び立てるんじゃないかって」
「ありがとうございます、でも……。いえ、気を付けてください。どうか、お元気で。私には、それくらいしか言えません」
二人と固い抱擁を交わしてから、アメリアは馬車に乗り、そして手を振った。笑って、しかし一筋の雫が目から溢れていた。
馬のいななきが朝の空気を震わせる。ゆっくりと、アメリアの見る景色は動き出した。
街道を東へゆっくり進む。門が遠のき、商店街は見えなくなり、町の象徴たる時計塔もどんどん小さくなっていく。
ああ、さようなら、ノスカリア。愛しき街を後ろに見送りながら、アメリアは感傷に浸っていた。ここで過ごした思い出は、生涯忘れることがないだろう。楽しかったことも、辛かったことも、全てアメリアの一部なのだから。
自分が居なくなった葉揺亭はどうなっているだろうか。マスターはどうしているだろうか。あの手紙は、見てくれただろうか。馴染みの客たちへの言葉も兼ねているから、願わくばそちらにも伝わってほしいが、それは彼次第だろう。
最後に主へ届けた言葉は、今でも一言一句そらんじられる。
『マスターへ。
今までたくさんお世話になりました、そしてこんな形でのあいさつになってしまってごめんなさい。
私は葉揺亭でたくさんのことを学びました、たくさんの思い出を作りました。それは私の宝物です。私はこれを糧に、もっと大きな世界へ羽ばたこうと思います。心配しないでください、私は一人じゃないですから。いつでも傍に居ると言ってくださったのは、マスターでもありますよ?
だから、私は行きます。私は必ず幸せになります、だからもう大丈夫です。
最後に、葉揺亭を愛してくださった皆様にも、こんな風にお別れしてしまうことを許してほしいとお伝えいただけると嬉しいです。
わがまま娘でごめんなさい。そしてさようなら、お元気で。アメリア=ジャスミナン』




