ノスカリア雨景
その日のノスカリアは雨音に包まれていた。石畳の表面を水のヴェールが覆い、天より来たりし雫たちが次々と跳ね踊る。自然が魅せる歌劇の舞台を邪魔するような人間はいない、はずであった。
ばしゃり、と一際大きく水が跳ねた。糸のごとき雫を受けながら、一人の少女がかけて行く。厚い雲と湿った空気が支配する世界で、その少女、アメリアは小さな青空を纏っていた。
動く空の正体は頭から被った青色のケープ。マスターが作ってくれた、雨を弾く不思議な一品だ。頭巾の部分は紺色で、それが肩に流れるに伴って空色へと切り替わる。
紺色の部分の布地はアメリアにも見覚えがあった。独特な紋様が刺繍された、魔法屋・クシネ謹製の水を一切通さない布だ。以前購入したあれに、自前の布をつぎ足して、ケープとして縫い上げてくれたらしい。
丈は胸元あたりまでしかない。本当は全身を覆うコートにしたかったが、いい具合の布地がなかったのだと、マスターは言い訳していた。だがこれで十分だ。頭が濡れないだけでも、雨の中を平然と歩けるのだから。
今はその秘密道具の出来を確かめついでに、一仕事した帰りだった。常連客のオーベルの忘れ物があったから、届けに行ってきたのである。急ぐものじゃないのだから、何もこんな雨の日に来なくても、と彼は苦笑していたが、アメリアとしては逆に雨の中を歩きたかったから好都合だった。
冷えただろうと言うオーベルの好意で蜂蜜湯を一杯ご相伴にあずかって、その時ふっと脇を見ると、宿屋常駐の異能者ギルド『緑風の旅人』の面々が、白昼堂々酒盛りをしていた。
話を聞くところによれば、雨に降られてしまうとまともに活動しづらいと。なるほど、外に出ていくという性質上、いたしかたないだろう。
だからアメリアはちょっとした優越感を覚えた。みなが、それも特異な存在であるアビリスタたちもが厭う雨の日が、自分だけ平気なのだから。
仕事はささやかなお使いだったのだが、浮ついた気分のアメリアが真っ直ぐ帰るわけ無し。宿屋「緑風」より北東方向へ歩けば、すぐに大きな商店通りに出られる。すこし寄り道をしてみようと、そちらへ足を向けた。
不思議な心地だった。ノスカリアの誇る商店街にはいつもは人が溢れ、店に客を呼び込む声が響くのに、今は全てが息をひそめている。まばらに見かける人影は、すっかり濡れそぼっていたり、雨の当たらない屋根の下を伝っていたりという風だ。こんな時でもなければ、悠々と一人道の真ん中を歩くことも無いだろう。
心地よい。雨がこんなに気持ち良いものだと感じたのは、初めてかもしれない。
と、目の前から自分と似た様なケープを被った小さな人影が走って来た。だがその子の黄色いケープは、足元までしっかりと覆いかぶさり、頭部分にはなぜか三角形の耳状の物体が並んでいた。飾りだろうか、確かに愛嬌はあるが。
晴れやかだったアメリアの心に、少しだけ影が差す。隣の芝は青い、向こうの着ている物の方が良いものに見えてしまった。
だが、その耳付フードから覗いた顔を見れば、アメリアの心の雲は一気に晴れた。
「あら、クシネちゃん!?」
「おろろ、アメリアのお姉ちゃん? こんな雨の日に、偶然なの!」
そう言って、小さな魔法屋はアメリアの正面に立ち、顔を上げた。歯を見せてにかりと笑っていた笑顔は太陽のようだ。
だが、あっという間に驚愕の色に転じて隠れてしまう。
「そ、それっ!」
「ああ! そう、クシネちゃんの布です! マスターがこういう風に縫ってくれたんですよ! 私、嬉しくって」
「店長さんが!? 見せて! 見せてっ!」
ぴょこぴょこと布製三角耳が跳ねる。今にもアメリアのケープを引っぺがさんかの食いつきようだ。しとしとと振り続ける雨の中、それは困る。
