名前
それから2日がたった。何してたかって、ちゃんと修行してました。
「あの、須藤さん、提案があるんですけどいいですか」
「ええ、いいわよ。何かしら」
「影の支配者とこの世界に名前をつけませんか」
「別にいいけど。何か良い名前でも」
「ええ、まあ、ではまず影の支配者から。ちゃっちゃかちゃんたんちゃーん」
「何その最後のちゃっちゃかは」
「何かを発表するときの音ですよ」
「何これそんなに重要な事なの」
「あたりまえですよ。これから俺達が使っていく言葉なんですから」
「ああ、そうだね」
須藤さんめちゃくちゃ棒読みである。
「早く聞きたいから発表して」
またしても棒読みである。しかし、俺はそんな事は気にしない。だって、気にしてツッコむと話が前に進まないんだもん。
「では、ちゃっちゃかちゃんたんちゃーん。シャドーコントロール略してシャドコン」
「うわー、ネーミングセンスなさすぎ。シャドコンってダサすぎ」
「そんな事言うんだったら須藤さんも何か考えてくださいよ」
須藤さんは少し悩んでから答えた。
「シャドーコントロールでシャドコン。これをちょっといじってシャドンドってのはどうかしら」
「えー、それ俺のをちょっといじっただけじゃないですか」
「だから少しいじったって言ったでしょう」
「えー俺のパクっただけじゃないですか」
「パクっていない」
「えー俺の」
「もう、いいわ」
須藤さんは俺の声を遮って話を続けた。
「シャドコンよりはましでしょう。シャドンドのほうが」
俺は少し考えてから、こう答えた。
「まあ、たしかにそうかもしれませんね。じゃあシャドンドで決定で」
影の支配者の呼び方はシャドンドになった。
「次はこの世界の呼び方を。ちゃっちゃかちゃんたんちゃーん」
「それ忘れてなかったんだ」
「あたりまえですよ。では、この世界の呼び方はシャドーワールド略してシャドワド」
「いきなり発表するな、あとやっぱりネーミングセンスないわね」
「えーそうですか。我ながら良い案だと思っていたんですが」
「全く六林のかんせいは、どうなっているの」
「これに関しても文句ですか。じゃあ須藤さんは良い呼び名を思いついたんですか」
「ルーシャンド」
「ルーシャンドってシャドもワールドも関係ないじゃないですか」
「関係あるわよ。シャドーワールドをいじったらルーシャンドになったから」
「いじった、じゃあルーシャンドにも何の意味もないじゃないですか」
ちょっと嫌味ったらしく「も」をつけてやった。
「ええ、たしかにルーシャンドには意味はないわ。でも響きはいいでしょう」
「たしかに、それは認めざるをえないですね」
俺はまた少し悩んでから言った。何をそれは見てのお楽しみ。久しぶりにやったなあ、このネタ。PART何だったけ。忘れちゃった。
「俺にとっては、シャドンドのほうがいいけど、ここは年上の須藤さんの案を採用するべきですね」
「年上は余計だから」
「わかりました。この世界の呼び名は、ルーシャンドで決定で」
「よかった。さすがにシャドワドは、ださすぎだもん」
「一言余計ですよ」
「さっきのお返しよ。ははははは」
「むかつく笑い方ですね」
「まあね、でも何で今頃呼び名なんてつけようと思ったの」
「それはですね、サレインダードはルーシャンドから出たいと思いが強いほど大きくなります」
「それがどうかしたの」
「だから、呼び名を決めておいたら思いが強くなるんじゃないかと思いまして」
「なるほどね、六林もたまには良い事言うじゃない」
「今度は一言じゃなくて三言よけいです。六林もとたまにはと言うじゃないで三言です」
「いや、六林もと言うじゃないは全然余計だとは思いませんが」
「いや、いや余計ですよ」
「じゃあ、ついでに私達の呼び名も決めておきましょう。まあでも組織っていっても二人しかいないけどね」
「華麗にスルーをしないでください」
俺はあのときの須藤さんも失敗を踏まえていたのでギャグ風には言わなかった。
「俺達の呼び名、そうですね。じゃあ六藤ってのはどうでしょう。六林と須藤を組み合わせて」
「いきなり話始めないで、もういいわ。六藤ねえ、ちょっとありきたりすぎない。もっと他にないの」
「他にですか。そうですね」
俺は少し考えてから
「びっくり仰天」
「ズゴゴゴーン」
須藤さんはずっこけた。まさにびっくり仰天だ。
「何それ、私がびっくり仰天だわ」
「えーだめですか。けっこう良いと思ったのに」
「一様聞くけど意味はあるのかしら」
「もちろんありますよ。世界がひっくり返るって意味です」
「へーそうなんだ。意味的にはいいのだけどネーミングがね。あなたって本当にネーミングセンスがないわね」
「うるさいです。須藤さんには俺のネーミングセンスが理解できないだけです」
「いやいや、だれが聞いたって理解できないと思うわ」
「須藤さんだけですよ」
「まあいいわ。また私が決めてあげるから」
「どうせこうなると思っていましたよ、いや確信していましたよ。それで、なんか良い呼び名があるんですか」
「ちょっと待っててね」
須藤さんは5分くらい考えてから答えた。
「バックステージデモンストレーション略してではなく、いじってデストデレクション」
「それって一つデが多いですよね」
「細かい事は気にしない。まだ若いだろう」
「若さが関係あるのかはわかりませんが、とりあえずデストデレクションで決定で。それで意味はなんですか」
「まずルーシャンドは裏の世界、つまりバッグステージ。デモンストレーションはこの世界にあらがうと意味を込めてつけたの」
「へえー今度はちゃんと意味があったんですね」
「今度はわ余計よ」
「だってさっきまではのルーシャンドとか全く意味はなかったじゃないですか」
「まあ、そうね。でもそれは、あなたのネーミングセンスがあまりにも悪すぎたから私が代わりにつけたんじゃない」
「そうでしたっけ、あまり覚えていないな、ついさっきの事なのに俺実は都合が悪い事は忘れてしまうんです」
「とても便利な脳ね。それで私か一つ提案があるのだけど」
「なんですか」
「六林あなた苗字長いじゃない。だからこれからはロックンって呼んでいいかしら」
「ロックンローラーのロックンですか。かっこいいですね、いいですよ」
「違うわ、ロクデナシのロックンよ」
「ロックンになっていないじゃないですか。しかも何で俺がロクデナシなんですか」
「それは、変態ロリコンやろうだからに決まってるじゃない」
「違いますよ、それは俺が人の年齢を見ためで判断するのが苦手なだけでそれで」
「わかったわ、仕方ない、じゃあ六林だからロックンにしておくわ。これからよろしくね、ロックン」
「え、ああ、こちらこそよろしくお願いします。NICE TO ME TO TOO」
最後のは華麗にスルーされた。ともあれこれが俺達デストデレクションが発足した初めの一日だった。