じゃあ、どこかで座ってお話ししましょうか。そう先に言ったのはどちらだっただろうか。二人は連れ立って歩き出した。はた目から見たら、仲の良い姉妹のようだ。
幸いなことに、ノスカリアには休息が取れる場所は星の数ほどある。旅人と共に発展した町並みだからあたりまえだ。種類も大衆食堂、酒場、宿、よりどりみどりである。
アメリアたちは手近にあった食事処に入った。店内と道とを隔てるものは何もない、えらく開放的な一軒で入りやすい印象を覚えたから。
恰幅の良い女性の優しげな声が少女たちを迎えてくれた。店の奥には他にも二組、客が居た。少し迷ってから、外にほど近い席に陣取る。雨の匂いが感じられる、良い席だ。
使いこなされ油染みも見られるメニューに、クシネは興味津々とばかりに覆いかぶさった。
「クシネ、お腹空いちゃったの。なに食べよっかなー――この『カテット』ってなんなの?」
「イモの千切りを焼いたものです。それに『ピピン』の実を潰して塗って食べるんです。カリカリしてて美味しいですよ」
「うー、とってもおいしそうなの。でもミートパイも食べたいし――」
「じゃあ、半分こは?」
「それに決まりなの!」
これが暇な親父たちなら、ついで酒を一杯煽るのを良しとするだろう。だが、彼女たちはうら若き乙女、簡単な料理につけるのは、野イチゴ水。優しく甘い飲み物は、かわいい娘によく似合う。
奥の厨房から、とんとん、じゅうじゅうと軽やかな音が聞こえて来る。食欲をあおる音を背景に、クシネは念願の物を眺めていた。機能はすごいが見た目はただの綺麗な布きれだ、だのに彼女は至上の宝石を得たに等しい恍惚の顔を見せている。
「はう、店長さんすごいの」
「え? そうなんですか? ただ布をつぎ足して縫っただけに見えるけど」
「ただ縫った!? とんでもないっ! こんなの聞いたことない!」
「は、はあ……えへへ、マスターすごいんですねえ。私、知らなかったあ」
幼女らしからぬ剣幕で叫ぶクシネに気圧されて、アメリアは力ない愛想笑いを浮かべた。
「知らなかった? これだから無知は困る、の」
ぷんとしかめっ面をして、しかしアメリアのためにと勝手に解説を始める。
「あのね、クシネの布には、クシネの魔法がすっごく丁寧に織り込んであるの。だからその魔法がかかっている部分は水を通さないの。でも、店長さんが足した部分もちゃんと水をはじいてる。だから、こっちにはこっちで店長さんの魔法が織り込んであるはずなの」
「はあ……。ああ、でも、それはそうですよね。普通の布ですもんね」
「そう、どっからどう見てもただの布。全然魔力が発せられていないし、魔法陣とか術式の欠片すらない。それがおかしいの、一切何の気配もなく魔法を使うことなんて、理論的にあり得ない。そもそも、他人の魔法につぎ足して成立させるなんてことがおかしいの。コルカ・ミラの教科書魔法ならともかく、クシネが一体どれだけこれ――」
クシネはぶつぶつと独り言をまくしたて、空色のケープをばさばさと振り返し見る。アメリアはとっくに解説から振り落とされ、苦笑していた。どこぞの店主といい、魔法に見識を持つと、独りで喋るのが好きになののだろうか。やや呆れてしまう。
クシネは最終的に二枚合わせの布に着目して、きっと目を細めた。
「絶対中に何か種がある……。アメリアのお姉ちゃん、一回裂いちゃだめ、なの? ちゃんと直すから」
「だめ」
「うー……」
「というか……危なくないんですかね、そんな妙なもの被ってて」
「大丈夫なの。これは誰が着ても同じ、なの。ちゃんと外に影響が出ないようにしてあるの。でもお姉ちゃんが怖いっていうなら……クシネがもらっちゃうの!」
「だめ。マスターからの贈り物ですもの、誰にもあげられません」
「わかってるの。冗談なの」
とクシネは笑うが、掴んだ手は固く握りしめて離さない。それを半ば無理やり引っ張る形で、ようやく宝物はアメリアの手に戻ったのであった。一体どれだけ重大な物品なのかは理解できないが、不届きな魔法使いに盗まれないようしないと、という決意も共に。
一波乱はあったものの、二人は仲良く食事より一足先に供された野イチゴ水を楽しんでいた。ほのかな甘さの向こうで、やや酸味がある。さっぱりとした口当たりは、今日のようにじめじめした日にはうってつけだ。
薄紅色のグラスを両手で持ちながら、クシネが遠慮気味に声を上げた。
「ねえ、アメリアのお姉ちゃん。前から気になってたんだけど、あの店長さん、一体何者、なの? どこにいたとか、何してたとか――」
「マスターの過去ですか? そんなの、むしろ私が知りたいくらい!」
「知らない? あんなに仲がよろしいのに!?」
「ええ。だって、マスターってあんまり自分の話しないですし、私から見たら最初からずっとああいう『マスター』ですから。名前だって知らないくらいです」
「……それ、流石におかしいの。駄目だと思うの」
クシネは怪訝な顔を隠さなかった。
一方、アメリアは同じことを半年弱前にも言われたことを思い出していた。あの時の話し相手はレインであったが。
さすがに名前すら知らないのはいかがなものかと自分でも思う。が、誰に話すにもマスターで通ってしまうし、今更知ったところで名前で呼ぶように改めるのも面倒だから、知る必要性が見いだせないのだ。
強いて言うなら好奇心から。しかしあの人の素性に関することは、直に聞いても教えてくれやしない。上手くはぐらかされ、話しを変えられ、ぼやかされるのだ。日常会話の節々に落ちていた色々な断片をつなぎ合わせて、「なんだか色々経験してきたすごい人」という程度の認識であったし、それだけでアメリアには十分であった。
なおかつ思う。無理矢理吐かせないと教えてくれないようなことなど、知らない方がいいのだろう。もしも開いた先が深い闇ならば、覗いたことを後悔してしまうかもしれない。恩人をひどく傷つけてしまうかもしれない。そうなったら、積み上げて来た大事なものを、一瞬で壊してしまう羽目になる。
アメリアはぼんやりと外の風景を眺めた。雨のヴェールの向こうには喜んで尋ねよう。だが、人の過去の暗幕をこじ開けるほどの不躾さは無い。葉揺亭の主には、今の心優しく穏やかな笑顔がよく似合うのだから。
「はい、お待ち!」
テーブルにお待ちかねの料理がやってきた。
まずはカテット。ふっくらと厚みのある大きな円盤型だ。添えられている真っ赤なピピンの実を上に乗せ、フォークの背で潰す。しわが寄るほどによく熟した果肉はどろりと崩れ、天然のソースになるのだ。それを全面に塗り拡げたら、後はナイフで適当に切って食べるのみ。外はぱりぱりとしているが、中はしっとりと柔らかい。熱々のカテットを口の中で転がしながら咀嚼すると、ピピンのソースの独特の旨みと溶け合う。
クシネも満足気だ。と言っても、同じようにイモを焼いた料理は彼女の故郷にもあるらしく、絶賛していたのはピピンの実だった。かすかに酸っぱいが、後を引く程に濃厚なうまみの爆弾。それはどうやらノスカリア近辺でしか得られないらしい。
へぇ、とアメリアは相槌を打つ。所変われば食卓も変わるのだろう、ぜひ他所の景色も見てみたいものだ。眼の前の放浪者が羨ましい。
「そういえば、クシネちゃん、結構長くこの町にいるんですね。旅の魔法屋って言ってたから、すぐに次に行ってしまうのかと思ったけれど」
「ここが大きい町だからなの。いろんなものが手に入るし、調べたいこともいーっぱいなの! ずっと住んじゃってもいいくらい。もう、この町におうちがあるアメリアのお姉ちゃんが羨ましいの」
「そうですかねえ。私は、他の町にも行ってみたいと思うのに」
「幸せは近くに在りすぎると気づけないもの、なの」
自分で自分に頷きながら、クシネはミートパイに手を伸ばした。大人の男の手のひら大のそれを掴むと、豪快にかぶりつく。ざくりと音がして、パイ生地がこぼれた。
中に詰められた餡が熱かったのだろう、彼女は顔を引きつらせて、はふはふと忙しなく口を動かす。一息に飲みこんだ後、慌てて水を流し込んだ。
「大丈夫ですか」
「平気なの……。でも、普通はこんなに熱くないの……」
「作る人によりけりですからねぇ――熱っつい!」
そっとかじったアメリアも、染み出た肉汁の温度に思わず飛びのいたのだった。
何気ない雑談に花が咲く。雨はいいものだ、室内でぼんやり過ごしていても誰にも咎められない。店の奥からも賑々しい笑い声が響いた。
ごくりと喉を鳴らしてクシネが言った。
「今度おっきなお祭りがあるっていうの」
「ああ! 不夜祭ですね」
「そうそう。お店が出せるっていうから、クシネも頑張っちゃうの!」
不夜祭。夜の恐怖を払うべく、ノスカリアの街中が光に包まれる三日間の祭典だ。闇を恐れることも無く夜を謳歌し、人々は歌い、踊り、飲み、話し、眠らぬ日を過ごす。広場には出店が立ち並び、時計塔は輝かしい舞台と化す。
まだ二十日以上も先のことではあるが、年に一度の祭事に力を入れる者は、とっくに準備を始めているはずだ。
「今年も楽しみです。街中きらきらしてて綺麗なんですよう」
「アメリアのお姉ちゃんはお店を出さないの? きっと大人気になれるの!」
「うちは……マスターがそういうの乗らないですから」
「店長さんなんかほっといて、お姉ちゃん一人でやっちゃえばいいの! そうなったらクシネもお手伝いするの!」
アメリアは目をぱちくりさせた。考えたことも無かった、自分が主体で店を出すなんて。確かにまたとない機会でもある。
だが自分に出来るだろうか、一度だってお客さん用の紅茶を一人で作ったことないのに。葉揺亭の名を背負わなければ、誰にも迷惑をかけないから良い? そうかもしれないし、そうでないかもしれない。ううんとアメリアはうめく。
それとも、上手く説き伏せたらマスターが乗ってくれやしないだろうか。アメリア自身から熱く誘えば、あるいは。今度、話を振ってみよう。
そんな思考を巡らせている時だった。何か見慣れない生き物が石畳の上を走って行った。両手で持ち上げられそうな小動物だ。
何だろうと眺めていると、一足遅れて片手の指でちょうど数えられる人々が、後を追うように通過していった。揃いも揃って濡れねずみだ。つばの広い帽子を被っている者もいるが、気休め程度にしかなっていないと見受けられる。
その奇妙な追いかけっこの集団は、あっという間に視界から捌けてしまった。
「……何だったのかしら。変なの」
「きっと『水走り針モグラ』なの。雨になると土から出て来るの。森に住んでいるんだけど、街道を伝ってきちゃったんだと思うの。町だとおうちに針が刺さったり、人の足に刺さったりするから危ないの」
「へえ。だから捕まえようとしてたんですかね」
「そうかもしれないけど、でもきっと、あの針がお薬にもなるからだと思うの。粉にして飲むと、熱があっという間に引くの!」
「なるほど。便利ねえ」
ノスカリアの東方面には大きな森林が広がっているという。アメリアは実際に見たことはなかった。珍奇な魚が住まい水晶の花が咲くという泉や、人に劣らぬ知能を持つ魔獣の存在、あるいは鬱蒼と茂る木立の奥でひっそりと暮らす民族のこと。あらゆる話は知っているが、全て伝え聞くばかりだ。
きっと目に楽しい風景が広がっているのだろう。だがそこに続く街道は、今は雨の幕に隠されている。
森で採取されただろう野イチゴの飲み物を口にしながら、アメリアはちらと時計を見た。そして息を詰まらせる。
さすがにのんびりしすぎた。長時間の道草を逐一怒るような店主ではないが、あまりさぼっていると自分自身が穏やかではない。
アメリアは代金をテーブルの上に置きながら、そそくさと席を立った。
「私、そろそろ行きますね!」
「わかったの! 気を付けて帰るの!」
クシネは残っていた最後のミートパイに手を伸ばした。空いて居る右手を、ひらひらと振ってアメリアに見せる。
アメリアは、青空のケープを纏って鈍色の雲の下に躍り出た。
雨雫が音階を刻む石畳の上。ばしゃり、と一際大きく水が跳ねた。玉のごとき雫を受けながら、一人の少女が駆けて行く。
その後ろから、ざぶざぶと波を立てて車輪が迫る。幌のついた荷馬車だ。たてがみから水をしたたらせながら、大きな馬とそれを操る人間とが、ゆっくりとアメリアを追い越して行った。
さらに向かいからは人間が一人で走って来る。びしょぬれで体にまとわりつく衣服は重そうだが、本人の足取りは軽い。よく見れば、先ほど妙な動物を追っていた集団に居た顔だ。
「あっ、いいな、お嬢ちゃん。全然濡れないんだ!」
すれ違いざまに声をかけられた。長い髪をべったりと張り付けた顔には笑顔が浮かんでいる。アメリアも得意気なスマイルを返した。
自分だけが雨を弾くのかと思えば、そうでもなかった。遠目に傘を差して歩く人影がある。
おや珍しい、とアメリアは思った。ああいう装飾品的趣向もある携行の傘は、もっぱら貴婦人が日の光を遮る時に差すものだ。美しい刺繍や繊細な色彩が加えられた布地で雨を防ごうなどと言う発想は無い。
それに加えて骨が重くかさばるから、持ち歩くのには正直邪魔なのだ。一般庶民と旅人には。だからああして雨傘を使うとしたらどこかの貴人だ。自分で持つのではなく、そのために人を使えるような。
実際に見える影も二人組だ。きりっとした黒い後姿の男が、隣を歩く女性のために傘を差している。一つの屋根の下に収まる主と従者。
しかし、そんな貴い身分の人が、降りしきる雨の中わざわざ出歩く理由はなんだろう。雨の向こうに見えた彼女たちに、アメリアの好奇心はくすぐられる。
どうしても外せない大事な用事があるのだろうか。それとも、自分みたいに非日常的な散歩をしているのだろうか。曲がり角を消えていく姿に、少女の空想は尽きなかった。
振り続ける雨は止むところを知らない、むしろ強まっているようだ。そんなノスカリアの暗い雨景に、ブロンドの少女は明るく栄える。
静かな街並にアメリアは思いを馳せる。みんなは何をしているのかしら、暇をして家の中に引きこもっているのかしら。雨は嫌いなのかしら。
――私は結構嫌いじゃないわ、雨の日は。アメリアはそう思って肩を揺らした。いつもと違う町がそこにあって、いつもと違う素敵なことが起こる気がするから。
ケープの裾をきゅっと握って、アメリアは帰路を急ぐ。もう一つある雨の日が嫌いじゃない理由。葉揺亭に客足が途絶え、マスターと二人っきりの家族みたいな時間が過ごせるから。
さあ急ごう、温かいお茶を淹れて迎えてくれる人が居るから。
ノスカリア食べ物探訪
「カテット」
基本はイモを千切りにして円盤状に焼き固めたもの。ピピンという赤い実を潰して塗り食す。ノスカリアで代表的な家庭料理。
タマネギや乳酪、燻製肉などを混ぜ込んだり上に乗せたりするアレンジが多数。
多めの油で揚げ焼にすると、カリカリ感が増してなお美味しい
「ミートパイ」
粗びき肉と香味野菜のみじん切りを炒め、パイ生地で包み焼いたもの。だいたい作り置きしてあって、食べる前に温められる。
ノスカリア近辺で最も大衆向けの肉は鳥類。一般の食事処でお安く提供されているのは鳥のミートパイだ
「野イチゴ水」
ノスカリア東南方面に広がる大森林地帯では、四季を通じて何らかのイチゴ類が見られる。
その果汁を水で薄めたものは昔から愛飲されているのだ。
もちろん季節により収穫できるものが違うため、味は変わってくる




